15 / 67
第1章 ヒーロー見参
14話 奴隷を痛ぶるリプレス
しおりを挟む
「す、すまん──もう一度言ってくれないか?」
何かの聞き間違えだろうと言う様に、もう一度聞き返すノラに向かってスクエはハッキリと伝える。
「悪いが俺には無理だ。ノラには色々世話になっているが今の話に協力は出来ない」
「な、何故だ!?」
ノラは会ってからこれまで見た事ない程動揺する。
そんなノラの姿を見て申し訳無さそうな表情をするスクエ。
「理由は──無い……俺には無理だと思っているだけだ」
「それは嘘だ──理由も無しに断る訳が無い! だって、この街の人間を救えばヒーローになれるんだぞ!?」
スクエの夢を知らない筈のノラからヒーローと言う単語が出た事にスクエは一瞬だけ反応する。
「俺は……ヒーローなんてなりたく無い──それにリプレスと戦う事になっても勝てる訳が無いだろ?」
──競売中に老紳士に腕を掴まれたが、とんでもない力だった……それにノラにだって腹部を殴られたが反応すら出来なかった……
「た、確かに我々リプレスはスクエ達人間よりも力など強いし人間に出来ない事が出来る……けど……」
ノラは自分で言葉にして、気付かされた様な顔をする。
「そうだな……我々リプレスに立ち向かうのは、いくら人間三原則の効かないスクエでも危険……だな……」
賢いノラではあるが、そこまでは気が回らなかったのか改めて考えると一緒に行動する人間側にメリットが無い事に気がつく。
「なら! リプレスに対抗出来る術があれば協力してくれるか?!」
それでも、尚諦めないノラにスクエは疑問を覚える。
「なぜ、そこまで人間を救いたい?」
「そ、それは──不便だからだ」
「それだけの理由で全リプレスを敵に回すつもりなのか?」
「そうだ」
間を置かず返事するノラにスクエの心のどこかでチクりと痛みを感じる。
「──仮にリプレスに対抗出来る術があったとしても俺はノラに協力する事は出来ない!」
そう言うとスクエはノラから逃げる様にして外に出る為に玄関に向かった。
「ま、待つんだ!」
ノラの言葉を無視してスクエは歩き続け家を出た。
──クソ……
何に対しての怒りなのかスクエの表情は険しい。
「あーぁー、俺って何したいんだろう……」
心で思っている事と態度があべこべである事に気が付きつつも、やはりパルムの事を思い出してしまい結局はヒーローの様に振る舞えない。
「パルムは馬鹿な俺を助けようとして自身の身を呈して──そんな俺が誰かを救うだと? ──ッハン! 無理だね……」
急に怒ったり、落ち込んだりと情緒不安定なスクエは小腹も減った為、出店に出向く。
「腹膨らませて忘れよう……」
いつもの店に向かう為に歩いていると、出店の前が何やら騒がしかった。
そして他の出店の店員達である人間が誰一人としてその場に居なかった。
「な、なんだ?」
周りの店が無人な事に疑問を覚えながら騒がしい方に向かい壁越しに顔だけ覗かせる。
「──!?」
騒がしい理由と人間が居ない理由が直ぐに分かった様だ。
「オラ! オメェ、なんでコレしか稼いでいねぇんだよ?!」
「す、すみませんロメイ様」
スクエがこの二日間ご飯を買っていた店の店員が地面に膝を付けて土下座をしている。
「謝罪なんてイラねぇーんだよ、金を稼げ!」
土下座する店員を蹴り付けている者は人間の主人であるリプレスであろう。
「──ッツ……すみません……」
リプレスの暴行にも耐えて謝り続ける店員。
「……あれが人間三原則の効果か」
スクエはバレない様に顔だけソーっと出して状況を観察する。
「お前、そろそろ死ぬか?」
「それだけはご勘弁下さい」
「あ? なら必死に稼げよ! お前のせいでノーブルメタルが買えないだろ!!」
──た、助けねぇと!?
ヒーローを目指すスクエは心の中で叫ぶ──しかしいつも通り身体は動かない。
──ど、どうすればいい!? ノラを呼ぶか?
人間の味方であるノラであれば恐らくこの場を収めてくれるだろうが、スクエが呼びに行っている間に店員がどうなるか分からない。
「オラ! オラ!」
「イッ……ダイ……」
「イテェーか、オラ!」
そのリプレスは口を広げて笑っていた。
先程までとんでも無く怒っていたと言うのに今は実に楽しそうにして人間を蹴り続けている。
「はぁはぁ──死ぬか?! あはははは」
リプレスに蹴られる度に人間の反応がどんどん薄くなっていく。
そんな様子を見ていたスクエは……
「や、や、め、アァ……ハ…………」
リプレスを止めようと声を出そうとするスクエだが言葉を発する事が出来ず額から冷や汗が出る。
そしてスクエの頭の中ではパルムが死ぬ瞬間が何度もフラッシュバックしている。
──む、無理だ……俺には……
すると、スクエの肩をポンと誰かが叩く。
スクエは驚きながらも叩かれた方に顔を向けて確認すると……
「ノラ……」
「私に任せろ」
綺麗な顔でスクエに微笑むとノラは堂々とリプレスの方に近付く。
「おい、私の前であんまりそういう行為をするのは辞めて貰いたいんだがねぇ……」
先程の温かい笑顔では無く、今のノラは無表情に、そして汚い物を見たく無いのか目を瞑りながら男に言葉を放つ。
「あん?」
ノラに声を掛けられてこちらに背を向けていたリプレスが顔だけこちらに向けた。
男は、荒んだ目をノラに向ける。
スクエもノラが来た事で冷静になったのか相手のリプレスを良く観察する。
男のリプレスは身長も小さく身体は小太りであった。
瞳の色は青く一重でありこの世に常に不満を持っている様に荒んだ目をしており、鼻も潰れているのでは無いかと思える程に低い。
そんな男がノラに向かって話し掛ける。
「誰だお前? なんか文句あるのかよ?」
何かの聞き間違えだろうと言う様に、もう一度聞き返すノラに向かってスクエはハッキリと伝える。
「悪いが俺には無理だ。ノラには色々世話になっているが今の話に協力は出来ない」
「な、何故だ!?」
ノラは会ってからこれまで見た事ない程動揺する。
そんなノラの姿を見て申し訳無さそうな表情をするスクエ。
「理由は──無い……俺には無理だと思っているだけだ」
「それは嘘だ──理由も無しに断る訳が無い! だって、この街の人間を救えばヒーローになれるんだぞ!?」
スクエの夢を知らない筈のノラからヒーローと言う単語が出た事にスクエは一瞬だけ反応する。
「俺は……ヒーローなんてなりたく無い──それにリプレスと戦う事になっても勝てる訳が無いだろ?」
──競売中に老紳士に腕を掴まれたが、とんでもない力だった……それにノラにだって腹部を殴られたが反応すら出来なかった……
「た、確かに我々リプレスはスクエ達人間よりも力など強いし人間に出来ない事が出来る……けど……」
ノラは自分で言葉にして、気付かされた様な顔をする。
「そうだな……我々リプレスに立ち向かうのは、いくら人間三原則の効かないスクエでも危険……だな……」
賢いノラではあるが、そこまでは気が回らなかったのか改めて考えると一緒に行動する人間側にメリットが無い事に気がつく。
「なら! リプレスに対抗出来る術があれば協力してくれるか?!」
それでも、尚諦めないノラにスクエは疑問を覚える。
「なぜ、そこまで人間を救いたい?」
「そ、それは──不便だからだ」
「それだけの理由で全リプレスを敵に回すつもりなのか?」
「そうだ」
間を置かず返事するノラにスクエの心のどこかでチクりと痛みを感じる。
「──仮にリプレスに対抗出来る術があったとしても俺はノラに協力する事は出来ない!」
そう言うとスクエはノラから逃げる様にして外に出る為に玄関に向かった。
「ま、待つんだ!」
ノラの言葉を無視してスクエは歩き続け家を出た。
──クソ……
何に対しての怒りなのかスクエの表情は険しい。
「あーぁー、俺って何したいんだろう……」
心で思っている事と態度があべこべである事に気が付きつつも、やはりパルムの事を思い出してしまい結局はヒーローの様に振る舞えない。
「パルムは馬鹿な俺を助けようとして自身の身を呈して──そんな俺が誰かを救うだと? ──ッハン! 無理だね……」
急に怒ったり、落ち込んだりと情緒不安定なスクエは小腹も減った為、出店に出向く。
「腹膨らませて忘れよう……」
いつもの店に向かう為に歩いていると、出店の前が何やら騒がしかった。
そして他の出店の店員達である人間が誰一人としてその場に居なかった。
「な、なんだ?」
周りの店が無人な事に疑問を覚えながら騒がしい方に向かい壁越しに顔だけ覗かせる。
「──!?」
騒がしい理由と人間が居ない理由が直ぐに分かった様だ。
「オラ! オメェ、なんでコレしか稼いでいねぇんだよ?!」
「す、すみませんロメイ様」
スクエがこの二日間ご飯を買っていた店の店員が地面に膝を付けて土下座をしている。
「謝罪なんてイラねぇーんだよ、金を稼げ!」
土下座する店員を蹴り付けている者は人間の主人であるリプレスであろう。
「──ッツ……すみません……」
リプレスの暴行にも耐えて謝り続ける店員。
「……あれが人間三原則の効果か」
スクエはバレない様に顔だけソーっと出して状況を観察する。
「お前、そろそろ死ぬか?」
「それだけはご勘弁下さい」
「あ? なら必死に稼げよ! お前のせいでノーブルメタルが買えないだろ!!」
──た、助けねぇと!?
ヒーローを目指すスクエは心の中で叫ぶ──しかしいつも通り身体は動かない。
──ど、どうすればいい!? ノラを呼ぶか?
人間の味方であるノラであれば恐らくこの場を収めてくれるだろうが、スクエが呼びに行っている間に店員がどうなるか分からない。
「オラ! オラ!」
「イッ……ダイ……」
「イテェーか、オラ!」
そのリプレスは口を広げて笑っていた。
先程までとんでも無く怒っていたと言うのに今は実に楽しそうにして人間を蹴り続けている。
「はぁはぁ──死ぬか?! あはははは」
リプレスに蹴られる度に人間の反応がどんどん薄くなっていく。
そんな様子を見ていたスクエは……
「や、や、め、アァ……ハ…………」
リプレスを止めようと声を出そうとするスクエだが言葉を発する事が出来ず額から冷や汗が出る。
そしてスクエの頭の中ではパルムが死ぬ瞬間が何度もフラッシュバックしている。
──む、無理だ……俺には……
すると、スクエの肩をポンと誰かが叩く。
スクエは驚きながらも叩かれた方に顔を向けて確認すると……
「ノラ……」
「私に任せろ」
綺麗な顔でスクエに微笑むとノラは堂々とリプレスの方に近付く。
「おい、私の前であんまりそういう行為をするのは辞めて貰いたいんだがねぇ……」
先程の温かい笑顔では無く、今のノラは無表情に、そして汚い物を見たく無いのか目を瞑りながら男に言葉を放つ。
「あん?」
ノラに声を掛けられてこちらに背を向けていたリプレスが顔だけこちらに向けた。
男は、荒んだ目をノラに向ける。
スクエもノラが来た事で冷静になったのか相手のリプレスを良く観察する。
男のリプレスは身長も小さく身体は小太りであった。
瞳の色は青く一重でありこの世に常に不満を持っている様に荒んだ目をしており、鼻も潰れているのでは無いかと思える程に低い。
そんな男がノラに向かって話し掛ける。
「誰だお前? なんか文句あるのかよ?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界に転生したもののトカゲでしたが、進化の実を食べて魔王になりました。
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
異世界に転生したのだけれど手違いでトカゲになっていた!しかし、女神に与えられた進化の実を食べて竜人になりました。
エブリスタと小説家になろうにも掲載しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる