都市伝説から逃げ切るには……

こーぷ

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マサオさん

29話

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「よし、次の部屋を探そう」
「オ、オッケ」

 癖なのか、ダルマは人と話す事があまり無い為、緊張すると言葉が詰まってしまうらしい。

 オカ達は扉をゆっくりと開き、マサオさんが居ないことを確認し廊下に出る。

「あれ?」

 オカが廊下に出るとある事に気付く……。

「ど、どうしたんだよ?」
「いや、なんかこの廊下こんなに横幅広かったか?」
「確かに、オカの言う通り余裕がある……」

 フィブはダルマと廊下の横幅を交互に見て呟く。

「お、お前失礼だな! 今俺の事身体を見て目測したな」
「……」

 図星なのか、きまりの悪い表情を浮かべてダルマから目を逸らすフィブ。

「二人共、静かにしないと」

 オカが小声で注意をして、三人は廊下を歩き始める。
 やはり長い廊下を歩き続ける事になった三人だが、次は先程より直ぐに扉が見つかった。

「お、おい。オカあれ」
「ん?」
「扉……」

 再び扉を見つけた三人は慎重に中に入る。

「ここは……?」

 部屋には可愛らしいクマのぬいぐるみや、机には勉強道具などが置いてあった。

「ハルカの部屋……」
「あぁ。そうだな」

 オカは机にある一冊のノートをパラパラと捲る。

(日記かな……?)

 その日記にはその日あった出来事が書かれていた。



 今日はお母さんに褒めて貰おうと思いテストを頑張りました。クラスで一番良い点を取ったので見せたら、お父さんは凄い褒めてくれましたが、お母さんには頭を叩かれました……。

 一体何が悪かったのかな?

(この時は、まだアケミからの暴力が酷くなかった時か……)

 最近お母さんが私とお父さんを良く叩く様になりました。お父さんは、兄の世話で忙しく疲れているだけで、直ぐに優しいお母さんに戻ると言ってくれました。
 ですが、そうはなりませんでした。日にちが経つに連れてお母さんの暴力は酷くなってきました。

 一体何が悪かったのかな?

(本当にハルカは報われないよな……)

 勉強をするのを辞めようと思います。お母さんは、私が勉強して良い点を取ったり、目立ったりするのを嫌うので、これからは、あまり家から出ずに過ごそうと思います。
 お父さんに買ってもらったゲームがあるので私は大丈夫……。

 何が悪かったのかな……

(ここから先は書かれて無いな……)

 最後のページでは字がグニャグニャで、所々シミみたいなものがある。恐らく書いた際に涙が溢れ紙に染み込んでしまったのであろう。

 オカが日記を読んでいる間に他の二人は部屋内を探し回っている。

「何かあった……?」
「な、何もねぇ」
「ここがハルカの部屋って事はマサオさんの依り代は無いんじゃないか?」
「た、確かに。オカの言う通りだな」

 オカだけはしっかりと、ハルカの依り代を見つけて居た。それは机の引き出しにあった一つのゲーム機である。
 恐らくマサオさんに買ってもらったゲームでずっとやっていたのであろう。古くはあるが傷一つ付いていない。そしてアケミの依り代同様ゲーム機は淡い光を発行していた。

 どうやらオカはハルカに感情移入してしまい、あまり部屋を荒らさない様にしようと思っているらしい。

「どうやらこの部屋には無さそうだな」
「そうかもしれない……」

 最後に一通り部屋を探したが、何も見つから無かった為三人は早々に部屋を出る事にした。

「もう、この廊下を歩きたくねぇな。クソ、ヒューズさんを早く助けないと……」

 ダルマがブツブツと呟きながら廊下を歩いているが、辺りが静かな為、オカとフィブには丸聞こえの様だ。

(ダルマの奴、なんでそんなにヒューズさんの事を?)

「ダルマ、ブツブツ五月蝿い」
「う、うるさいだと?」

 フィブの直球的な物言いに戸惑いながらも静かになるダルマだった。

 そしてまた扉を見つけた三人は、次こそマサオさんの部屋である事を願い扉を静かに開け始める……。

「お、おい。ヒューズさん達がいるぞ!」

 ダルマは声を抑えながらも慌てた感じで言う。

「マサオさんに追い掛けられているのか」
「ど、どうする?!」
「今は待つべき……。私達が出て行っても殺されるだけ……」

 ヒューズとプルは大きな食堂でテーブル越しに追い掛けられていた。

(ん? あれって!?)

 オカは食堂を見回すとある物に目がいく。

「おい、フィブ、ダルマ! あれを見てくれ!」

 オカの指す方を見ると、一つの大きな写真が飾られていており、その写真が淡い光を発行していた……。

「依り代……」

 フィブの目つきが鋭くなる。

「あ、あれってマサオさんの……?」
「恐らくそうだと思う」

 その写真は食堂のど真ん中にあり、高い位置に飾られていた。

「あれを壊せば……」
「ま、マサオさんを倒せるのか?」

 三人はやっとマサオさんの依り代を見つけられた事に微かな希望が生まれ始める。

「二人には悪いけど、追い掛けられている間に依り代を壊す……」

 フィブは目線が依り代から離れない様だ。

(確かに、二人にはそのままマサオさんを惹きつけて貰ってた方が効率は良さそうだな)

「な、なら早く壊してヒューズさんを助けよう」

 ダルマはやる気を出しフィブ同様依り代から目線を離さない。

「よし、慎重に静かにいくぞ」

 オカの掛け声で三人はゆっくりと扉を開き依り代に向かって身を屈めて歩き出す……。


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