22 / 101
マサオさん
22話
しおりを挟む
「ま、待ってくれ……俺を置いて行かないでくれ……」
ダルマが一生懸命走るが、前を走るヒューズと姫に全く追いつけない所か距離が離されている様だ。
「ダルマ君、もっと早く走るんだ」
「はぁはぁ……む、無理だ、これで全力だ……」
本来なら、歩く事すら嫌うダルマであったが、命の危機にあるこの状況ではそんな事言っていられない。
「ヒューズさん、あんな奴置いて私達だけで行くべきです」
姫はゴミを見る目で後ろを走っているダルマを睨みつける。
恐らく、ダルマを切り捨てれば逃げ切れると踏んでいるのだろう。
「ヒューズさん、俺を置いて行かないでくれ……こ、怖い……」
息も絶え絶えで、今にも止まりそうなダルマだが、必死にヒューズ達に置いつこうと、腕を振って走る。
「大丈夫だ、ダルマ君、君を置いてなんて行かないさ」
「なんでですか、待っていたら殺されますよ? 死ぬ気ですか?!」
姫の金切り声が辺りに響く。するとヒューズは一度止まりダルマが追いつくのを待つ。
「はぁはぁ……」
「少し休憩しようか」
膝に手を置き呼吸を整えているダルマに向かって優しく言うヒューズを見て、ますます気に入らないのか姫は問い詰める。
「こんなゴミなんて待っていたら追い付かれます!」
「ダルマ君を置いては行けないよ」
ヒューズは優しく語りかける様に姫に話す。
「でも、実際にマサオさんに追い付かれたらどうするんですか?!」
ここにいる三人は最後までキングが殺される所を見ていた者達だ。
あの残酷な光景を思い出すと足が震える程怖いだろう。だがヒューズはダルマを置いて行かないようだ。
「確かに、追い付かれるかもしれない……。けどダルマ君を置いては行けないよ、人として」
「そんなゴミ、気にする必要無いですって! 私に気に入られたいのか話し掛けるタイミングをずっと待っていたり、私の事を舐める目線で凝視していた最低野郎なんですから!」
姫の言葉を聞きヒューズは一度目を瞑り、それから姫の事を真っ直ぐに見据え伝えた……。
「姫ちゃん、君の言葉はさっきから感に触るから黙っててくれないか?」
「え……?」
普段と変わらない笑顔と声色でヒューズは姫に自分の思っている事を伝える。恐らくヒューズ自身も最初は我慢していたのだろうが、ダルマに対しての姫の態度が余りにも酷い為絶えられなくなったのだろう。
ヒューズの言葉に最初は理解が追い付かなかった姫であったが、少し考え自身が何を言われたのか理解したらしい。
「あはは、ヒュ、ヒューズさん? 私の聞き間違えですよね……?」
乾いた笑いを発しながら姫はヒューズに聞き返す。
「もう一度言うけど、君のダルマ君に対する言動は先程から感に触るから黙れと言ったんだよ?」
今度こそしっかりと聴き取れた言葉を姫は受け止められないのか黙り込んでしまう。
「姫ちゃん、君は何か勘違いしてないかい? 僕は君が好きで介抱しているわけじゃ無くて、単純に人間が具合悪そうだから介抱しただけさ」
「そ、そんな……」
ヒューズは言いたい事を伝え終わったのか、ダルマの背中をさすりながら、心配している。
「ダルマ君、大丈夫かい?」
「は、はい……うぅ……うぅ……」
そしてダルマが急に泣き出す……
「ど、どうしたんだい?」
焦るヒューズを前にダルマが呟く。
「こ、こんなに他人から優しくされた事が初めてで……うぅ……ヒューズさん……ありがとう……」
泣いているせいか声にならない言葉でダルマはヒューズにお礼を言う。
「あはは、何を言っているんだい。今は仲間じゃないか」
「は、はい……」
「もう少し走れるかい?」
ヒューズの言葉に泣きながら、ダルマは頷く。
「わ、私より、そんな使えないゴミを選ぶって言うの……?」
姫の言葉にまたもやダルマはショックを受けたのか肩を震わせた。そして背中をさすっていたヒューズにはそれが手に取る様に分かり、顔を歪ませる。
「はぁ……。ハッキリ言おうか? 自分で言うのもアレだけど俺は結構女性から好意を持たれる事が多いけど、君はその中でダントツで俺の嫌いな人間だね」
その言葉がトドメであり引き金だったのだろう……。
「クソクソクソがぁーー! ちょっとカッコイイからって調子乗ってんじゃねぇーよ!!」
姫の堪忍袋が切れたらしい。
「こっちだってオメェーみたいな見る目ねぇー奴なんてお断りなんだよぉ!」
姫は周囲にある木などを所構わず蹴り回していた。
「そんな、ゴミなんか相手するより私の相手する方がよっぽどいいだろぉーが!」
ヒューズは姫の事を完全に無視をして今後どうするか考えている様だ。
(このままダルマ君と姫ちゃんの三人でマサオさんを倒すか? いや、無理だな……)
キングがマサオさんの頭を全力で殴った光景を思い出したのかヒューズはマサオさんを三人掛りで襲っても倒せないと判断した。
そして、奥の方で草木がガサガサ音を立てた。
三人は何かが動く気配を感じて咄嗟に気配の方を確認すると、そこにはニヤニヤと笑っているマサオさんが現れた……
「あははは、お前らはここに居たのか。見つけたぞ」
ダルマが一生懸命走るが、前を走るヒューズと姫に全く追いつけない所か距離が離されている様だ。
「ダルマ君、もっと早く走るんだ」
「はぁはぁ……む、無理だ、これで全力だ……」
本来なら、歩く事すら嫌うダルマであったが、命の危機にあるこの状況ではそんな事言っていられない。
「ヒューズさん、あんな奴置いて私達だけで行くべきです」
姫はゴミを見る目で後ろを走っているダルマを睨みつける。
恐らく、ダルマを切り捨てれば逃げ切れると踏んでいるのだろう。
「ヒューズさん、俺を置いて行かないでくれ……こ、怖い……」
息も絶え絶えで、今にも止まりそうなダルマだが、必死にヒューズ達に置いつこうと、腕を振って走る。
「大丈夫だ、ダルマ君、君を置いてなんて行かないさ」
「なんでですか、待っていたら殺されますよ? 死ぬ気ですか?!」
姫の金切り声が辺りに響く。するとヒューズは一度止まりダルマが追いつくのを待つ。
「はぁはぁ……」
「少し休憩しようか」
膝に手を置き呼吸を整えているダルマに向かって優しく言うヒューズを見て、ますます気に入らないのか姫は問い詰める。
「こんなゴミなんて待っていたら追い付かれます!」
「ダルマ君を置いては行けないよ」
ヒューズは優しく語りかける様に姫に話す。
「でも、実際にマサオさんに追い付かれたらどうするんですか?!」
ここにいる三人は最後までキングが殺される所を見ていた者達だ。
あの残酷な光景を思い出すと足が震える程怖いだろう。だがヒューズはダルマを置いて行かないようだ。
「確かに、追い付かれるかもしれない……。けどダルマ君を置いては行けないよ、人として」
「そんなゴミ、気にする必要無いですって! 私に気に入られたいのか話し掛けるタイミングをずっと待っていたり、私の事を舐める目線で凝視していた最低野郎なんですから!」
姫の言葉を聞きヒューズは一度目を瞑り、それから姫の事を真っ直ぐに見据え伝えた……。
「姫ちゃん、君の言葉はさっきから感に触るから黙っててくれないか?」
「え……?」
普段と変わらない笑顔と声色でヒューズは姫に自分の思っている事を伝える。恐らくヒューズ自身も最初は我慢していたのだろうが、ダルマに対しての姫の態度が余りにも酷い為絶えられなくなったのだろう。
ヒューズの言葉に最初は理解が追い付かなかった姫であったが、少し考え自身が何を言われたのか理解したらしい。
「あはは、ヒュ、ヒューズさん? 私の聞き間違えですよね……?」
乾いた笑いを発しながら姫はヒューズに聞き返す。
「もう一度言うけど、君のダルマ君に対する言動は先程から感に触るから黙れと言ったんだよ?」
今度こそしっかりと聴き取れた言葉を姫は受け止められないのか黙り込んでしまう。
「姫ちゃん、君は何か勘違いしてないかい? 僕は君が好きで介抱しているわけじゃ無くて、単純に人間が具合悪そうだから介抱しただけさ」
「そ、そんな……」
ヒューズは言いたい事を伝え終わったのか、ダルマの背中をさすりながら、心配している。
「ダルマ君、大丈夫かい?」
「は、はい……うぅ……うぅ……」
そしてダルマが急に泣き出す……
「ど、どうしたんだい?」
焦るヒューズを前にダルマが呟く。
「こ、こんなに他人から優しくされた事が初めてで……うぅ……ヒューズさん……ありがとう……」
泣いているせいか声にならない言葉でダルマはヒューズにお礼を言う。
「あはは、何を言っているんだい。今は仲間じゃないか」
「は、はい……」
「もう少し走れるかい?」
ヒューズの言葉に泣きながら、ダルマは頷く。
「わ、私より、そんな使えないゴミを選ぶって言うの……?」
姫の言葉にまたもやダルマはショックを受けたのか肩を震わせた。そして背中をさすっていたヒューズにはそれが手に取る様に分かり、顔を歪ませる。
「はぁ……。ハッキリ言おうか? 自分で言うのもアレだけど俺は結構女性から好意を持たれる事が多いけど、君はその中でダントツで俺の嫌いな人間だね」
その言葉がトドメであり引き金だったのだろう……。
「クソクソクソがぁーー! ちょっとカッコイイからって調子乗ってんじゃねぇーよ!!」
姫の堪忍袋が切れたらしい。
「こっちだってオメェーみたいな見る目ねぇー奴なんてお断りなんだよぉ!」
姫は周囲にある木などを所構わず蹴り回していた。
「そんな、ゴミなんか相手するより私の相手する方がよっぽどいいだろぉーが!」
ヒューズは姫の事を完全に無視をして今後どうするか考えている様だ。
(このままダルマ君と姫ちゃんの三人でマサオさんを倒すか? いや、無理だな……)
キングがマサオさんの頭を全力で殴った光景を思い出したのかヒューズはマサオさんを三人掛りで襲っても倒せないと判断した。
そして、奥の方で草木がガサガサ音を立てた。
三人は何かが動く気配を感じて咄嗟に気配の方を確認すると、そこにはニヤニヤと笑っているマサオさんが現れた……
「あははは、お前らはここに居たのか。見つけたぞ」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
教師(今日、死)
ワカメガメ
ホラー
中学2年生の時、6月6日にクラスの担任が死んだ。
そしてしばらくして不思議な「ユメ」の体験をした。
その「ユメ」はある工場みたいなところ。そしてクラス全員がそこにいた。その「ユメ」に招待した人物は...
密かに隠れたその恨みが自分に死を植え付けられるなんてこの時は夢にも思わなかった。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
女子切腹同好会 ~4完結編~
しんいち
ホラー
ひょんなことから内臓フェチに目覚め、『女子切腹同好会』という怪しい会に入会してしまった女子高生の新瀬有香。なんと、その同好会の次期会長となってしまった。更には同好会と関係する宗教団体『樹神奉寧団』の跡継ぎ騒動に巻き込まれ、何を間違ったか教団トップとなってしまった。教団の神『鬼神』から有香に望まれた彼女の使命。それは、鬼神の子を産み育て、旧人類にとって替わらせること。有香は無事に鬼神の子を妊娠したのだが・・・。
というのが前作までの、大まかなあらすじ。その後の話であり、最終完結編です。
元々前作で終了の予定でしたが、続きを望むという奇特なご要望が複数あり、ついつい書いてしまった蛇足編であります。前作にも増してグロイと思いますので、グロシーンが苦手な方は、絶対読まないでください。R18Gの、ドロドログログロ、スプラッターです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる