上 下
18 / 101
マサオさん

18話

しおりを挟む
 山を下山しようとしたオカ達だが不思議と同じ所をぐるぐると周り下山出来なかった為、結局村まで戻ってきてしまったらしい。

「もう、いやだ……」

 緊迫状態の中、一番精神的ダメージを負っていた姫だったが、下山出来ない事実を知りとうとう心がダメになってしまった。

「姫ちゃん、大丈夫。きっと助けが来るから」

 ヒューズは甲斐甲斐しく姫をサポートしてあげているが、姫は虚ろな目をして反応が鈍い。

(姫さん、大丈夫かな……?)

「皆さん、どういう訳か分かりませんが、下山が出来ないので本日もこの村に泊まります」

 正男の呼び掛けに、皆の表情が歪む。
 
 それもそうだろう。ここの村には既に死体が一つあり、そんな所で寝泊まりなんてしたくないのは当たり前の事である。

 だが、それは表向きの理由であり、本当の理由は……。

(皆んな気付いていると思うけどクイーンさんを殺した人がこの中に居るんだよな……)

 オカは言葉にはして無いが、クイーンの死体を見て、ハサミが口に突き立てられているのを確認している。
 そのハサミをクイーンに突き立てた者が居るはずだが、こんな山の中にオカ達以外居るわけも無く、ここに居る誰かが犯人だとオカは思っている様だ。

 正男の指示により再びテントを張り始める一同だが、初日と違って建てるテントは一つになった。

「バラバラで過ごすのは危険の為一つのテントで皆んなで夜を明かしましょう」
「正男さんの意見に賛成です。どこに誰が潜んでいるか分かりませんしね」

 ヒューズの言葉に一同は頷き、自分達の役割を実行する為黙々とテントを張る。

 テントが張り終わった頃には日も沈み、辺りはすっかり暗く唯一の光源は、頼りない焚き火の光だけである。

「ふむ。何泊するか分かりませんでしたし一応食料を多めに持ってきて良かった」
「正男さん、後何日分あるんですか?」
「うーん、切り詰めていけば後三日程は保ちますね」

 正男とヒューズがどんどん打開策や今後の事を決めていくので、オカ達は不安ながらも頼もしさを彼らに抱いている様だ。

「オカ、私達帰れるかな?」
「だ、大丈夫だよ」

 オカとカリンは皆んなから少し離れた位置で小声で話している。

「この殺され方ってマサオさんの……」
「うん、マサオさんの真似事をして殺したんだと思う……」
「それと、犯人ってさ」
「大きな声では言えないけど皆んなの中にいると……思う……」
「や、やっぱり?」

 カリンは強張った表情を浮かべながら焚き火を囲んでいる皆んなに視線を向ける。

「だ、誰だか分かるの?」
「いや、そこまでは分からないけど。恐らくマサオさんやヒューズさんも気付いているからこそ、テントを一つにしたんだと思う」
「どう言う事?」
「皆んながいる前では流石に出来ないでしょ?」

 何が出来ないのかは、敢えて伏せてカリンに伝えたオカだが、言葉の流れ的にカリンはしっかりと理解した。

「私達これからどうすればいいの?」
「ひとまずお互いあまり離れないで行動しよ」

(一人になったら、何されるか分からない……)

「それから、あまり他の人を刺激しない様に」
「そ、そうだよね。誰が犯人か分からないしね」
「後は、直ぐに逃げられる様に常に気を配る」

 オカとカリンは話に夢中になっていたのか後ろから近づいて来る人間に気付いていなかった……。

「何の悪巧み?」
「「!?」」

 二人は直ぐに後ろを向くと、そこにはスーツ姿のプルさんが居た。

「な、なんだプルさんか……」
「驚かさないで下さいよー」
「なんだとは失礼しちゃうわね」

 プルは二人の側に座り込む。

「何の話をしていたの?」

 プルの質問に、オカとカリンは一度お互いの顔を見合わせて、頷きあう。

(プルさんなら話しても大丈夫か)

「実は……」

 オカはプルに対して先程までカリンと話していた事を伝える。

「なるほど……。良ければ私も二人の側に居ていいかしら……?」

 やはりプルもこの状況は不安なのか、いつもの隙のない雰囲気では無く、頼りない感じであった。

「えぇ、もちろんです」
「私達だけじゃ不安だったのでプルさんが居た方が助かりますよー」
「ふふ、なら宜しくね」

 仲間に入れてもらえた事に安心したのか、プルは笑った。

「とりあえずは、様子見かしら?」
「ですね。ただ今日の夜はテント一つで過ごすとの事でしたので、三人でローテションで見張りしませんか?」
「オカ、どう言うこと?」

(他の人だと、いつ寝首をかかれるか分からないしな)

 どうやら、オカの考え方としては、三人で見張りをローテンションして、一人が見張りをしている間に二人が睡眠を取るという考えらしい。

「そうね……。三人共寝たら誰か分からない犯人に何されるか……」
「はい。二人だとキツイと思ってたんですがプルさんのお陰で何とか出来そうです」
「何か怪しい動きを見つけたら二人を叩き起こすわ」

 冗談めかしに言うプルに対してオカとカリンは苦笑いしながら、宜しくお願いしますと頭を下げるのであった。

 すると、正男とヒューズの話し合いが終わる。どうやら明日の朝にもう一度下山する事にしたらしい。

(明日は何事も無く下山したいな)

 オカの考えも虚しくまた次の日に犠牲者が発見された……。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子切腹同好会 ~4完結編~

しんいち
ホラー
ひょんなことから内臓フェチに目覚め、『女子切腹同好会』という怪しい会に入会してしまった女子高生の新瀬有香。なんと、その同好会の次期会長となってしまった。更には同好会と関係する宗教団体『樹神奉寧団』の跡継ぎ騒動に巻き込まれ、何を間違ったか教団トップとなってしまった。教団の神『鬼神』から有香に望まれた彼女の使命。それは、鬼神の子を産み育て、旧人類にとって替わらせること。有香は無事に鬼神の子を妊娠したのだが・・・。 というのが前作までの、大まかなあらすじ。その後の話であり、最終完結編です。 元々前作で終了の予定でしたが、続きを望むという奇特なご要望が複数あり、ついつい書いてしまった蛇足編であります。前作にも増してグロイと思いますので、グロシーンが苦手な方は、絶対読まないでください。R18Gの、ドロドログログロ、スプラッターです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

FLY ME TO THE MOON

如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界

レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。 毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、 お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。 そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。 お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。 でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。 でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。

処理中です...