人間三原則

こーぷ

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第1章 ヒーロー見参

34話 マインドチップ

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 スクエとノラは簡易型ドラム家で今後の事を話し合っている。

「そういえば、スクエ」
「ん?」
「今回ロメイとウーヴェを倒そうとして作戦など建てているが、それはこれからリプレス達と人間達を救う為に戦うという意味として捉えて良いのかな?」

 破損している為、表情は読み取れないが、ノラはニヤリと笑っている様に見える。

「──あぁ、いいぞ」
「ん?!」

 スクエのアッサリとした言葉に驚くノラを見て、次はスクエがニヤリと笑う番だった。

「はは、驚いたか?」
「……あぁ、驚いた──まさかそんな私に取って嬉しい返答が来るとは思わなかったからな……」
「なら良かった──いつも俺が驚かせられてばかりだからな!」

 どうやら、あんなに嫌がっていたスクエが協力してくれると思って居なかった様だ。

「何故いきなり心を変えたか聞いても良いか?」

 ノラの疑問にスクエは即答する。

「ノラが言ったんじゃねぇーか──人間を救えばヒーローになれる──ってな!」

 スクエは又もニカリとまるで子供の様な笑顔をノラに見せる。

「はは、本当にそれだけの理由でリプレスと戦うのか?」

 なんだか可笑しそうに笑うノラに対してスクエは頷く。

「あぁ、そうさ──ヒーローは俺の小さな頃からの夢だからな!」

 スクエの表情を見て、ノラはスクエがヒーローになりたいと思っているのは本当の事だと察した。

「そうか、よし、ならこの私がスクエをヒーローにしてやろう! そして、一緒に人間達を救おうじゃ無いか」
「あぁ! 俺達で救おう!」

 ここに来て、ようやくと言っても良いだろう。

 ノラはやっとの思いで協力者を得る事が出来た。

 その年月は一体どれ程かは分からないが少なく見ても人間一人分の寿命などはとうに超える程の時間をノラは待ち続けていたのは確かであった。

「よし、ならスクエにプレゼントをやろう」

 そう言ってノラは立ち上がると、いきなり自身の身体をまさぐり始めた。

「何やっているんだ?」
「まぁ、少し待っているんだ」

 楽しみにしとけよ? と言わんばかりの声色でノラは何かを探す様に自身の身体を確認するが、みるみる焦っている様子に変わる。

「あ、あれ?! ──う、うそだ……」

 常に余裕がある様子のノラには珍しく、かなり焦り始めていた。

「な、無い?! あ、アレが無いと流石に──」

 そんなノラの様子を見ていたスクエはノラに何を探しているか確認する。

「何が無いんだ?」
「マインドチップだ! ──設計図と一緒に入れといた筈なのに……」

──ん? 確か設計図と一緒に小さいチップもあったな……

 何やら思い出したスクエは慌てているノラを置いとき、少し移動する。

「確か、ここら辺に……お? あったあった」

 何やら入れ物の様な場所から小さく、真っ黒なチップを取り出すとノラに対して見せる。

「これの事か?」
「──ん?!」

 スクエの言葉にノラは勢い良く振り向くと、どうやら目的の物だった様でスクエの腕に飛びつく様に移動してチップを見る。

「これだ!!」

 スクエの手からチップを取り、破損が無いか確認する。

「良かった……コイツが最後の頼みだったんだ……」
「そのチップはなんなんだ?」

 頭を傾げるスクエにノラが説明する。

「これはマインドチップだ」
「マインドチップ? それって人間の頭に埋め込まれているやつか?」
「いや、それはメンタルチップだな」
「何か違うのか?」

 スクエは疑問を口にすると、ノラの雰囲気がガラリと変わったのが分かる。

「ふむ、スクエが協力してくれる事になったんだし、私も話さないとな──いやスクエには聞いて欲しい」

 そう言うとノラはゆっくりと話始める。

「まず、コイツの説明をするか」

 ノラは黒いチップを見ながら話す。

「この黒いチップは先程も言ったがマインドチップと言ってな──簡単に言うと人間三原則のプログラムが組み込まれていないメンタルチップだと思ってくれ」

 ノラの言葉にスクエがピンと来た様に質問する。

「なら、何の制限も無しに職業を得られるのか?!」

 ワクワクした様子のスクエにノラは少し微笑む様な声で頷く。

「はは、頭の悪そうな顔して察しがいいな?」

──ん? 今、罵倒されたか? いや、気のせいだよな……

 何とも釈然としない様子であったスクエだが、それよりも職業が得られる事に期待が膨らむ。

「コイツを埋め込む事でスクエはリプレス達に対抗出来る力が得られる……かもしれない」
「なんだよ……微妙な言い方して……」
「こればかりは運だからな、ゴミ職業だったら、勝てないで終わる」
「な、なかなかリスキーじゃねぇーかよ……」

 そこでスクエはある事に気がつく。

「ん? ──そもそもなんでノラがメンタルチップに似たような性能を持つマインドチップを持っているんだ?」

 その言葉にノラはゆっくりと首を左右に振る。

「はは、今日は冴えているな。最初に私が何の仕事しているって言ったか覚えているか?」
「えっと、確か科学者か何かって言ってたか?」
「あぁ、そうだ。そして、このマインドチップは私が作った」

 ノラは再び手に持っている真っ黒なチップをスクエの顔の前に持っていく。

 そして、自身を卑下する様に更に言葉を続ける。

「そして、今人間達の頭に埋め込まれているメンタルチップの製作者も私だ……」
「──ッ?!」

 ノラの言葉にスクエは目を見開き驚くのであった……
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