人間三原則

こーぷ

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第1章　ヒーロー見参

5話　スクエの御主人様登場

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　スクエは目の前で起きた光景に頭が付いて行けないのか、暫くの間──口を開けて女性の事を呆然と見ていた。

──な、なんであの男の言う事なんて聞いたんだ……？

　女性はあまりの痛みに未だに地面顔を向けて蹲って呻き声の様なものをあげている。

「うぅ……うぅ……」

　そして恰幅の良い男に他の買い手達が集まる。

「いやー、最高でしたな今のは──私もそちらの女性を買えば良かったですよ」

　恰幅の良い男より少し若いくらいかの男性が話し掛ける。

「ふふふ──えぇ私も良い買い物が出来た事に満足していますよ。まさかノーブルメタル13個で買えるとは」
「私の買った奴隷など戦闘しか脳が無さそうで私自身はそこまで楽しめ無さそうです」
「ふふ、戦力を強化するのは大事ですよ？　──それにヒューマンバトルの為にお買いになったのでは？」

　男はニヤリと見透かす様な目で言い放つ。

「はは、これはバレていましたか！　えぇ、近々ヒューマンバトルが開催するかも知れ無いと噂を聞きましてな──急いで戦士を見つけに参った所ですよ」

　二人の男性が笑い合っていると、先程まで蹲っていた女性が男にバレない様にユックリと動きながら周りの様子を探っている。

──そ、そうだ。このままじゃあの男に殺されちまう。逃げろ……

　言葉や行動に移せないスクエだが気持ちでは、何時でも弱い物の味方である。

　しかし、世の中はそう甘くは無かった……

「ん？　何をしているんです？」

　男はモゾモゾ動いている女性に気が付き話し掛ける。

　すると、女性は怯える様に即答する。

「な、なんでもありません……」
「もう一本いっときます？」

　その言葉に全力で首を横に振る女性を見て買い手達は、とても楽しそうに笑っていた。

「私は自分の物が勝手に無くなるのが大っ嫌いなんですよ──それを貴方は知らないとは言え実行しようとした──違いますか？」
「ち、違います。私は逃げようなんて思っていません！」

　最初の頃とは比べ物にならない程の大きな声で応える。
　女性の小指はあらぬ方向に曲がったままであるが、痛みを我慢する様に男の方に姿勢を正して向き直る。

「いえ、貴方は分かっていません──やはりお仕置きが必要の様です」
「い、いや……止めてください……なんでもします……もう逆らいませんから……うぅ……」

　女性は最初と比べて考えら無い程従順になっていた。

「ははは──まぁ今更謝っても遅いのですがね」

　そう言うと男は口を開き掛ける。

「人間──もう一本の──」

　すると、男が女性に命令する瞬間に一人の女性が話し掛ける。

「やめろ。見ていて気分の良い物では無い」
「ん？　おやおや──これはこれは変わり者で有名なノラさんじゃないですか」

　男の命令を止めた正体は……

──あれ？　あの人は俺の買い手だよな……？

　スクエを買い取った人物はどうやらノラと言うらしい。

「私の楽しみを邪魔しないで貰いたい」
「それが、お前の楽しみなのか？」
「えぇ。人間を痛ぶるのが大好きなんですよ──普通の者達なら分かると思いますが、欠陥品である貴方には分かりませんかね？」

──欠陥品？

「私の事をどう思おうが、噂しようが別に構わないが私の見える範囲でその様な事をするのは許さん」

　女性はビシッと男に対して言い放つ。

──カッケェ……

　だが男はスクエの反応とはまるっきり逆で忌々しそうに女性を見ていた。

「なら貴方は早くこの場から立ち去りなさい」
「あぁ、言われなくてもお前の醜い顔を見たく無いからな──私の買い取った人間を引き取ったら直ぐに退散しよう」

　男はノラという女性の一言一言にイライラしている様子である。
　すると、ノラがスクエに向かって歩いてくる。

──コイツが俺の買い手であり主人なのか……？

　スクエも先程の女性と同じで身の危険を感じたのか少しずつ後ろに下がってしまうのは無理も無いだろう。

「大丈夫だ、私はアイツらと違う」
「し、信じられるかよ……」

　スクエは少しでも情報を集める為に女性を観察する。

「参ったな……あの男のせいで大きな誤解や偏見を持たれてしまったか？」
「誤解も何も牢屋に入れられている時からお前らの事なんて信じちゃいねぇーよ」
「ほぅ……」

　何故かノラはスクエの反抗的な態度に関心している様子である。

「やはり……いや、でもまだわからないか……」

　慎重に吟味をする様にノラは手に顎を乗せてスクエを見る。

──な、なんだよこの女

　スクエは女の姿を改めて見てみる。

　その女性は、腰まで伸びる長いワインレッド色のロングヘアーに目は燃える様な真っ赤な色をしている。　

　その容姿は一言で言えば美人である。

　だが例え控えめに言ったとしても皆が美人だと応えるだろう。
　しかも、スタイルが良く足はとても長い。

──本当に綺麗だ……いやいや、容姿に騙されるな俺！　コイツもあの男の様な事をいつしてくるか分からねぇんだ

　そしてノラは何故か科学者や医師などが着る様な白衣を着ていた。
　だがそんな事を気にしている場合じゃないスクエは油断せず気を緩めずノラと対峙する。

　ノラの方はスクエが気を張っている事なんて気にしていないのか気が付いて無いのか、未だにスクエを隅々まで観察しようと周りをグルグル回っている。

　そして、何かに気が付いた様に呟く。

「あ！？　──うん、どっちにしろ私の奴隷になったわけだし家に連れてじっくり観察しよう」

　そしてノラはスクエに向かって話し掛ける。

「さぁ、私達の家に帰るぞ？」

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