33 / 67
第1章 ヒーロー見参
32話 スクエ決意する
しおりを挟む
「お、あった!」
スクエはジャンク部品の中から目当ての部品を見つけた様だ。
「長かったけど、全て揃ったぞー!!」
広大なスクラップ場でスクエは両腕を天に伸ばして大声で叫ぶ。
「長かった──マジで気が狂うかと思ったぜ」
破損パーツを取り分けてから、早速部品探しをしていたスクエだったが、これがまた苦労の連続だった。
そもそも、この広大な場所から小さい部品パーツを探して当てるなんて相当骨の折れる作業だ。
しかも、探す部品は一つや二つ所では無く相当な数である。
はじめる前から分かっていた事とは言え、中々出来る事では無い──しかし、スクエやり遂げたのだった……
「めちゃくちゃ時間掛かったな」
あれからパーツ探しだけで更に二週間程を丸々費やしてしまったスクエだが何とか最後のパーツまで見つける事が出来、今ではホクホク顔だ。
「よし、早速全て組み立てて起動させてやるぜ!」
長かった苦労も、後少しと考えれば嬉しいものだ。
直ぐに自分の家である簡易式のドラム家まで戻ってきたスクエ。
「パーツ見つけては少しずつ組み立てて来たから、後はこのパーツを取り付けて終わりだな……」
スクエの手には長細いネジの様は物が握られていた。
そして、スクエの目の前には横たわっているノラの姿がある。
顔部分は未だベゴベコに凹んでいるが、それはノラが起きてから相談しようと思っている。
「頼むぞ、動いてくれよ……?」
ノラの前にしゃがみ込み最後のパーツを嵌め込んだスクエ。
「──動け!」
パーツを嵌め込み少し離れるスクエだったが、ノラは一向に動かない。
「……いやいや、まてまて、そんなの勘弁してくれよ?!」
ノラを組み立て始めて一ヶ月近い月日が経過している。
そんな長い時間を掛けて、結局動きませんでした……ではこれまでの苦労が水の泡である。
「──ノラ、起きろ!」
横たわっているノラの側で呼び掛けるスクエ。
すると、スクエの願いが通じたのかノラから何やら機械が動く様な音が聞こえ始める。
「──ッ?!」
その音はまるでパソコンを起動した時の音に似ている。
「きたきたきたーー! これは流石にきたんじゃ無いか?!」
いくら技術が進んだ、この世界でも流石に人間型のロボットを動かす際の初期動作は時間が掛かる様で、起動音は聞こえるが一向に動き出す気配が無い。
その為スクエは一旦落ち着く為に地面に座り込む。
「これで、ノラが動けば助かる……よな?」
スクエ自身、ノラを治した所でロメイとウーヴェに勝てるとは思っていないが、何かの策なら持っているのでは無いかと淡い期待を寄せていた。
「それに、一人より二人だよな!」
スクエ自身、一人は寂しかった様で誰か話し相手が欲しい様だ。
暫く動かないと感じたスクエは地面に座りながらノラの起動を待つ事にした。
そして、ポツリとある言葉を漏らす。
「ヒーローか……」
ノラの部品を集めている時、スクエの頭の中ではずっとノラに言われたある言葉が何度も蘇った。
「この街の人間を救えばヒーローになれるぞ!」
その言葉を最初にノラから聞いたスクエは自分なんかでは絶対に無理だと諦めていた。
もちろん、今でも出来るとは思っていない様だが、考え方が少し変わった様だ。
「失敗するかも知れないけど挑戦するのは……有りだよな……」
未だ横たわっているノラをジッと見ながら呟くスクエ。
「俺がノラに協力して何が出来る訳でも無いと思うが……この世界の人間達に対する状況は変えたい……」
スクエはこれまでリプレス達に虐げられて来た人間達の事を思い出す。
それは最初の奴隷競売の時に見た人間の女性だったり、ロメイに酷い仕打ちをされていた店員だったり、他にも、このアクアスを歩けば常に人間はリプレス達から酷い扱いを受けている。
そしてスクエの中で人間を救いたいと思った一番の出来事はスラム街での子供に対しての仕打ちだ。
「あんな、小さい子がスラム街で暮らしている事すら間違っているのに──リプレス達は更に躊躇なく暴力まで振ろうと……」
恐らく、スクエがあの場で出て行かなかったら子供は死んでいただろ……
「こんな世界間違っている」
だが、そんな間違っている世界を正そうとする者は居ない──いや正確にはノラ一人である……
「人間はメンタルチップで抵抗出来ない……」
人間三原則に逆らう事が出来ない人間達は、この状況をどうする事も出来ない。
「なら、誰がやる──そんなの決まっているよな」
スクエは不敵に笑う──その表情は、これまでこの世界に来てからのスクエでは考えられ無い程、良い笑顔であり小生意気そうな笑みである。
そして、その不敵な笑いは本来のスクエの顔──そう、ヒーローを目指していた時の小さな頃のスクエの顔付きである。
スクエは無意識に腕に付いている腕輪に手を添えて呟く。
「誰も出来ないなら俺がやってやる」
そしてスクエは人が変わった様に立ち上がると笑い出す。
「あははは──なんだか上がってきたぜ!! こんな気分になるのはいつ以来だ?」
スクエの表情はいつも通り生意気そうではあるが、今は更に拍車が掛かりこと更に生意気そうだ。
「日本では成れなかったが、この世界でなってやる!」
スクエは一度深く深呼吸すると、大きな声で、暗くなった夜空に向かって宣言する。
「俺が人間達のヒーローになってやるぞーーーー!!!!」
こうして今まで消えかかっていたスクエのヒーロー魂に再び真っ赤な炎が灯り、子供の頃から止まっていた時間が動き出した様だ……
スクエはジャンク部品の中から目当ての部品を見つけた様だ。
「長かったけど、全て揃ったぞー!!」
広大なスクラップ場でスクエは両腕を天に伸ばして大声で叫ぶ。
「長かった──マジで気が狂うかと思ったぜ」
破損パーツを取り分けてから、早速部品探しをしていたスクエだったが、これがまた苦労の連続だった。
そもそも、この広大な場所から小さい部品パーツを探して当てるなんて相当骨の折れる作業だ。
しかも、探す部品は一つや二つ所では無く相当な数である。
はじめる前から分かっていた事とは言え、中々出来る事では無い──しかし、スクエやり遂げたのだった……
「めちゃくちゃ時間掛かったな」
あれからパーツ探しだけで更に二週間程を丸々費やしてしまったスクエだが何とか最後のパーツまで見つける事が出来、今ではホクホク顔だ。
「よし、早速全て組み立てて起動させてやるぜ!」
長かった苦労も、後少しと考えれば嬉しいものだ。
直ぐに自分の家である簡易式のドラム家まで戻ってきたスクエ。
「パーツ見つけては少しずつ組み立てて来たから、後はこのパーツを取り付けて終わりだな……」
スクエの手には長細いネジの様は物が握られていた。
そして、スクエの目の前には横たわっているノラの姿がある。
顔部分は未だベゴベコに凹んでいるが、それはノラが起きてから相談しようと思っている。
「頼むぞ、動いてくれよ……?」
ノラの前にしゃがみ込み最後のパーツを嵌め込んだスクエ。
「──動け!」
パーツを嵌め込み少し離れるスクエだったが、ノラは一向に動かない。
「……いやいや、まてまて、そんなの勘弁してくれよ?!」
ノラを組み立て始めて一ヶ月近い月日が経過している。
そんな長い時間を掛けて、結局動きませんでした……ではこれまでの苦労が水の泡である。
「──ノラ、起きろ!」
横たわっているノラの側で呼び掛けるスクエ。
すると、スクエの願いが通じたのかノラから何やら機械が動く様な音が聞こえ始める。
「──ッ?!」
その音はまるでパソコンを起動した時の音に似ている。
「きたきたきたーー! これは流石にきたんじゃ無いか?!」
いくら技術が進んだ、この世界でも流石に人間型のロボットを動かす際の初期動作は時間が掛かる様で、起動音は聞こえるが一向に動き出す気配が無い。
その為スクエは一旦落ち着く為に地面に座り込む。
「これで、ノラが動けば助かる……よな?」
スクエ自身、ノラを治した所でロメイとウーヴェに勝てるとは思っていないが、何かの策なら持っているのでは無いかと淡い期待を寄せていた。
「それに、一人より二人だよな!」
スクエ自身、一人は寂しかった様で誰か話し相手が欲しい様だ。
暫く動かないと感じたスクエは地面に座りながらノラの起動を待つ事にした。
そして、ポツリとある言葉を漏らす。
「ヒーローか……」
ノラの部品を集めている時、スクエの頭の中ではずっとノラに言われたある言葉が何度も蘇った。
「この街の人間を救えばヒーローになれるぞ!」
その言葉を最初にノラから聞いたスクエは自分なんかでは絶対に無理だと諦めていた。
もちろん、今でも出来るとは思っていない様だが、考え方が少し変わった様だ。
「失敗するかも知れないけど挑戦するのは……有りだよな……」
未だ横たわっているノラをジッと見ながら呟くスクエ。
「俺がノラに協力して何が出来る訳でも無いと思うが……この世界の人間達に対する状況は変えたい……」
スクエはこれまでリプレス達に虐げられて来た人間達の事を思い出す。
それは最初の奴隷競売の時に見た人間の女性だったり、ロメイに酷い仕打ちをされていた店員だったり、他にも、このアクアスを歩けば常に人間はリプレス達から酷い扱いを受けている。
そしてスクエの中で人間を救いたいと思った一番の出来事はスラム街での子供に対しての仕打ちだ。
「あんな、小さい子がスラム街で暮らしている事すら間違っているのに──リプレス達は更に躊躇なく暴力まで振ろうと……」
恐らく、スクエがあの場で出て行かなかったら子供は死んでいただろ……
「こんな世界間違っている」
だが、そんな間違っている世界を正そうとする者は居ない──いや正確にはノラ一人である……
「人間はメンタルチップで抵抗出来ない……」
人間三原則に逆らう事が出来ない人間達は、この状況をどうする事も出来ない。
「なら、誰がやる──そんなの決まっているよな」
スクエは不敵に笑う──その表情は、これまでこの世界に来てからのスクエでは考えられ無い程、良い笑顔であり小生意気そうな笑みである。
そして、その不敵な笑いは本来のスクエの顔──そう、ヒーローを目指していた時の小さな頃のスクエの顔付きである。
スクエは無意識に腕に付いている腕輪に手を添えて呟く。
「誰も出来ないなら俺がやってやる」
そしてスクエは人が変わった様に立ち上がると笑い出す。
「あははは──なんだか上がってきたぜ!! こんな気分になるのはいつ以来だ?」
スクエの表情はいつも通り生意気そうではあるが、今は更に拍車が掛かりこと更に生意気そうだ。
「日本では成れなかったが、この世界でなってやる!」
スクエは一度深く深呼吸すると、大きな声で、暗くなった夜空に向かって宣言する。
「俺が人間達のヒーローになってやるぞーーーー!!!!」
こうして今まで消えかかっていたスクエのヒーロー魂に再び真っ赤な炎が灯り、子供の頃から止まっていた時間が動き出した様だ……
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる