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パクト

45話

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「眠い……」
「俺も……」
「お前ら、俺が運転している時は寝るなよ?!」

 プルに出張を言い伝えられた三人は各自仮眠を取ってから再び、パラノーマルが入っているビルに集合していた。

「中途半端に寝るとかなり眠いな」
「うん……」

 オカとフィブは怠そうにソファーに眠っている。

「ほら、これでも飲んで目を覚ませ」

 ダルマが二人に缶コーヒーを渡す。

「お、気が利くな」
「ダルマは良い社員になれる……」
「お前ら……」

 三人の脇には大きめの旅行鞄が置かれている。

「それにしても初日から出張とは驚いたよなー」
「ビックリ……」
「一体、何の超常現象を調べに行くんだ?」

 三人が頭を悩ませていると、プルが室内に入ってくる。

「三人共揃っているわね。それじゃ早速だけど行きましょうか」

 四人は事務所に鍵を掛けてビルの外に出る。

「おー、この車で行くんですか?」
「そうよ」

 そこには、ハイエースが駐車されていた。

「俺、こんな大きい車運転した事ねぇ……」

 ダルマの呟きに他の三人は敢えて反応しなかった様だ。
 車に乗り込み最初はプルが運転する事になり助手席にダルマが座る。

「なんか、ワクワクしてきましたね」
「私達の冒険が今……始まる……」

 ダルマと違って後ろの席に座る二人は、どうやら泊まりがけの仕事を、なんだかんだ楽しみにしていたらしい。

「気楽な奴ら……」
「ふふ、ダルマ君には運転を任せてしまって悪いわね」
「い、いえ。仕事ですし、気にしないで下さい」

 どうやら、オカ達より年上と言う事もありダルマは気を使う事も出来る様だ。

「それじゃ出発するわね」
「「はーい」」

 こうして、オカ達は目的地に向けて出発する。

 車を走らせてから少し経ったくらいにダルマが改めて質問する。

「プ、プルさん今回の目的は何ですか?」
「そうね……そろそろ教えとこうかしら」
「気になる……」

 三人共、初仕事の内容が気になっている様だ。

「今回は都市伝説の真意を確かめに行くわよ」 
「「「……ん?」」」
「ふふ、いきなり言われても分からないわよね」

 プルは運転しながら説明をしてくれる。

「やる事は簡単よ。マサオさんの時の様に都市伝説の舞台となった場所を調査するだけだから」
「何の都市伝説を?」
「今回はパクトと言う都市伝説について調べるつもりよ」
「あ……」

 オカだけがパクトと言う言葉に反応する。

「あら、オカ君知っているのかしら?」
「はい。この前、記事で読みました」
「ふふ。流石オカ君ね」

 まだ、知らない二人に対してオカとプルがパクトの都市伝説を教えてあげている。

「な、なるほど。不気味だな」
「今回はパクトの記事を書くの……?」
「そうね。嘘か本当かを調べて記事にするわ」

(パクトの都市伝説も不気味だよな……。まず舞台が廃工場って所がもう……)

「舞台となっている工場の場所は分かったんですか?」
「なんとか、二つまで絞れたから、今から行く所で収穫が無かったら、もう一つの方にも向かうわ」

(二つに絞れたとか凄いな)

 実はオカ自身も気になったのか、パクトの記事を読んでから、廃墟された工場を調べたが全国で検索をかけると、そこそこの数がヒットして諦めた様だ。

 それからは都市伝説パクトについて話したり、他にも雑談などをして過ごす。

「ダルマ君、そろそろ運転を交換して貰っても良いかしら?」
「は、はい!」

 パラノーマルの事務所を出てから三時間程運転したプルは、流石に集中力が切れたのかパーキングエリアで止まりダルマと運転を交換する事にした。

「お手洗い行ってくる……」
「俺も」

 (これから後何時間車に居るんだろう?)

 トイレを済ませたオカが車に戻ると、車内に良い匂いが漂っていた。

「良い匂い……」

 フィブも戻って来たのか車内の匂いが気になったのかスンスン鼻を動かす。

「二人共お帰り」

 匂いの正体が二人に声を掛ける。

「ダルマがなんか食っているぞ」
「ズルイ……」
「ズ、ズルくねぇーよ!」

 どうやら売店で買ったフランクフルトを食べている様だ。

「私も欲しい……」
「俺も」
「こ、これはあげないぞ」

 オカとフィブに取られない様に直ぐに届かない位置に置くが、小さい身体のフィブはそれでも必死に手を伸ばしてダルマから奪おうと試みている様だ。

「ダルマ、頂戴……」
「や、やめろ。手を伸ばすな」

(今のうちに……)

 ダルマとフィブが争っている間にオカはフランクフルトに手を伸ばすがギリギリ届かない位置に置かれている為奪えない様だ。

(クソ……流石ダルマだ……食い物関係では隙が無いな)

「ふふ、フィブちゃん、ダルマ君から取らなくても皆んなの分を買って来たわよ」

 車を離れていたプルの手には飲み物とフランクフルトがあった。

「はい、これフィブちゃんのね」
「ありがとう……」
「これはオカ君」
「ありがとうございます」
「そしてこっちはダルマ君ね」
「ダルマは既に食べているから私が、食べてあげる……」

 ダルマの分も、フィブが食べようと手を伸ばすが、その前にダルマの手の方が早かった。

「ダメに決まっているだろ!」
「ケチ……」

 こうして、運転を交代したダルマは軽快に車を走らせて目的地に向かう。



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