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マサオさん
30話
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「ゆっくり静かに歩かないとバレる」
オカを先頭にその後をフィブとダルマが静かに付いていく。
(結構遠いな……)
扉の開く音が鳴らない様にそっと動かしつつ、三人は食堂の中に入り込む。
「ダルマ、念の為扉は閉めとこう」
「わ、わかった」
(マサオさんに気付かれる前に到着出来ればいいけど)
三人は身を屈めて壁伝いに、まずは食堂で写真が飾られている下まで移動するらしい。
その時、マサオさんに追い掛けられていたヒューズとプルはオカ達の存在に気付く。そして、二人はオカ達が何かをする気だと思い、そのままマサオさんを惹きつける様に鬼ごっこを再開する。
流石は年長者組と言うべきか、表情にも出さず、なるべく目線などもオカ達に向けずにやり過ごす。
「あはは、ヒューズ、プルよ。そろそろ捕まってはくれないか?」
マサオさんはこの部屋をあまり荒らしたく無いのか物を壊したりする様な事をしない。
そのお陰で二人が未だに捕まらず逃げ回れているのだ。
(俺達が依り代を壊してしまえばヒューズさん達は助かる)
ゆっくりとだが、オカ達は確実に依り代に近づいて行きとうとう依り代のある写真の真下まで到着する。
マサオさんは、オカ達に対して背を向けている為気付いて無いが、ヒューズ達を追い掛ける為にテーブルを半周もすれば、丸見えになってしまうだろう……。
「お、おい、写真の所まで来たは良いけど、どうやってあの写真取るんだよ!」
オカ達の上に飾られている写真は三人が手を伸ばしたり、ジャンプしても確実に届かないくらいには上に飾られている。
「よじ登れるほど壁に凹凸が無い……」
フィブは何か手が無いかと考え、見回したりするが、どうやら難しそうである。
(どうする……机を台になんかしたらマサオさんがすっ飛んで来るし……)
マサオさんの方を向くと先程まで二人に語り掛ける様に話していたが、そろそろ追い掛けるのを再開しようとしている。
(早くどうにかしないと、こちらに気付かれてしまうな)
「お、おい早く何か考えろよ!」
自分の事は棚に置きオカとフィブを急かす様にダルマがどうすれば良いかを催促してくる。
「ダルマも案を考えて……」
「い、言われなくても考えている!」
フィブの言葉に反論する様に呟くが、恐らく何も考えてなかったのか、黙り込み、フィブ同様何か手が無いかと辺りを見回し始める。
「二人とも……」
フィブとダルマが真剣に案を考えていると、オカから声を掛けられて二人の視線がオカに集中する。
「肩車をしよう」
「か、肩車だと?」
「オカ、どう言う事……?」
理屈は分かるが、肩車したくらいでは届かない程度には高い位置に設置されている為、二人はオカが何を考えているか分からないでいた。
「肩車と言うより、小学生の運動会でやった組体操的なのだな」
「なるほど……。私がオカの肩の上に立つの?」
「その通り」
オカとフィブの言葉にダルマが反応する。
「お、おい。それって一番下は俺か……?」
ダルマの呟きに二人は一度顔を合わせてから、ダルマの方を向き、コクリと頷く。
「流石に私達でダルマを乗せる事は出来ない……」
「悪いがダルマは俺とフィブの事を持ち上げて貰いたい」
ダルマ自身、小学生から体型はあまり変わってない為常に下を担当させられて来て、しょうがなくも嫌な気持ちを常に持っていた。
「け、けど。い、今はそんな事いってられないよな」
ダルマの独り言に二人は首を傾げる。
「わ、分かった。ヒ、ヒューズさんの為にも一番下は俺に任せろ!」
そう言ってダルマは壁に手を付いてオカが登りやすい様にとしゃがみ込む。
「土足でいくぞ」
「もう、な、なんでも来い!」
オカはダルマの肩に乗り、同じく壁に手を付き、フィブが乗りやすい様にしゃがみこむ。
「フィブいいぞ」
「ダルマもオカも頑張って……」
フィブは一度ダルマの肩に足を掛けてから、オカの肩に登る。
「お、重い……」
「失礼……」
フィブもオカの肩に登り切り、壁に手を付く。
「登った……」
「ダルマ、頼む!」
「た、頼むって言われても」
ダルマは両足に力を入れて立ち上がろうとするが、二人分の体重を持ち上げるのは至難の技である……。
「ダルマ、頑張れ!」
「ダルマがやらないとマサオさんを倒せない」
「く、くそ……簡単に言いやがって」
両足に更に力を入れると、徐々にだが二人を肩に背負っているのに身体が持ち上がって来た。
「お、その調子だ」
ダルマの足はガクガクと震えているが、なんとか立ち上がる。
「つ、次はお前だ、オカ」
「あぁ。任せろ」
ダルマの肩の上でしゃがんでいたオカが足に力を入れて立ち上がろうとする。
(ま、まずい……不安定な場所で力が入らない……)
オカは立ち上がろうとするが、なかなか綺麗に立ち上がる事が出来ずにグラグラとしている。
「オカ、頑張っている所悪いけど早く……」
「そ、そんな事言っても……」
そして、ダルマと同じく徐々にだが壁を支えにして立ち上がる事が出来たオカだった。
「よし、次はフィブの番だぞ」
「任せて……」
こうしてフィブが立ち上がる事により、おおよそ五メートル程の人間タワーが完成する……。
オカを先頭にその後をフィブとダルマが静かに付いていく。
(結構遠いな……)
扉の開く音が鳴らない様にそっと動かしつつ、三人は食堂の中に入り込む。
「ダルマ、念の為扉は閉めとこう」
「わ、わかった」
(マサオさんに気付かれる前に到着出来ればいいけど)
三人は身を屈めて壁伝いに、まずは食堂で写真が飾られている下まで移動するらしい。
その時、マサオさんに追い掛けられていたヒューズとプルはオカ達の存在に気付く。そして、二人はオカ達が何かをする気だと思い、そのままマサオさんを惹きつける様に鬼ごっこを再開する。
流石は年長者組と言うべきか、表情にも出さず、なるべく目線などもオカ達に向けずにやり過ごす。
「あはは、ヒューズ、プルよ。そろそろ捕まってはくれないか?」
マサオさんはこの部屋をあまり荒らしたく無いのか物を壊したりする様な事をしない。
そのお陰で二人が未だに捕まらず逃げ回れているのだ。
(俺達が依り代を壊してしまえばヒューズさん達は助かる)
ゆっくりとだが、オカ達は確実に依り代に近づいて行きとうとう依り代のある写真の真下まで到着する。
マサオさんは、オカ達に対して背を向けている為気付いて無いが、ヒューズ達を追い掛ける為にテーブルを半周もすれば、丸見えになってしまうだろう……。
「お、おい、写真の所まで来たは良いけど、どうやってあの写真取るんだよ!」
オカ達の上に飾られている写真は三人が手を伸ばしたり、ジャンプしても確実に届かないくらいには上に飾られている。
「よじ登れるほど壁に凹凸が無い……」
フィブは何か手が無いかと考え、見回したりするが、どうやら難しそうである。
(どうする……机を台になんかしたらマサオさんがすっ飛んで来るし……)
マサオさんの方を向くと先程まで二人に語り掛ける様に話していたが、そろそろ追い掛けるのを再開しようとしている。
(早くどうにかしないと、こちらに気付かれてしまうな)
「お、おい早く何か考えろよ!」
自分の事は棚に置きオカとフィブを急かす様にダルマがどうすれば良いかを催促してくる。
「ダルマも案を考えて……」
「い、言われなくても考えている!」
フィブの言葉に反論する様に呟くが、恐らく何も考えてなかったのか、黙り込み、フィブ同様何か手が無いかと辺りを見回し始める。
「二人とも……」
フィブとダルマが真剣に案を考えていると、オカから声を掛けられて二人の視線がオカに集中する。
「肩車をしよう」
「か、肩車だと?」
「オカ、どう言う事……?」
理屈は分かるが、肩車したくらいでは届かない程度には高い位置に設置されている為、二人はオカが何を考えているか分からないでいた。
「肩車と言うより、小学生の運動会でやった組体操的なのだな」
「なるほど……。私がオカの肩の上に立つの?」
「その通り」
オカとフィブの言葉にダルマが反応する。
「お、おい。それって一番下は俺か……?」
ダルマの呟きに二人は一度顔を合わせてから、ダルマの方を向き、コクリと頷く。
「流石に私達でダルマを乗せる事は出来ない……」
「悪いがダルマは俺とフィブの事を持ち上げて貰いたい」
ダルマ自身、小学生から体型はあまり変わってない為常に下を担当させられて来て、しょうがなくも嫌な気持ちを常に持っていた。
「け、けど。い、今はそんな事いってられないよな」
ダルマの独り言に二人は首を傾げる。
「わ、分かった。ヒ、ヒューズさんの為にも一番下は俺に任せろ!」
そう言ってダルマは壁に手を付いてオカが登りやすい様にとしゃがみ込む。
「土足でいくぞ」
「もう、な、なんでも来い!」
オカはダルマの肩に乗り、同じく壁に手を付き、フィブが乗りやすい様にしゃがみこむ。
「フィブいいぞ」
「ダルマもオカも頑張って……」
フィブは一度ダルマの肩に足を掛けてから、オカの肩に登る。
「お、重い……」
「失礼……」
フィブもオカの肩に登り切り、壁に手を付く。
「登った……」
「ダルマ、頼む!」
「た、頼むって言われても」
ダルマは両足に力を入れて立ち上がろうとするが、二人分の体重を持ち上げるのは至難の技である……。
「ダルマ、頑張れ!」
「ダルマがやらないとマサオさんを倒せない」
「く、くそ……簡単に言いやがって」
両足に更に力を入れると、徐々にだが二人を肩に背負っているのに身体が持ち上がって来た。
「お、その調子だ」
ダルマの足はガクガクと震えているが、なんとか立ち上がる。
「つ、次はお前だ、オカ」
「あぁ。任せろ」
ダルマの肩の上でしゃがんでいたオカが足に力を入れて立ち上がろうとする。
(ま、まずい……不安定な場所で力が入らない……)
オカは立ち上がろうとするが、なかなか綺麗に立ち上がる事が出来ずにグラグラとしている。
「オカ、頑張っている所悪いけど早く……」
「そ、そんな事言っても……」
そして、ダルマと同じく徐々にだが壁を支えにして立ち上がる事が出来たオカだった。
「よし、次はフィブの番だぞ」
「任せて……」
こうしてフィブが立ち上がる事により、おおよそ五メートル程の人間タワーが完成する……。
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