人間三原則

こーぷ

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第1章 ヒーロー見参

18話 リプレスとの鬼ごっこ

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「いてて……」

 昨日、ロメイにやられた箇所が痛むのかスクエは顔をしかめながら起き上がり居間に行く。

「おはよう──どうやら一応大丈夫の様だな」

 スクエのしかめる顔を面白そうに笑いながら新聞に視線を戻すノラ。

「いてて──これのどこが大丈夫だって言うんだよ……」
「あはは、まぁ暫くは安静にしているといいさ」
「言われなくても──」

──とは言っても飯は必要だから結局買いに行かないとだな……

「ん? ──ご飯買いに行くのか?」
「あぁ……けど、また昨日のロメイとか言うリプレスが居たらどうしようかと思ってな……」
「ふむ、しょうがない私も着いて行こう」
「わ、悪いな……」
「ふふ、気にする事は無い──おんぶでもしてやろうか?」

 綺麗な顔立ちのノラは自身の容姿がスクエにとって、どう映っているのが分かっているのか、揶揄う様にスクエの顔ギリギリまで近付き、甘い声で呟いた。

 そんな事をされた当の本人は顔を真っ赤にして顔を自分から離す。

「あはは──スクエは可愛いな」

 結局その日から一週間程は毎日ノラがスクエを守る形で屋台と家を一緒に往復する──そして心配していたロメイも特に現れなかった。



「お? ──今日も朝ごはん買いに行くのか?」

 朝になって起きたスクエがいつも通り外に出ようとした所を見てノラも席を立とうとするがスクエが止める。

「あぁ、ノラ──もういいや一週間も経過して特に何も無かったし」
「そうか?」
「あぁ──今日から一人で問題なーし」
「それは残念だ」

 この所、スクエを揶揄うのが毎日の日課になっていたノラは実に残念そうにしていた。

──あのまま、揶揄われていたら、こっちの心臓が持たない……

 そう思いながら、家を出たスクエはいつもの露店に向かう。

「ふぅ……今日もリプレス達が空高く飛び回っているなー」

 空を見上げて眩しそうに目を細め、何台ものドローン型リプレスを眺めるスクエ。

 この世界に転移して一週間以上が経過して奴隷生活にも慣れてきたのか、ここに来た頃に比べて、どこか表情や雰囲気が柔らかい感じである。

「アレから、あの店員を見なくなったけど大丈夫か?」

 ロメイとのひと騒動以降、店員が露店に立つ姿を見る事が無かったスクエは心配する。

 ご飯を買う為に出店が立ち並ぶ道をゆっくり進みながら、何を食べようか考える。

「うーん、どうせなら食べた事無いやつがいいな」

 顔をあちこちに動かしていると、前から来た人にぶつかる。

「あ、すみません」

 内心ビビリのスクエは咄嗟に敬語で謝り相手を見る。

「──ッ!?」
「よぅ──随分とこの時を待ってたぜ?」

 そこには、とても友好的な感じでは無い笑みを浮かべているロメイが居た。

 スクエは以前に痛め付けられた事を思い出し身体が震えるもの、即座に後ろを向き、駆け出す。

 流石のロメイもここまで早く反応して逃げるとは思わなかったのか少し焦りながらもスクエを追い掛ける。

「おい──テメェ待ちやがれ!」

 本来、両者の身体能力には大きな差がある。

 その為直ぐに追い付かれる筈であったが、出店が立ち並ぶ道は混雑しておりスクエは間を上手くすり抜ける様に走り出す。

「チクショ──お前ら邪魔だ退け!」

 スクエとは違って周りの人間を避ける事もしないで、走るロメイは上手くスピードが上がらない様でスクエを捕まえる事が出来ない。

 しかし周りの人間達はいきなりリプレスが叫んだ事に恐怖を感じ次々と道を開ける。

「クソ──もうあんな所まで」

 ロメイは空いた道を全力で走り、スクエを追いかけ始めた……


「はぁはぁ──や、やばい……なんでアイツが居るんだよ!?」

 スクエは後ろを向きながら走る。

「追い掛けて来やがる!?」

 後方の方では物凄いスピードでスクエを追い掛けるロメイが見え、恐怖で転びそうになるのを必死に耐えながら前に向かって足を動かし続ける。

「ど、どうすればいい──ここから家に行くまでに絶対追い付かれちまう──てか、何で追い掛けて来るんだよ!」

 スクエの予測通り、ロメイのスピードはどんどん上がっていき、このままでは直ぐに追い付かれ捕まってしまうだろう。

「こっちに逃げる!」

 スクエはとにかく狭い道や曲がり角など入り組んだ道を選び、逃げる様に走りロメイを撒こうとする。

「はぁはぁ」

 人間であるスクエは体力的にもキツくなりどんどんスピードが落ちていくのに対して疲れ知らずのロメイが直ぐ後ろまで迫っているのを感じる。

「あははは──あの時からずっとお前を探してたんだぜ?」
「なんでだよ!」
「それだよ──オメェ人間三原則効かねえだろ?」
「──!?」

 ロメイの指摘にスクエはノラの言った言葉を思い出す。

──そう言えば、色々な奴が居るから気を付けろってノラが言ってたな……

「オメェを裏ルートで売り飛ばして大金を手に入れるんだよ、俺は!」

──正に、ザ! 悪役的なセリフを述べやがって……

 必死に腕を振り、必死に足を動かすがやはり人間とリプレスではどうしようも無い差がある様だ。

「そろそろ鬼ごっこも終わりか?」

 スクエは後ろからロメイに襟元を掴まれそうになるが──ロメイが誰からか声を掛けられる。

「おう、ロメイじゃねぇーか」

 その男の方を向くロメイは顔を硬らせてから足を止める。

──ん? なんで止まった?

 疑問に思いながらもスクエは止まらずロメイからどんどん距離を取る。

 一方ロメイは、厳つそうな顔付きの男に呼び止められていた。
 その男はロメイと違い体格が大きく180はありそうな身長に金髪で目付きは鋭く常に獲物を求めている様な表情であった。

「グ、グロックさん……」
「お前、何しているんだよ人間なんて追い回してよ!」
「い、いえ特には──あはは気晴らしですよ」

 弱者に強く、強者には弱いロメイは強そうな見た目のグロックには下手に出ている様だ。

「あん? なんか、怪しいな……オメェなんか隠しているだろ?」

 バコッ! と音が鳴りロメイが地面に倒れる。

「ッツ……」
「おい、クソチビロメイあんまり俺を怒らすなよ? ぶち壊すぞ?」
「す、すみません──じ、実は……」

 ロメイは何やらグロックと言うリプレスに話し始める……
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