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第1章 ヒーロー見参
1話 異世界転移
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「えー、次は秋葉原です次は秋葉原です」
電車内のアナウンスが聞こえ、少年がスマホを弄るのを辞めた。
彼の名前はスクエ。勝気な目に八重歯が特徴的で態度も強気だ──だが内心はビビリなのだから格好は付かない。
──今日は予約したフィギュアを取りに行ったらヒーロー物アニメを見るぞ!
スクエはヒーローが好きであり、小さい頃はヒーローになりたい──なれると信じて疑わなかった。
昔から困っている人が居れば率先して助けていたし、仮にその行為が危ない事であっても彼は気にしなかった。
しかし、ある事件がキッカケで彼は人助けをするのを辞めてしまう──いや辞めては無い……だが人から見ている範囲では人助けをする事を辞めてしまった。
スクエ自身、小さい時に色々あり友人や家族などにヒーローになりたいと公言する事を辞めた。
しかし、未だにヒーローに憧れ、ヒーローになりたいという気持ちはある様だ。
──今日、引き取るフィギュアはあの棚に飾るか……いやいや、もっと目立つ所にするか?
スクエは待ちに待ったフィギュアを部屋の何処に飾るか考えていると、一人のお年寄りが杖を付きながら座れる席を探しているのに気がつく。
ヒーローを目指しているスクエは直ぐに気が付き心の中で呟く。
──席を譲らないと
だが、心では分かっていても身体が動かない。
──クソ、またかよ……
スクエは自身の不甲斐なさに嫌気を指す。
そしてスクエが取った行動は声を掛ける訳でも無く、ただ席を立ち上がり隣の車両に移動しただけであった。
──誰も座るなよ……?
年寄りに席を譲る為に立ち上がったスクエであったが、他の人から見たら席を譲った様には映らないだろう。
隣の車両に移ったスクエは直ぐに隠れながらおばあちゃんの様子を伺う。
──よし! 今日はヒーローとして人助けが出来たぜ!
どうやら、無事に年寄りはスクエが先程まで居た席に座れた様だ。
小さく握り拳を作ってガッツポーズをするが、恐らくスクエ以外は誰一人スクエの行動に気が付いた者は居ないだろう。
だが、スクエ自身からしたらこれもヒーローになる為の人助けである。
小さい事だが人助けをした事が嬉しかったスクエは秋葉原に着くまで車内で小さく鼻歌を口ずさんでいた。
──さて、取りに行くぞ!
駅に到着したスクエは真っ直ぐに予約していた店まで行きフィギュアを引き取った。
「おー、これは素晴らしいじゃないか!」
箱越しでは有るが、今ハマっているヒーローのフィギュアを見て感動するスクエ。
「早く帰って観賞会だな」
袋に閉まって早足で駅に舞い戻り電車が来るのをホームで待つ。
だが電車を待っている間に悲鳴の様な声が少し先から響き渡る。
「ちょ、ちょっと何しているのよ!?」
「おい、駅員呼んだ方がいいんじゃね?」
悲鳴が上がった場所の方に視線を向けると、そこでは中年同士の喧嘩が繰り広げられていた。
「テメェ、肩がぶつかっただろうが!」
「ちゃんと、謝っただろ!」
どちらが悪いかは置いといて、中年二人の怒りは、どんどん上がっていくのが分かる。
最初は口論だけだったはずが、次第にエスカレートしていき、お互いの胸ぐらを掴み合うまでになっていた。
──と、止めねぇと
スクエは心の中で呟くがやはり解決する為の行動が出来ない様だ。
しかし何もしないと言う選択肢は無い様でとりあえず、口論している二人に近付く。
スクエ以外にも口論の様子を伺う為か野次馬根性丸出しの輩達が集まっていた。
中にはスマホを取り出して動画や写真を撮っている者達もいる。
──ど、どうすれば止められる?!
どうやって喧嘩を止められるか考えるが思い付かず焦りが生まれている様だ。
周囲に人が集まっている為、駅員達は喧嘩の存在に気付かず──また駅員に伝えに行く者達も居ない様だ。
するとホームのスピーカーから音が鳴る。
「電車が来ますので黄色い線の内側までお下がり下さい」
電車が来るアナウンスが流れるが中年二人は依然胸ぐらを掴み合い押し問答をしている様だ。
そして白熱し過ぎて気が付いて無いのか二人は黄色い線付近まで移動していた。
「お、おい──なんかヤバくね?」
「誰か止めろよな──」
周りの人間達は口では危ない、誰か止めろよ、などと言っているが実際に行動する者は誰一人として居ない。
──俺が止める、俺が止める
スクエは必死に自己暗示を掛ける様に心の中で呟く。
そして、電車が来るのが見えてきた。
「お前、殺すぞ!?」
「やって見ろよ! 返り討ちにしてやるよ!」
中年二人はお互いに怒りがピークに達している様で電車が迫り来る音にすら気が付かない。
──助ける、俺が助けるんだ!
スクエは無意識に自身の腕にある古びた腕輪を触り、一度深呼吸をする。
──パルム、俺に力を……
「喧嘩なんてしてんじゃねぇーー!!」
スクエは叫びながら二人に向かって走りより、ホームの内側に倒れ込む様に体当たりをした。
「な、なんだ!?」
「い、いてぇ!」
スクエの希望通り二人の中年は倒れ込む様にして黄色い線の内側に身体が向かったが──スクエは逆に黄色い線の外側に身体がヨロけ、ホームの外に放り出されてしまう。
そんなスクエに対して電車から危険ブザーが鳴り──同時に急ブレーキの音がホームに響き渡った……
そしてスクエは中年二人の驚いた表情を見て思う。
──良かった……なんとか喧嘩を止められたな……
そこでスクエは目の前が真っ暗になり意識を手放す。
そして再度目を覚ますと知らない場所に居たのだった。
「こ、ここはどこだよ……?」
電車内のアナウンスが聞こえ、少年がスマホを弄るのを辞めた。
彼の名前はスクエ。勝気な目に八重歯が特徴的で態度も強気だ──だが内心はビビリなのだから格好は付かない。
──今日は予約したフィギュアを取りに行ったらヒーロー物アニメを見るぞ!
スクエはヒーローが好きであり、小さい頃はヒーローになりたい──なれると信じて疑わなかった。
昔から困っている人が居れば率先して助けていたし、仮にその行為が危ない事であっても彼は気にしなかった。
しかし、ある事件がキッカケで彼は人助けをするのを辞めてしまう──いや辞めては無い……だが人から見ている範囲では人助けをする事を辞めてしまった。
スクエ自身、小さい時に色々あり友人や家族などにヒーローになりたいと公言する事を辞めた。
しかし、未だにヒーローに憧れ、ヒーローになりたいという気持ちはある様だ。
──今日、引き取るフィギュアはあの棚に飾るか……いやいや、もっと目立つ所にするか?
スクエは待ちに待ったフィギュアを部屋の何処に飾るか考えていると、一人のお年寄りが杖を付きながら座れる席を探しているのに気がつく。
ヒーローを目指しているスクエは直ぐに気が付き心の中で呟く。
──席を譲らないと
だが、心では分かっていても身体が動かない。
──クソ、またかよ……
スクエは自身の不甲斐なさに嫌気を指す。
そしてスクエが取った行動は声を掛ける訳でも無く、ただ席を立ち上がり隣の車両に移動しただけであった。
──誰も座るなよ……?
年寄りに席を譲る為に立ち上がったスクエであったが、他の人から見たら席を譲った様には映らないだろう。
隣の車両に移ったスクエは直ぐに隠れながらおばあちゃんの様子を伺う。
──よし! 今日はヒーローとして人助けが出来たぜ!
どうやら、無事に年寄りはスクエが先程まで居た席に座れた様だ。
小さく握り拳を作ってガッツポーズをするが、恐らくスクエ以外は誰一人スクエの行動に気が付いた者は居ないだろう。
だが、スクエ自身からしたらこれもヒーローになる為の人助けである。
小さい事だが人助けをした事が嬉しかったスクエは秋葉原に着くまで車内で小さく鼻歌を口ずさんでいた。
──さて、取りに行くぞ!
駅に到着したスクエは真っ直ぐに予約していた店まで行きフィギュアを引き取った。
「おー、これは素晴らしいじゃないか!」
箱越しでは有るが、今ハマっているヒーローのフィギュアを見て感動するスクエ。
「早く帰って観賞会だな」
袋に閉まって早足で駅に舞い戻り電車が来るのをホームで待つ。
だが電車を待っている間に悲鳴の様な声が少し先から響き渡る。
「ちょ、ちょっと何しているのよ!?」
「おい、駅員呼んだ方がいいんじゃね?」
悲鳴が上がった場所の方に視線を向けると、そこでは中年同士の喧嘩が繰り広げられていた。
「テメェ、肩がぶつかっただろうが!」
「ちゃんと、謝っただろ!」
どちらが悪いかは置いといて、中年二人の怒りは、どんどん上がっていくのが分かる。
最初は口論だけだったはずが、次第にエスカレートしていき、お互いの胸ぐらを掴み合うまでになっていた。
──と、止めねぇと
スクエは心の中で呟くがやはり解決する為の行動が出来ない様だ。
しかし何もしないと言う選択肢は無い様でとりあえず、口論している二人に近付く。
スクエ以外にも口論の様子を伺う為か野次馬根性丸出しの輩達が集まっていた。
中にはスマホを取り出して動画や写真を撮っている者達もいる。
──ど、どうすれば止められる?!
どうやって喧嘩を止められるか考えるが思い付かず焦りが生まれている様だ。
周囲に人が集まっている為、駅員達は喧嘩の存在に気付かず──また駅員に伝えに行く者達も居ない様だ。
するとホームのスピーカーから音が鳴る。
「電車が来ますので黄色い線の内側までお下がり下さい」
電車が来るアナウンスが流れるが中年二人は依然胸ぐらを掴み合い押し問答をしている様だ。
そして白熱し過ぎて気が付いて無いのか二人は黄色い線付近まで移動していた。
「お、おい──なんかヤバくね?」
「誰か止めろよな──」
周りの人間達は口では危ない、誰か止めろよ、などと言っているが実際に行動する者は誰一人として居ない。
──俺が止める、俺が止める
スクエは必死に自己暗示を掛ける様に心の中で呟く。
そして、電車が来るのが見えてきた。
「お前、殺すぞ!?」
「やって見ろよ! 返り討ちにしてやるよ!」
中年二人はお互いに怒りがピークに達している様で電車が迫り来る音にすら気が付かない。
──助ける、俺が助けるんだ!
スクエは無意識に自身の腕にある古びた腕輪を触り、一度深呼吸をする。
──パルム、俺に力を……
「喧嘩なんてしてんじゃねぇーー!!」
スクエは叫びながら二人に向かって走りより、ホームの内側に倒れ込む様に体当たりをした。
「な、なんだ!?」
「い、いてぇ!」
スクエの希望通り二人の中年は倒れ込む様にして黄色い線の内側に身体が向かったが──スクエは逆に黄色い線の外側に身体がヨロけ、ホームの外に放り出されてしまう。
そんなスクエに対して電車から危険ブザーが鳴り──同時に急ブレーキの音がホームに響き渡った……
そしてスクエは中年二人の驚いた表情を見て思う。
──良かった……なんとか喧嘩を止められたな……
そこでスクエは目の前が真っ暗になり意識を手放す。
そして再度目を覚ますと知らない場所に居たのだった。
「こ、ここはどこだよ……?」
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