人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
上 下
40 / 67
第1章 ヒーロー見参

39話 ウーヴェからの提案

しおりを挟む
「ノラ、どこでアイツらに仕掛ける?」

 スクエとノラはロメイとウーヴェから離れて、リプレス二人組の後をバレない様に後を追っている。

「ふむ。向こうも警戒しているのか、なかなか隙を見せないな」

 ノラの言う通り、リプレス達は良く訓練されているのか、常に二人でお互いの死角を消し合う様に周囲に気を配っていた。

「罠の所に、なんとか誘導するしか無いな」
「なら俺が囮りになるか……」
「気を付けろよ?」
「──はは、もう今までの俺じゃねぇーからな、任せてくれ」
「ふふ、どうやらそうらしいな」

 二人は一度笑い合い、直ぐに表情を引き締める。

「じゃ、俺が囮りになって罠に誘導するから、タイミングはノラに任す」
「あぁ、絶対に捕まるんじゃ無いぞ」

 そう言ってスクエは二人組のリプレス達にバレない様に先回りする。

 そして、ノラは罠の方に向かって移動した。

 スクエはどの様に誘き寄せるか思案する。

「さて、あのリプレス達をどうやって罠まで誘導するかだな」

 あまり、近い位置で姿を見せてしまうと、身体能力の差で直ぐに追い付かれてしまうだろう。

「流石に、100mくらい離れてれば追いつかれ無いよな……?」

 まだ、リプレス達の身体能力がどれ程か測り切れて無いスクエは念の為に十分な距離を取る。

「よし、今回もさり気なく、さり気なく」

 スクエはゆっくりと──まるで散歩しているかの様子を出してリプレス達の前を横切る様に歩く。

 周りが静かな事も有り、100m離れた場所からでもスクエの足音を聞き取ったリプレス達は全力で走り出した。

「よし、食いついた」

 スクエはリプレス達に一度顔を向けて驚く演技をした後に全力で罠の場所に向かって走り出す。

「一体俺が、ここの世界に来てどれくらい逃げ回ったと思っているんだよ!」

 まるで二人のリプレスに言う様に呟くスクエは更に足の回転を早める。

 だが、やはり身体能力では勝て無いのかスクエを追うリプレス達は徐々に距離を詰めていく。

「クソー、不公平過ぎるだろ!」

 愚痴りながらも、スクエは罠を仕掛けた場所まで到着し──そのまま通り過ぎる。

「頼むぞ……」

 小さい声で何処か近くに潜んでいるノラに呟く。

 そして、少ししてリプレス達が罠の仕掛けた所まで差し掛かった瞬間──大きな音を立てながら山が崩れた。

「──どうだ?!」

 スクエは山が崩れた瞬間に足を止めて後ろを振り返る。

 暫くの間、周りのゴミや土埃が舞い上がり視界を塞いだ。

「スクエ、どうだ?」

 土埃が収まるのを見ているスクエにノラが近付いて来て話し掛ける。

「分からねぇーけど、何も聞こえない所を見るとやったんじゃねぇーか?」

 そして、少しすると土埃が収まる。

「「──っな?!」」

 なんと、二人のリプレスは無傷で立っていたのだ。

「ッチ、やはり罠の重量が軽過ぎたか……」

 ノラは舌打ちしながらも、リプレス達を警戒する。

「ノラ、逃げるか?」
「あぁ、対面で戦っても、こちらが不利だからな……」

 二人が後ろを振り返り走り出そうと足を上げた所で更に驚く事が起きた。

「やっと見つけたぞ」

 そこには何故かウーヴェとロメイ──先程入り口で見たリプレス達全員が揃っていたのだ。

「な、なんでだ……?」

 スクエの驚きにウーヴェが答える。

「不思議そうだな人間──コレだよ」

 ウーヴェが手に持っていたのは何やら小型の機械であった。

「通信装置……」

 ノラの呟きでスクエは理解する。

「俺を見つけた瞬間から連絡を取り合っていたのか」
「はははは、その通りだ──そして先回りさせて貰った──人間よ抵抗は辞めて大人しく捕まってくれないか?」

 まるで、家畜を見る様にスクエを見るウーヴェに一瞬だけ怯んでしまうスクエ。

 無意識に腕輪を触り気持ちを落ち着かせる。

「誰が捕まるかよ」

 スクエはウーヴェを睨み付けながら言い放つ。
 そしてスクエの隣に居たノラが一歩だけ前に足を踏み出しウーヴェに話し掛ける。

「ウーヴェとか言ったか? この人間は私が買った奴隷だから手を出すな──そして理解したらさっさと私達の前から消え去れ」

 赤い目をウーヴェに向ける。

 すると、次はウーヴェの隣に居たロメイが口を開く。

「な、なんでアイツが……? 俺とグロックさんで壊した筈なのに……」

 目を見開きノラを見つめるロメイにウーヴェが言い放つ。

「そんなに難しい事では無かろう──そこの人間が治したのでは無いか?」
「人間ごときがリプレスを……?」

 そして、ウーヴェはノラに視線を合わせて話し掛ける。

「どうやらお前は分かっている様だが、そこの人間はとても価値がある──それこそ売る相手を選べば一生遊んでいけるだろう」
「……」
「そこで、どうだろうか──全ての手続きは我々の方で手配しよう、そして売って得た金額の三割を渡す──三割だとしてもお前が再び壊れるまで一生働かずにノーブルメタルを楽しめるぞ?」

 リプレスなら誰もが魅力的に感じる提案をウーヴェが持ち掛ける。

「いや、断る──私にはする事があってな、その為にはこの人間が必要になる──諦めて立ち去れ」

 言葉では確実に解決しないと分かりつつもノラはウーヴェ達に立ち去る様に言う。

「その人間を渡さなければ再び壊れる事になっても渡さないのか?」

 少しずつであるが、ウーヴェから殺気が漏れ出してくるのをスクエとノラは感じ取る。

「クドイ──いいから立ち去れ」

 ノラの言葉に一度深い溜息を吐くウーヴェ。

「はぁ……しょうがない──お前達人間は絶対傷付けるんじゃ無いぞ?」
「「「「「「「はい」」」」」」」

 こうしてウーヴェの言葉をキッカケに二十人程がスクエ達を囲む様に立ち位置を移動するのであった……




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...