人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
上 下
29 / 67
第1章 ヒーロー見参

28話 更なる強大な敵出現……

しおりを挟む
 暗闇の中を必死に走っているロメイが居た。

「や、やべぇ──奴隷がグロックさんを倒しちまったなんて信じられねぇ」

 ロメイは強い者には下手に、弱い者には強気に出る様なリプレスである。

 ここで言う強者とはグロックの様なリプレスであろう。
 ロメイは量産型であり──尚且つ身長等も低いのでリプレスの中でも最弱と言っても良いだろう。

 そんなロメイはどんなリプレスに対しても下手に出る。

 しかし、弱い者──人間──には強気の態度を取り、暴力的になる。
 何故ならば、人間に対してだけ威張れるからだ。

 そんな事を長く続けていたロメイは人間は絶対的に自分より格下だと思い込んでいた……スクエと出会うまでは……

「あ、あんな人間、み、見た事ねぇ!」

 何度も後ろを振り返りスクエが追って来てないかを確認しながら走るロメイ。

 そして、スクラップ場から大分離れた位置でやっと足を止めたロメイは最後にもう一度スクエが追って来て無いか確認した。

「あ、あはは──さ、流石に人間じゃこのスピードで追って来れないよな」

 乾いた笑いをして、やっと一安心したのかため息を吐き、ゆっくりと自分の家に向かって歩き出した。

「これは、もうあの人間に関わらない方が良さそうだな──俺まで壊されたら、たまったもんじゃねぇーし」

 どうやら、スクエを追う事を諦めたロメイ。

 それから、ロメイはいつもの冴えない日常に自分の身を再度置く事を想像して苦笑いする。

「はは、やっぱり俺にはこんな生活がお似合いなんだな」

 独り言の様にブツブツと話していると、声を掛けられる。

「おい」
「──ッ!?」

 急に声を掛けられたロメイはスクエが追って来たのかと思い慌てて振り向くと、そこには何人かのリプレスが立っていた。

 そのリプレス達は全員黒のスーツを着込んで居て、ロメイに話しかけて来た。

「お前、グロックと最近一緒に行動してた奴だよな?」
「え、えぇ──そうです」

 ロメイは黒ずくめのリプレス達を見て、一発で普通の者達では無いと感じ取った。

「グロックの奴は今一緒じゃないのか?」
「は、はい──夜なので解散しました」
「そうか」

 何やらリプレス達は話し合うと、またロメイに聴き始める。

「一つ聞きたい事がある」
「なんでしょうか?」

 絶対に目を付けられてはならないと思っての行動なのかロメイは腰を折り曲げて小さい身体を更に縮こませる。

「最近、グロックと二人で何を追っている?」
「──ッ!?」

 自分達の正確な目的は分からないにしても、何かを追っている事を知っている目の前のリプレス達にロメイは驚く。

「ど、どういう事でしょうか?」
「隠すな──お前達が何かを追っているのは知ってんだよ」

 最初から友好的な雰囲気では無かったが、更に険悪な雰囲気になり、ロメイは内心ビビりまくる。

 すると、更に一人のリプレスが黒ずくめのリプレス達の間から登場した。

「吐いたか?」

 その男はとても厳格そうな雰囲気を身に纏っていた。

「ウーヴェさん──いえ、まだ目的を聞いていません」
「そうか」

 そのウーヴェと呼ばれた男は周りにいるリプレスと同じ様に黒スーツであり、サングラスを掛けていた。
 そして、見た目は白髪で顔にはシワがある為、結構昔に製造されたリプレスの様だ。

「おい、お前──名はなんという?」

 ウーヴェがロメイに質問する。

「ロ、ロメイと言います……」

 ロメイは直感で、この男に逆らってはダメだと肌で感じ取る。

「そうかい──それでロメイよ、私の部下であるグロックは何処にいる?」

 直ぐに知らないと言おうと言葉を発しようとしたロメイに被せる様にして再度ウーヴェが話す。

「知らないとは言わせんぞ? ──お前がグロックと昼まで一緒だった事は知っている」

 先に逃げる道を塞がれてしまうロメイはどうすれば良いか分からず、視線をあちこちに逃す。

「フンッ──お前がグロックと何を追っているか教えろ」
「な、なにも──」

 否定の言葉を言い終わる前にリプレスの二人に両腕を掴まれしまう。

「ウーヴェさん、こいつ壊しますか?」
「──ッ!? や、やめてくれ!」

 これから何をされるか想像したロメイは全力で懇願する。

「な、なんでも話すから、それだけはやめてくれ!」

 ロメイの言葉にウーヴェが一度だけ手を振ると、今までロメイを抑えていたリプレスが腕を解放した。

「お、俺とグロックさんが追っていたのは一人の人間です」
「人間だと?」

 ウーヴェの表情が少し動く。

 グロックが必死になって動いていた為、もっと凄い山だと思っていたが、人間という言葉を聞き、ウーヴェは不思議に思った様だ。

「は、はい──奴隷の人間を、捕まえる為に追っていました」
「それは何故だ?」

 もう、スクエとは関わりたく無かったロメイは本当は言いたく無かったが、ここでスクラップにされては堪らないと言わんばかりに、これまでの話を全てウーヴェに話す。

 そして全て聴き終えたウーヴェはここに来て初めて笑う。

「あはは──そうか人間三原則が効かない人間か、面白い」

 愉快そうに笑った後にウーヴェはロメイに命令する。

「明日、そこに私達を連れて行け」
「で、でも──」
「では、明日な──逃げたらどうなるか分かっているな?」

 最大限の脅しをしてウーヴェ達は立ち去る……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...