都市伝説から逃げ切るには……

こーぷ

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マサオさん

15話

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 二日目の朝が来た。昨夜と同じくオカは正男とパークと一緒のテントで寝た。
 オカ自身は昨日の出来事もあり逃げ出したかったが、他のテントに行くのも変に思われるので仕方なく寝袋に潜ったのである。

「う……ん、朝か」

 オカは寝袋から起き出し顔を出す。だが昨日と同じく二人の姿はテント内に居なかった。
 そしてオカはテントから出て外の様子を伺った。

「みんな起き始めているな」

 オカは皆の場所に向かうが、少しざわついている様だ。

「カリン、何かあったの?」
「あ、オカ……」

 カリンの表情は優れない。それはカリンだけでは無く隣に居るプルさんも含め全員が神妙な面持ちをしている。

「これで全員ですか?」

 正男が皆に呼び掛ける。

「まだ、寝ている人は居ませんか?」
「正男さん、恐らく全員かと……」

 ヒューズは全員を代表する様に言うが、やはり表情が固い感じがする。

「では、やはり……」

 オカ以外は皆状況が分かっている様だ。

「カ、カリン一体どうしたんだよ……?」
「それが……パークさんが見当たらないの……」

 カリンからパークが消えた事を聞いたオカは真夏だと言うのに全身寒気を感じた……。

「え……? だ、だって昨日まで一緒のテントで寝てたんだぜ……?」

 そしてオカの頭には昨日正男とのやり取りが蘇る。

 それはある言葉である。

 「これは何か始まったかもしれませんね」

 その言葉がオカの頭の中をぐるぐる回る。

「正男さんは何か知っているのか……?」

 そう呟くオカに近くに居たカリンとプルが反応する。

「何のことかしら?」
「あ、後でお話しします」

 パークが居なくなった為昨日引き続き探し回る事になった。
 だが、ここに居る全員が思っているだろう。

 パークは見つからないと……。

「では、皆さん今は何が起こっているのか分からない以上警戒するべきです。なので必ず二人以上で行動して下さい!」

 正男の言葉にそれぞれが近くの者と組んで行動する。

「ヒューズさーん、私怖いので一緒に行動してくださーい」
「あ、あぁ。女の子には不気味な出来事だよね」
「そうなんですよー」
「姫様は俺が守ります」

 ヒューズ、姫、キングの三人が組み、辺りを探し始める。

「では、ダルマ君、フィブ君、私達も行きましょうか」

 続いて正男、ダルマ、フィブが組んでパークを探し始める。

「ッチ、ジジィと地味女とかよ……」
「……」

 ダルマは相変わらず姫狙いらしいが、直接文句を言える度胸も無く大人しく正男の後をついて行く。

 そしてオカはカリンとプルと共にパークを探し回る。

「パークさんどうしたんだろ……」
「やっぱり何か変よね?」

 他の者達と離れた事を確認してオカは昨日の出来事を二人に話した。

「なにそれ、怖すぎぃ……」

 カリンは正男がいきなり笑い出した事に相当不気味がっているようだ。

「私の時もそうだったけど正男さん少し不気味よね……」
「昨日カリンさんが言っていた意味が分かりましたよ……」

 それからオカ達三人は森を見て回るが、やはりパークの姿は無く一度皆んなの所に戻る事にした。
 そして他の者達も結局パークを見つける事が出来なかったらしく、これからどうするか話し合っている所だ。

「明日、下山しましょう……。それと先程警察にも連絡しましたので恐らく少ししたら捜索隊が来ると思います」

 どうやら、正男は遭難と言うことで通報したらしい。

「本来なら昨日の段階でするべきでしたが……申し訳ございません」
「いえ、正男さんが悪いわけでは無いですよ。俺達だってしなかった訳ですし」
「ヒューズさんの言う通りですよー。それに仲良い私だってクイーン達が遭難したんじゃなくて、帰ったと思ったくらいですしー」

 ヒューズと姫が気を使うように正男をフォローする。

「皆さんありがとうございます。今から下山しても暗くなって危ないですし明日にしましょう。そして今日は皆纏まって寝る事にしましょう」

 念の為にと言う事で一つのテントで明日の朝まで一緒に居ることになった。
 生憎とテントは余裕持った大きさだったので全員が座れるくらいには広さが確保されている様だ。

「とんでもない事になったね」
「カリンもプルさんも大丈夫?」
「私は大丈夫よ、むしろお仕事のネタとしては最高かもね」

 プルはオカ達から伝わってくる緊張や不安を解そうと冗談混じりで言う。
 それを理解した二人は苦笑いしながらも緊張や不安が緩和される事に気付く。どうやらこの状況に相当緊張していたらしい。

「題材は神隠しにでもしときますか?」
「いいわね。オカ君の意見を取り入れるわ」
「あはは、ならその雑誌が出たら私買いますよ」
「そうして頂戴」

 プルのお陰で二人も冗談が言える程には余裕が生まれてきた様だ。

 その会話を少し離れた場所でダルマとフィブも聞いていた様で、二人は黙っていたがやはり少し緊張が解けた様だ。

 それから皆で荷物をまとめ夜ご飯の準備をして明日、日が昇ったら直ぐにでも下山出来る準備をしてから夜を過ごす事にした。

 だが、不思議な事に正男が連絡したと言う警察所か捜索隊すら姿を現さなかった……。


 
 
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