人間三原則

こーぷ

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第1章 ヒーロー見参

41話 ヒーロー見参!

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「──ッオラ!」
「あははは、ロメイ、張り切っているな!」

 ノラを囲む様にリプレス達は立ち並ぶ。

「さて、最終的に壊すとしても──その前に愉しまないとな」

 一人のリプレスが醜悪な笑みを零しながらノラを見下ろす。

「誰からヤルよ?」

 その言葉に、我先にと手を挙げて主張するリプレス達。

「ッチ、決まるわけねぇーか」

 結局リプレス達は序列の一番上の奴が最初に楽しむ事にした様だ。

「へへ、悪いが先にやらせて貰うぜ?」

 一体何をするつもりなのか一人のリプレスはベルトを緩める。

「クッ……離せ……」

 ノラ自身も、これから何をされるか想像が出来るのか全力で抵抗するが、複数人に抑え付けられている為、脱出出来ない様子である──そして魔法陣を浮かべ上がらせると直ぐに拳が飛んで来て集中力が途切れてしまい魔法陣が掻き消えてしまう。

 そんな様子を見ていたスクエの外見に変化がある事に、まだ誰も気が付いていない。

──俺がノラを助ける。何故ならヒーローだから!

 そして、最初は頭部のこめかみ辺りが淡く光っていたのだが、徐々に光が広がっていく。

──ヒーローの役目はなんだ?

 自身に質問する様にスクエは心の中で問う。

──ヒーローの役目は弱気を助け、悪事を砕く!

 そして、またスクエから漏れる光が強くなり、今では身体全体が淡く光っている。

「な、なんだコイツ?!」

 スクエを抑え付けている一人のリプレスがスクエの変化に気が付き呟くが、スクエには関係ない様だ。

──今、この場で弱気は誰だ?

 スクエは視線だけをノラに向ける。

──今、この場で悪は誰だ?

 スクエはノラを抑え付けているリプレスに視線を向けて、そしてロメイに視線を向けて、最後にヴーヴェに視線を向けた。

──こういう場合ヒーローならどうするんだっけか?

 スクエを纏う光が今では誰が見ても分かる様にハッキリと光っていた。

「お、おいヴーヴェさんに伝えに行け」
「あ、あぁ」

 スクエを抑え付けていた一人がヴーヴェの元に走った。

──こういう場合、ヒーローは……

「──ん?!」

 スクエは名一杯の力を込めてリプレスの拘束を振り払った。

 そして、直ぐに立ち上がり、近くに落ちていた鉄パイプを拾い上げ、今まで抑え付けて居たリプレスを正面にして対面する。

「なぁ──ヒーローって居ると思うか?」

 少し俯き気味な為にスクエの顔はリプレスからは見えない。

「はぁ? お前何言ってんだ?」

 スクエの問いの意味が分からないリプレス。

「だからよ──ヒーローって居ると思うか?」

 人間である筈のスクエに何故か気迫みたいなものを感じたのか、リプレスは無意識に一歩後ろに下がる。

「意味わからねぇー事言ってんじゃねぇーよ! ヒーローなんている訳ねぇーだろ」

 俯いている為、スクエの表情が見えない所も、また不気味さを醸し出している。

 リプレスは再び捕まえようと足を動かそうとする。

「成る程……ヒーローは居ないのか──それは……」

 スクエに向かってリプレスの手が迫り来る。

 だが、スクエ自身は全く慌てている様子は無い──そして、スクエは小生意気そうな笑みを浮かべながら顔を上げて言い放つ。

「いい事聞いたぜ!」

 その瞬間スクエの身体が今までに無い程に強い光で包み込まれた。

「な、なんだ?!」

 何かを感じ取ったのか、リプレスは咄嗟に目を庇い後ろに下がる。

 そして、その光にロメイ達も気がつく。

「──なんだ!?」

 今、正にノラの身体に手を掛けようとしたリプレスも光に気が付きスクエの方を向く。

 そして、それは抑え付けられて居たノラも同じだ。

「スクエ……」

 少しの間強く光っていたが、徐々に収まりスクエの姿を目視出来る様になる。

 そして、ヴーヴェもスクエの方を驚いた様子で何事か見ていた。

 スクエに何が起きたのか知る者はスクエ本人以外いない様だ。

「なるほどな……」

 自身の手を広げたり、閉じたりしながらスクエは自分に一体何が起きたか理解する。

「職業を手に入れる感覚って言うのはこういう事か」

 ニカリと笑みを溢すスクエは正面にいるリプレスに視線を戻す。

 スクエに視線を向けられたリプレスは一体何が起きているのか分からず──本来奴隷として、又は家畜としか認識して来た事の無い相手に向かって咄嗟に戦闘態勢を取る。

「お、お前は一体何者だ……?」

 恐らく無意識に出た言葉なのだろう、リプレスは小さい声で呟く。

 すると、スクエは小生意気そうな笑みをリプレスに向けて言い放つ。

「俺はヒーローだぜ?」

 そして、鉄パイプを握り直したかと思ったら、直ぐにリプレスに向かって走るスクエであった……
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