人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
上 下
34 / 67
第1章 ヒーロー見参

33話 ノラ復活!

しおりを挟む
 そこにはスクエが横たわっていた。

 どうやら、ノラの起動を待てずに眠ってしまった様だ。

 すると、誰かから肩を揺すられる感触を感じ取るスクエだったが、まだ眠いのか起き上がろうとはしない。

──ん……なんだよ……寝かせろよ……


 夢と現実の狭間に居るかの様に意識がハッキリしないスクエは、肩を揺さぶられているのは、現実なのか──それとも夢なのかの判断が出来ていない様だ。

 すると、声が聞こえる。

「ふふ前と同じく寝顔姿は本当に子供みたいだな」

 誰の声かは分からないがスクエの耳にスーッと入っていくのを感じる。

──あぁ……なんだか懐かしい声だな……

「ほら、いい加減起きろ少年!」

 すると、今までとは段違いの衝撃を肩に感じたスクエは跳ね起きる。

「──ッいてぇ!?」
「あはは、やっと起きたなスクエ」

 スクエに強烈な一撃を与えた人物が目の前で笑っていた。

「……ノラか……?」
「あぁ──良く私を修理してくれたな」

 ノラの顔はベゴベコに陥没してたりと、とてもじゃ無いが元の原型が残って居ないが──何故か笑っているだろうとスクエは感じ取る。

「お前──なんで勝手に壊れてんだよ! 俺、めちゃくちゃ大変だったんだぞ!?」

 再び、ノラと会えて嬉しい筈のスクエだが、少し照れ臭かったのか、八つ当たり気味にノラに言い放った。

「あはは──それは失礼した。ちょっと油断してしまってな、スクエは大丈夫だったか?」
「あぁ……何度かリプレス達に捕まりそうになったけど逃げ切った」
「そうか……よく頑張ったな」

 ノラはスクエに近付き頭を撫でる。

「子供じゃねぇーんだからやめろ」
「ふふ、前にも言ったが私から見たら子供だ」

 それから二人はお互いに起きた事を話し合った。

「──じゃ、ノラは俺のせいで狙われたのか……?」
「まぁ……そうだな。奴らの狙いはスクエだった」
「そうか……それは悪かったな……」

 やはり、自身のせいでノラが壊れたと知り落ち込むスクエ。

「はは、気にするな──油断した私も悪かったしな──それにこうして再び起動出来たから問題無しだ」

 破損の酷い顔から表情は読み取れないがノラは本当に気にしていない様子であった。

「それにしても、私が壊れてから一ヶ月以上も経過しているのか──不思議なもんだな」
「不思議?」
「あぁ──私からしたら壊された所で記憶が無くなっているから、壊されたのだって今さっきの様に思えるよ」
「そういうものなのか?」
「あぁ、どうやら、そういうものらしい」

 ノラはスクエと話しながらも自身の状態を確認している。

「スクエは良くこんな場所で生き残れたな──それにアイツを倒したんだって?」

 アイツとはグロックの事だろう。

「あぁ、倒すのめちゃくちゃ大変だったぜ?」

 スクエは少し自慢げにノラに話す。

「ほぅ……」

 すると、そんな様子のスクエを見てノラは何か気が付いた様子であった。

「な、なんだよ?」
「いや、なんか雰囲気が変わったと思ってな」

 ノラの言葉に、次はスクエが関心する。

 スクエは昨日の夜にヒーローになると心に決めてからは──今まで感じていた心のモヤモヤが綺麗さっぱり取れた様子であり、それが表情にも現れている。

 しかし、その事をノラは知らない筈なのだがノラにはスクエの変化が分かった様だ。

「ま、まぁーな。俺も常に成長する人間って事だ──カッコいいだろ?」

 ニカリと笑うスクエにノラも嬉しそうに頷く。

「あぁ──今のスクエの方が生き生きしていて私は良いと思うぞ」

 この世界に置いて、人間は常に下を向いて歩く。
 それは、リプレス達に因縁を付けられない為だったり生きる希望無かったりとマイナスの面が大きく影響している。

 そんな中スクエの様な生き生きした表情をした人間を見る事がノラは好きな様だ。

「私はスクエの様な人間が好きだ」
「な、なんだよ──いきなり……」

 女性──いや実際にリプレスなのだが異性にストレートに好きと言われた事が無いスクエは照れる様にそっぽを向く。

「あはは──まだまだ若いな少年」

 ノラにはお見通しなのか、スクエは更に顔を赤くする。

「う、うるせーんだよ!」

 それから、スクエはノラにウーヴェ達の事も話した。

「なるほど……グロックの次はウーヴェとか言うリプレス達がスクエを追っているのか……」

 ノラは手に顎を乗せて考える。

「最後に見たのはいつだ?」
「約一ヶ月前だな」
「そうなると、そろそろスクエが隠れてそうなめぼしい所はあらかた調べ終わっている頃だな……」
「で、でも流石にまたここには来ないよな?」
「いや、それは分からん……けどなんとかしないとだな……」

 ノラの言葉にスクエは自然と笑顔になる。

「ん? どうした?」
「いや、こうやって一緒に考えてくれる相手が居るのっていいなと思ってな」
「はは、私はスクエの主人だからな当たり前だろ?」

 ノラが壊されてからは一人で逃げて、一人で解決して来たスクエに取って、頼れる存在がいる事はとても嬉しい事であった。

「よっしゃ──これからどうするか二人で考えようぜ!」
「あぁ──このまま戻っても、また同じ事の繰り返しになるだけだろうからな、何か考えてロメイとウーヴェ達をどうにかしようではないか」

 こうして、起き上がったノラと一緒にスクエはこれからどうするかを相談し合うのであった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...