都市伝説から逃げ切るには……

こーぷ

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あの、都市伝説が再び……

82話

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 依頼者の男とアケミが何やら話しているのが見えた。
 いや、話しているのは男だけでアケミ自身はただ男の話を聞いているだけの状態である。

(暗くて全然顔見えねぇー)

 オカはアケミの顔が見えないので、どんどん顔を出していく。

(くそー。こっちに背中向いてて見えないな……)

 モドカシイ気持ちを抑えながらオカはジッとアケミがこちらを向くのを待つ。

 すると、依頼者の男とアケミはどこか移動するのか、移動し始めた。

(移動するのか?)

 オカはプルに視線を合わすと、どうやら尾行するらしい。
 アケミと男はどんどんと奥の方に入っていき終いには、外灯などが一切無い場所まで移動をしていた。

(こんな場所に連れ込んで一体……)

 二人が立ち止まると、又もや男が一方的に話し始めた。
 
 だが、次の瞬間男が一瞬、顔を逸らした時にアケミが後頭部を殴り気絶させた。

(……え?)

 男が無事なのかは、暗過ぎて良く見えないのかオカは何度も目を細める。

(だ、大丈夫なのか……?)

 オカがどうするか考えていると、パークが飛び出して行った。

「オラ! テメェ顔見せろや!」

 事前準備で用意していた懐中電灯の光をあてると、そこにはキツめな見た目だが綺麗な女性が居た……

「あははは、あんた久しぶりね」
「お、俺の事知っているのかよ……?」
「ウチの人と力比べしていた子だろ?」

 どうやらアケミはパークの事を知っている様だ。

「な、なんで知っているんだよ?」
「見ていたからさ。あんたが居るって事は他の子達もいるね?」

 アケミの言葉に、プルとヒューズが姿を現す。

「ふふ、あんた達も見覚えあるね……」

 アケミはニヤリと妖艶な笑みを浮かべた。

(どこから見ても普通に綺麗な女の人にしか見えないな……)

 オカとダルマとフィブに関しては、まだ隠れて様子を伺っている様だ。

「そういえば、ウチの人相手に逃げ切った子が居ないね……」

 恐らくオカの事を話しているのだろう。

「ここには居ないわ」
「それは残念ね……。あの子の逃げっぷりは本当に凄かったから一度話してみたかったのよね……」

 残念そうに顔を歪ませるアケミであった。
 そして又してもニヤけるアケミはオカ達が隠れている場所に視線を向けた。

「まぁ、いいわ。それより何か用かしら? こう見えても私忙しいのよ?」
「さっきまで一緒に居た男はどうした?」
「ふふ。あの気持ち悪い男なら、この奥にいるわよ?」
「返して貰うぞ?」
「嫌だと言ったら……?」

 アケミはパークの方を見て言い放つ。

「力尽くで返して貰うだけだな」
「それは怖いわね……」

 そして、プルとヒューズが徐々に近付いて来るのに気付いたアケミは一度ため息を吐く。

「はぁ……今回は諦めるわ……アンタみたいな馬鹿力相手はまだキツそうだし」
「俺達が逃すと思っているんですか?」

 ヒューズがアケミに対して呟く。

「ふふ。あなたは唆られる顔つきをしているわね」
「……」
「あんた達人間から逃げるなんて造作も無いわね」

 そう言うとアケミは奥の暗闇に姿を消した。
 急いでパークとヒューズが奥に向かって走るが、アケミの姿は見付からず気絶した依頼者だけが居た……

「クソッ! 逃げられた。どこ行きやがった?!」

 そこにはパークの叫び声が、辺り一面に鳴り響いた。

「皆さん、無事ですか?」
「えぇ。オカくんも大丈夫かしら?」
「はい。アレがアケミなんですね……」
「そうね。思っていたより全然怖くなかったわね」

 プルの言葉に全員が頷く。

「プルさん、アケミはどうやって逃げたの……?」

 フィブが不思議そうに頭を傾げる。

「分からないわ……」
「マ、マサオさんの時もそうでしたけど、見た目は普通の人間に見えますが、やっぱり違うんですね……」
「そうね……アケミも煙の様に消えたわね」

 パラノーマル面々でアケミを少し探し回ったが結局見つける事が出来なかった様だ。

「さて、男を起こして帰ろうぜ!」
「ですね!」
「あ、あれ? 警察とかに連絡しないでいいんですか!?」

 ダルマが慌てて聴く。

「ダルマ君、恐らく警察は信じてくれないし俺らが逆に疑われてしまうかもしれないから、通報はしない方がいい」
「そ、そうですよね」

 ヒューズの言葉に納得したダルマは勢いよく頷く。

 それからは男を起こして帰る為に駅に向かって歩き出した。

「いやはや、お恥ずかしい。私いつの間にか寝ていましたよ」

 依頼者は自身が殴られた事に気付いていない様だ。

「それにしても、アケミさん綺麗だったな……」

 惚けた顔をして空を見上げながら歩く依頼者はとても幸せそうな表情を浮かべていた。

「また、会えますかね?」

 先頭をスキップする様に歩いていた依頼者は後方を歩くオカ達の方に向き質問する。

(よっぽど、楽しかったんだろうな……)

 男の顔を見れば、それが分かるのかオカまで顔を緩めていた。

「はは、アケミさん最高だっ……ッツ!?」

 男は何か大きい物に当たった感触がした為、確認しようと顔を上げる。

「オマエニハ、ママヲワタサイ」
「え……?」

 その言葉が男の最後の言葉であった……
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