都市伝説から逃げ切るには……

こーぷ

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パクト

43話

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「えっと、ここかな?」

 オカは現在、プルが予約した店に向かっている。

「新宿なんて全然来ないから分からないし、なんだか雰囲気怖いな」

 どうやら新宿の雰囲気は肌に合わない様だ。

 今回はオカが提案した事により皆んなで一度集まって食事をするという話になり予定を合わせたらしい。
 
 普段来ない為悪戦苦闘しながらもオカは、なんとか店の前に到着した。

「え、ここか?」

 店の外観からしてオシャレでありオカは入るのに躊躇してしまう。

(俺みたいなのが、こんな場所入っていいのか……?)

 店の前で止まっていると後ろから声を掛けられる。

「お、おいオカそこにいると通れねぇーよ」

 オカは後ろを振り向く。

「ダルマ、良かったー」
「な、なんだよ?」

 店の門構えに圧倒されたオカはダルマに先に入って貰おうと考えたらしい。

「そんなで、ビビってたのかよ。俺達は客なんだから気にするなよ」

 そう言うとダルマはズンズンと進み店に入ってしまう。

「お、おい俺を置いて行かないでくれ」

 慌ててダルマの後を追い、店員に席に案内して貰う。

「もう、誰かいるかな?」
「さ、さぁ。時間的には来ていてもおかしく無いけどな」

 席に到着すると、既に全員が揃っていた。

「おー、オカ、ダルマ! 久しぶりだな」

 パークが大きい声で歓迎してくれる。

「二人とも変わらないね」

 イケメンのヒューズは爽やかな笑顔でオカとダルマに挨拶し、席を開けてくれる。

「それじゃ、皆んな揃ったわね」

 全員が成人している為、ビールを片手に乾杯を行って、宴会がスタートした。

「三人とも久しぶりね」
「プルさん達も久しぶりですね」
「そういえば、オカ君達は会っていたのよね」

 プルの言葉にパークが反応する。

「なに? なら俺も呼んでくれよ!」
「あはは、パークさん達は仕事で忙しいと思って」
「まぁ、確かにここ最近は忙しかったから誘われても行けなかったね」

 ヒューズが爽やかな笑顔で言う。

「そ、そんなにお仕事大変だったんですか?」
「うん、ダルマ君も分かるだろ?」
「……」

 尊敬するヒューズに対して、どうやら嘘は言いたく無いのか、ダルマは黙り込んでしまう。

「私達三人、仕事してない……」

 フィブがボソリと真実を言う。

「ん? どう言う事だい?」
「あ、あはは。俺達無職なですよ」
「そうなの?」
「「「……はい」」」

 オカ、フィブ、ダルマは下を向き頷く。

「そっか。これは……丁度いいですね」
「そうね」
「説得する手間が省けたぜ!」

(ん? なんの事だ?)

 三人が何やら、よく分からない事を話している。

「今回、オカ君に連絡したのには理由があるのよ」
「ん? 久しぶりに話そうって事ですよね?」
「まぁ、そうね。だけど、ただの雑談をする為に誘った訳じゃないの」

 話しが見えて来ないオカは首を傾げながらプルの言葉を待つ。

「最初はオカ君だけに聞くつもりだったけど、フィブちゃんとダルマ君にも聞くわ」

 急に自分達の名前が出て来た事に驚く二人。

「よかったら、私の会社で働いてみないかしら?」
「「「プルさんの会社?」」」

 いきなりのスカウトに仕事をした事が無い三人は、頭がついて来ない様だ。

「えぇ。実は私会社を作ったのよ。それで社員を募集中で今の所はヒューズ君とパーク君しか居ないわね」

 楽しそうに笑いながらプルはオカ達を見回す。

「そこで、もう何人か社員が欲しいのだけど、オカ君達どうかしら?」
「なんの会社なんですか?」
「前に私がフリーで記者的な事をしているのは言ったわよね?」

(確か、不思議な事とかを書くとかなん言ってたな)

「今回も同じく、超常現象的な事を主に記事にしていき、私の会社専用の雑誌を作る事よ」

(おー。プルさん、まだ若いのに凄いな……)

 オカが感心していると、ダルマが勢いよく手を上げた。

「お、俺働きたいです!」
「ほんとかい? ダルマ君と働けるのなら楽しそうだ」

 尊敬するヒューズと一緒に働けるチャンスをダルマが逃す筈も無く、即決した。

 続いてフィブも手をあげる。

「この性格だし、どうせ働くなら知っている人と働きたい……」
「えぇ。嬉しいわ」

(皆んな、結構即決で決めたな。まぁ……俺もだけど)

 最後にオカが手をあげる。

「そんな面白そうな会社に入社しない手は無いですね」
「オカ君ならそう言ってくれると思ったわ」

 それぞれが笑顔で握手をする。

「あ、先に言っとくけど給料は安いけど大丈夫かしら?」

 プルの言葉に高揚していた三人は一気に現実に戻される。

「お、俺は貰えるだけ嬉しいので気にしません」
「私もダルマと同じ……」
「俺もです」

(どうせ、このまま働かなかったら給料貰えないんだし、貰えるだけ有り難いよな)

「それを聞いて安心したわ」
「よっしゃ! 今日は入社祝いで好きなもん食べろ!」
「そうだね。オカ君達は遠慮せず食べるといいよ」

 年長者三人から奢りと聞いてオカ達三人は遠慮せず飲み食いをする。



「も、もう食べられない……」
「俺も……」

 フィブとオカは腹をパンパンにして箸を止めるが、その隣にいるダルマは未だに箸を動かし続けていた。

「ん? オカ達せっかくヒューズさん達が食べろって言ってくれているのに、もう食わないのか?」
「「……」」

 ダルマの食欲に圧倒されている二人はコクリと頷くだけであった。

「おい、オカお前天ぷら残っているぞ、食っていいか?」
「あ、あぁ……」

 オカが手を付けていない天ぷらをダルマは一口で食べる。すると、フィブも自分のものをダルマに食べて貰おうと思ったのかダルマの近くにあるものを置く。

「ダルマ、これもあげる……」
「おう、ありがとう……って、お前これ刺身のツマじゃねぇーか!」
「ダルマなら食べると思って……」
「流石に食わねぇーよ!」

 三人のやり取りを見ていたヒューズが笑いながら話し始める。

「あはは、なんかダルマ君雰囲気変わったね?」
「え、え?」
「おう! それは俺も思った」
「そうね。前に会った時より堂々と話す様になっていいと思うわ」

 年長者達に言われて照れ恥ずかしいのか、ダルマは顔を下げる。

「ダルマが照れているな」
「うん、照れている……」
「お前らうるさいよ!」

 こうして、オカ達の勤め先がいきなり決まり四月から入社する事に決まった様だ。

「プルさん、会社の名前はなんですか?」

 プルはヒューズとパークの顔を見合わせて、一度頷き合いオカ達に向かって言う。

「パラノーマルよ」
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