人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
上 下
9 / 67
第1章 ヒーロー見参

8話 目覚めた先は御主人様の家だった

しおりを挟む
「──パルム!?」

 スクエは勢い良く起き出す。

「夢か……」

 昔の苦い記憶を見たせいかスクエは汗をビッチョリと掻いていた。

「確か……あのノラとか言う女に殴られて気を失ったんだよな……」

 スクエはベットの様な所で寝かされていた様だ。
 周囲を見回すと無造作に物が色々と置いてあり、率直に言うと、とても汚かった。

「あの女、物を片付けられない人種だな」

 今にも崩れ落ちて来そうに積み上げられている物達。
 だが、不思議とぴったりと嵌っているのかグラグラしたりはして無かった。

「ベット部分以外足の踏み場もねぇーじゃねぇーかよ……」

 スクエはまだ痛む腹部を撫でながら起き上がり部屋を慎重に歩き回る。

「よく分からない物ばかりあるな」

 スクエが住んでいた場所では見た事の無い物ばかりで溢れかえっている。

「こんなの何に使うんだ?」

 そんな風に部屋を見て回っていると部屋の扉が開く。

「おや? ──起きた様だな少年」

 そこには白衣に身を包み真っ赤に燃える目にそれを少し暗くしたワインレッド色のサラサラの長い髪を後ろに結んだノラが現れた。

「──お前!?」

 腹部を殴られた事を思い出しスクエは身構える。

「はは、安心しろ──あんな真似はもうしないから」
「どうだか──」

 警戒を解かずに少しずつ距離を取る様にジリジリと部屋の隅に移動する。

「おいおい、気を付けてくれよ? そこには貴重な物が置いてあるんだから」

 ノラはスクエが警戒している事などお構い無しに──まるで友達に話し掛ける気軽さでスクエに注意をする。

「少年、色々と聞きたい事があるんだ、居間に移って話でもしようではないか」
「話だと……?」
「あぁ、君は他の人間達と違う様だからな色々聞かせてくれ」

 ノラの言葉にスクエは考える。

──俺も、この状態は何が何やら分からねぇ……この女を利用して状況を探るか?

 チラッとノラの目を見るとノラは首を傾げながら微笑む。

「どうした?」
「い、いや……」

 どうやら、女性と付き合った事の無いスクエは長い時間ノラの顔を見れない様だ。

「で、どうだ少年──話を聞かせてくれるか?」
「あぁ──俺も色々聞きたい事があるし、分かった」

 スクエのぶっきらぼうな返答にノラは目を細めて口角を上げて笑う。

「やはり──さぁさぁこの私が人間である少年にお茶を淹れてやろうじゃないか」
「はぁ──何言っているんだ?」

 ノラの言葉に首を傾げながらも部屋を出て居間に向かった二人。

「そこに座っててくれ」

 そう言うとノラは更に他の部屋に歩いて行く。
 そしてスクエはノラに言われた通り椅子に腰を掛けて改めて居間の様子を見る。

「ここの部屋は綺麗にしているんだな」

 先程の部屋とは打って変わって物が少なく、あるのは机に今スクエが座っている椅子くらいで、後は特に物が無い為、そこまで広く無い居間であるが──とても広い空間の様に感じる。

「待たせたな少年」

 コップに注いだお茶を持って来たノラはスクエの前にだけコップを置き自身の前には、とても綺麗な長細い宝石みたいなのを置く。

「さぁ、飲んでくれ」

 ノラに勧められるがままにお茶を飲む。

「──ブッッまず!?」
「あはは、そうだろそうだろ。自分で言うのもアレだが私は発明以外何も取り柄が無いからな」

 スクエの口からボタボタと水滴が流れるのを見て笑っている。

──この女、頭大丈夫か?! いきなり殴って来るわ、不味いと知っててお茶を出してくるわ……

 スクエの視線を受け止めて尚笑っていたノラだが次第に収まって来たのか一度、一息入れた後に机に置いてあった長細い宝石を──まるでタバコを吸うみたいに先っちょに口を付けて息を吸う。

「ふぅ……純度が悪いんじゃ無いか?」

 独り言の様に呟きながら再び吸う姿を見てスクエが質問する。

「それなんだ?」
「ん? それとは?」
「お前が今吸っている宝石みたいな奴だよ」

 スクエの言葉に最初は何を言っているのか分からない様な表情をしていたノラであったが少し考えてスクエの質問に解答する。

「あぁこれか──もしかしてこの存在を少年は知らないのか?」
「知らねぇーから聞いているんだろ?」

 早く教えろと言う様な視線を送るスクエに対してノラはブツブツと呟く。

「ますます、面白い……」
「あ? ──何か言ったか?」
「いや、何も──そういえばコレの正体だったな」

 ノラがスクエの前に置く。

「こいつはノーブルメタルと言うものだ」

──ノーブルメタルって確か、あの時の競売で言ってた……

「コイツはとても高価な物でな私達にとっての趣向品だな」
「趣向品……?」
「あぁ、私達は人間みたいにご飯は必要無いがその分充電が必要でな──普通に充電するだけでも事足りるが、このノーブルメタルの場合は私達に取っては味もするし、吸うとリラックスも出来て、更には充電もされるからな、趣向品でありながら実用的でもあって結構高価なんだよ」

──やべぇ……コイツ本物だわ……本当に頭おかしい奴だ……何言っているか全く分からねぇ……

「いやー、私達にとって充電中はあまりにも無防備でな気分の良い物では無いんだよ──だから意識を失う充電を嫌う者が多いな」

 ノラはスクエが失礼な事を思っているとはつゆ知れずペラペラと話し続けていたがスクエからの反応が無い事に気が付く。

「ん? ──どうした?」
「どうしたもこうしたも、お前が話している内容の半分も理解出来ねぇーよ……」
「半分もだと……? ──少年は一体どんな田舎から捕まって奴隷にされたんだ……?」

 どうやら二人は会話が噛み合わない様でノラも少し不思議そうにしている。

「少年──君はどこの生まれだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...