人間三原則

こーぷ

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第2章 ヒューマンバトル

54話 スキルを買いに行く

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 スクエがヒューマンバトルに出場すると決意した次の日の朝。

 太陽は既に登り地面を照らしては居るが、時間も早い為周りに生活音などが無く、シーンと静まり返っていた。

 その時、スクエが寝ている部屋の扉がガチャリと音を立ててゆっくりと開かれる。

 音の正体は勿論ノラであった。

「ふふ、普段はあんなにも生意気そうな顔付きの癖に、寝顔は本当に可愛いものだ……」

 スクエの寝ている側まで移動して寝顔を堪能するノラ。

「おっと、いかんいかん起こしにきたんだった──そうだ!」

 手を伸ばしてスクエを起こそうとしたノラであったが、何かを思い付いた様に手を引っ込めて、悪戯を企む顔付きで微笑んでいる。

「ふふふ、スクエ驚くだろうな」

 起きた時のスクエの反応が楽しみ過ぎて笑みが止まらない様だ。

 そして、ノラはおもむろにスクエの寝ている横に寝っ転がった。

「ふふふ、スクエよ早く起きると良い!」

 ノラはスクエが驚く表情が分かる様に顔を凝視する。

「……」
「早く起きろ……」
「……」
「そろそろか……?」
「……」

 しかしスクエはいつまで経っても起きる気配が無い為、痺れを切らしたノラがスクエの頭を叩く。

「──ッイテ!? な、なんだ?」

 寝ている時にいきなり頭に強い衝撃を受けたスクエは驚き飛び起きた。
 何が起きたか理解できないのか周りをキョロキョロと見回すが何も無い事に、更に混乱している様だ。

 ノラは作戦が失敗した事が悔しいのか、なかなか起きなかったスクエを冷めた目で見る。

「あ、ノラ、おはよう」
「……おはよう」
「どうしかしたのか?」
「直ぐ準備しろ出掛けるぞ」
「出かけるって一体どこに?」

 スクエの質問には応えず居間に移動するノラ。

「全く……少しサービスでもしてやろうと思ったのに……」

 スクエには聞こえない声で呟きながら居間でノーブルメタルを吸ってスクエを待つ事にした様だ。

 そして、暫くすると奴隷特有の真っ白な服に身を包んだスクエがやって来る。

「もう少し、したら外出るぞ?」
「一体何処に行くか教えてくれよ」
「ふふ、昨日ヒューマンバトルに参加する事を決めただろ?」

 ノラの問いにスクエが頷く。

「今のままでも、十分強いが、更にスクエを強化しようと思ってな」
「強化?」
「あぁ──スキルを買いに行く」

 ノラの言葉にスクエは表情を変える。

「おー……スキル……それは男の夢……」

 どうやら、嬉しい様だ。

 元々、スクエ自身、アニメやゲームが好きな為に魔法やらスキルやらとファンタジー要素は大好物だ。
 ノラの口から出たスキルという言葉に心が弾んでいる。

「な、なぁスキルは買った瞬間から使えるのか?」
「あぁ、店でスキルを買ってメンタルチップ、あるいはマインドチップにインストールすれば、その瞬間から使えるぞ」

 ノラの言葉にガッツポーズをするスクエ。
 そんなスクエを、まるで自身の孫でも見る様に微笑むノラ。

「そういえば、スキルにはどんなのがあるんだ?」
「そうだな……詳しくは店に着いた時に説明するが、主に二種類ある」
「二種類?」

 首を傾げるスクエにノラが頷く。

「あぁ、攻防スキルと身体スキルだな──これは、もう名前通りと捉えてくれ」

──まじでゲームみたいだな、おい!

 そして、スクエはある事をノラに尋ねた。

「魔法は覚えられないんだよな?」
「あぁ──魔法はリプレスしか覚える事が出来ないな」
「何で、覚えられないんだ?」
「人間には、そもそも魔法を作り出す為の魔力が無い様でな──メンタルチップにインストールは出来るが発動はしない」

 最初から説明されていたとは言え、スクエは少し残念そうな顔をする。
 そんなスクエの子供ぽい表情を見てノラは笑いながら言葉を掛ける。

「まぁ、じっくり考えてスキルをインストールして行こう」

 こうして、スクエとノラはスキルをインストールする為に朝早くから家を出る。

 時間的に早過ぎる気もするが、店の開店と同時に入ろうと思っている様だ。

「一応、ヒューマンバトルの申し込みに関しては昨日の内に参加申請はしといたぞ」
「早いな……」
「ふふ、一度決めたら行動は早く! だな」

 どうやら、スクエが寝ている間に済ませた様であり、後はアバエフからの開催日の報告を待つだけの様だ。

「あ、それとスクエ、一応言っとく」
「なんだ?」
「一度申請したら、取り消しは出来ないから、心に留めといてくれ」
「あぁ、元々止めるつもりは無いし問題無い」

 店に向かいながら話す二人。

 そんな、こんなで二人はスキルを買う事が出来る店の前に到着した。

「ここか?」
「あぁそうだ。スキルの店は他にも何個もあるが、ここは朝早くから開いていて、いつも空いているからな」

 そう言ってノラは店の中に入っていく。

 そんなノラを見てスクエは慌てて後を付いて行き店の中に入るのであった。








 
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