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マサオさん
4話
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オカは寝不足で怠い身体に鞭を打ち大学に向かっている。
「マサオさんのせいだ……」
電車の定期的な揺れがオカの眠気を誘う。
「二日連続とか俺も学ばないな」
それから何駅かの間に少しでも睡眠を取り戻したかったのか、オカは眠りについた。
そして大学の講義を受けて食堂に向かう。
「アイツら今日もいるかな?」
オカは食堂でA定食を頼み友人達の姿を探す。
「お、いたいた」
昨日と同じ窓際の席に三人組を確認したので、席に向かった。
「おーす、皆んな昨日はカリンの奴が悪かったな」
女の子からあんな突き刺す様な事を言われたら俺は耐えられないだろ……。
友人達は何故か俺の声に過剰に反応し振り向く。
「なんだオカか……」
「オカかよ……」
「お前じゃない……」
「な、なんだよ?」
オカは空いている席に座り友人達の会話に混ざろうとする。
「何の話してたんだ?」
「あ、あぁ……アニメの話?」
一人目の友人がオカから目を逸らしながら答える。
「へぇー、何のアニメ?」
「き、昨日のアニメ?」
二人目の友人がオカから目を逸らしながら答える。
「なんか面白いのやってたか?」
「さ、さぁ……?」
そして三人目も目を晒している。
「おいおい、お前らどうしたんだよ?」
三人は恐らくカリンを待っていたのだろうが、オカが来た為拍子抜けしてしまったのだろう。
「オカ、昨日は何かアニメ見たか?」
悟られたく無いのか話を逸らす為に友人の一人が話し出す。
「昨日はアニメ見てないな」
「お前、まさかまた都市伝説なんて見てたとか言わないよな」
「あはは、流石に無いだろ!」
「オカは変な奴だけど、流石にないでしょ」
「……」
友人達の前で黙り込んでしまうオカ。
「お、おいお前まさか……」
「また……見ちゃったのか?」
「やっぱり変な奴だな」
「ち、違うんだよ!」
何が違うのか分からないがオカは必死に友人達に言い訳をする。
「お気に入りの人がまたブログを更新してたから、ついつい……」
「見ちゃったのか?」
オカはコクリと頷く。
「そんなに面白いものかね……」
「僕には理解出来ないね」
「でも、聞いてくれよ。都市伝説マサオさんはなかなか面白いんだよ!」
「「「興味ねぇー」」」
オカが語り出すのを察知したのか三人は、ハッキリと拒絶した。
「な、なんでだよ。読んで見ると結構面白いぞ?」
「俺ホラー系苦手なんだよ」
「俺もー」
「僕はそもそも興味ない」
マサオさんについて語り合う人が欲しかったのか、オカは必死に友人達に記事を読むように勧めるが、誰一人興味を持ってくれなかった。
そしていつも通りアニメや漫画、ゲームの話で盛り上がる。
「そういえば、そろそろ夏休みだね」
「夏休みって言っても、今の時点で夏休みみたいなものだろう」
「あはは、確かにねー」
オカ達は大学四年で、オカ以外は就職先が既に決まっている為、大学には殆ど来てない様だ。
「夏コミ皆んなで行こうぜー」
「それいいね!」
「僕、今回欲しいのあるんですよね」
「俺もあるある!」
やはりオカもオタクの為、こういう話をするのが好きらしい。それから日程やどこを回るか確認などしていたらあっという間に時間が過ぎ解散する事にした。
皆んなと別れた後、オカは自宅に帰ろうと大学内を歩いていると、声を掛けられた。
「オカー!」
「ん?」
声の方を見るとカリンが手を振っている。カリンの周りには同じ系統の女性達が居た。
「うわー、絶対に近寄りたくねぇー」
オカはカリン達に聴こえない様に呟く。
「カリン、アイツ誰、彼氏?」
「バーカ、カリンがあんなオタク相手する訳ねぇーじゃん!」
「キャハハハ、じゃー何?」
「んー、ペット?」
「「キャハハハ!」」
カリンの友人がオカを指差し大声で笑い合う。
「煩いなー、友達だよ」
「あ! カリンが怒ったー!」
「キャハハハ、ごめんごめん」
そしてカリンは友人達から離れてオカの所に歩いて来る。
「オカ、ごめんねー。あの子達に悪気は無いんだけど」
「い、いや気にして無いから」
カリンは、本当に申し訳無さそうに謝って来た。オカはこういう所がある為カリンの事を嫌いになれないでいる。
「オカは今から帰り?」
「そうだよ」
「なら途中まで一緒しよ!」
カリンは友人と少し話してから再度オカの所まで走って戻ってきた。
「帰るって言ってきた!」
「別にそこまでしなくても」
「だって、昨日あまり話せなかったし」
オカは顔が赤くなる。やはり女性経験が無いので、女性の一言で直ぐに意識して勘違いしてしまいそうになるらしい。
それがカリンみたいな美人なら尚更だ。
「カリンさー」
「ん?」
「ホラー映画とか見たりする?」
「好きだよー、ホラー系の映画とか怖いけど面白いよね」
この男は友人達が全く興味を見せなかったので、カリンを引き込もうとしているらしい。未だに恥ずかしくてカリンの目を見て話せない男が、この時ばかりは積極的に引き込もうと策略している……。
「そうだよなー。ホラー面白いよな」
「うんうん。オカも好きなの?」
「最近ハマっててさ」
「なになに、メッチャ気になるんですけどー!」
オカはカリンに見えない様に、ニヤリと笑う。
「実はさ、最近ある都市伝説を見たんだよ」
「都市伝説って口裂け女とか、そういうの?」
「そうそう。よく知っているな」
「小学生の頃とか流行ってたよね」
これはいけると思ったのかオカはカリンに言う……。
「興味があるなら、俺の見ている都市伝説見るか?」
「見たい! なんてやつ?」
「マサオさん」
「あはは、なにそれ人の名前じゃん!」
どこかで聞いた事あるセリフを言いながらカリンは笑い出す。
「でも、尚更興味が出てきた!」
「お?! そうかそうか」
興味を持ってくれた事が嬉しかったのかオカは上機嫌になる。
「よし、俺が見ているサイトを教えてやるよ!」
「教えてー」
「今、URL送るから……って、俺カリンの連絡先知らないわ」
「もうー、オカが全然教えてくれなかったんじゃん!」
オカはごめんごめんと謝りながらカリンと連絡先を交換して都市伝説マサオさんのURLを送信した。
「送ったぞ」
「オッケー。このブログで見れるのね」
「見たら感想くれよ」
「分かったー!」
こうして、オカは初のマサオさん仲間が出来る可能性に内心とても喜んでいた。
二人は別れて、オカは家に到着する。
「カリンの奴、見てくれるかな」
どうやら、その場だけ合わせてくれただけで実際には見てくれないかもと思い始めた様だ。
そしていつも通りパソコンの電源をつけてネットサーフィンをする。
「お、マサオさんの記事更新されているじゃん!」
【都市伝説マサオさん。眠れない夜のお供にどうぞ その3】
オカ自身は気付いて無いが、最初の頃と比べて、全然違う表情とテンションでオカはタイトルをクリックした……
「マサオさんのせいだ……」
電車の定期的な揺れがオカの眠気を誘う。
「二日連続とか俺も学ばないな」
それから何駅かの間に少しでも睡眠を取り戻したかったのか、オカは眠りについた。
そして大学の講義を受けて食堂に向かう。
「アイツら今日もいるかな?」
オカは食堂でA定食を頼み友人達の姿を探す。
「お、いたいた」
昨日と同じ窓際の席に三人組を確認したので、席に向かった。
「おーす、皆んな昨日はカリンの奴が悪かったな」
女の子からあんな突き刺す様な事を言われたら俺は耐えられないだろ……。
友人達は何故か俺の声に過剰に反応し振り向く。
「なんだオカか……」
「オカかよ……」
「お前じゃない……」
「な、なんだよ?」
オカは空いている席に座り友人達の会話に混ざろうとする。
「何の話してたんだ?」
「あ、あぁ……アニメの話?」
一人目の友人がオカから目を逸らしながら答える。
「へぇー、何のアニメ?」
「き、昨日のアニメ?」
二人目の友人がオカから目を逸らしながら答える。
「なんか面白いのやってたか?」
「さ、さぁ……?」
そして三人目も目を晒している。
「おいおい、お前らどうしたんだよ?」
三人は恐らくカリンを待っていたのだろうが、オカが来た為拍子抜けしてしまったのだろう。
「オカ、昨日は何かアニメ見たか?」
悟られたく無いのか話を逸らす為に友人の一人が話し出す。
「昨日はアニメ見てないな」
「お前、まさかまた都市伝説なんて見てたとか言わないよな」
「あはは、流石に無いだろ!」
「オカは変な奴だけど、流石にないでしょ」
「……」
友人達の前で黙り込んでしまうオカ。
「お、おいお前まさか……」
「また……見ちゃったのか?」
「やっぱり変な奴だな」
「ち、違うんだよ!」
何が違うのか分からないがオカは必死に友人達に言い訳をする。
「お気に入りの人がまたブログを更新してたから、ついつい……」
「見ちゃったのか?」
オカはコクリと頷く。
「そんなに面白いものかね……」
「僕には理解出来ないね」
「でも、聞いてくれよ。都市伝説マサオさんはなかなか面白いんだよ!」
「「「興味ねぇー」」」
オカが語り出すのを察知したのか三人は、ハッキリと拒絶した。
「な、なんでだよ。読んで見ると結構面白いぞ?」
「俺ホラー系苦手なんだよ」
「俺もー」
「僕はそもそも興味ない」
マサオさんについて語り合う人が欲しかったのか、オカは必死に友人達に記事を読むように勧めるが、誰一人興味を持ってくれなかった。
そしていつも通りアニメや漫画、ゲームの話で盛り上がる。
「そういえば、そろそろ夏休みだね」
「夏休みって言っても、今の時点で夏休みみたいなものだろう」
「あはは、確かにねー」
オカ達は大学四年で、オカ以外は就職先が既に決まっている為、大学には殆ど来てない様だ。
「夏コミ皆んなで行こうぜー」
「それいいね!」
「僕、今回欲しいのあるんですよね」
「俺もあるある!」
やはりオカもオタクの為、こういう話をするのが好きらしい。それから日程やどこを回るか確認などしていたらあっという間に時間が過ぎ解散する事にした。
皆んなと別れた後、オカは自宅に帰ろうと大学内を歩いていると、声を掛けられた。
「オカー!」
「ん?」
声の方を見るとカリンが手を振っている。カリンの周りには同じ系統の女性達が居た。
「うわー、絶対に近寄りたくねぇー」
オカはカリン達に聴こえない様に呟く。
「カリン、アイツ誰、彼氏?」
「バーカ、カリンがあんなオタク相手する訳ねぇーじゃん!」
「キャハハハ、じゃー何?」
「んー、ペット?」
「「キャハハハ!」」
カリンの友人がオカを指差し大声で笑い合う。
「煩いなー、友達だよ」
「あ! カリンが怒ったー!」
「キャハハハ、ごめんごめん」
そしてカリンは友人達から離れてオカの所に歩いて来る。
「オカ、ごめんねー。あの子達に悪気は無いんだけど」
「い、いや気にして無いから」
カリンは、本当に申し訳無さそうに謝って来た。オカはこういう所がある為カリンの事を嫌いになれないでいる。
「オカは今から帰り?」
「そうだよ」
「なら途中まで一緒しよ!」
カリンは友人と少し話してから再度オカの所まで走って戻ってきた。
「帰るって言ってきた!」
「別にそこまでしなくても」
「だって、昨日あまり話せなかったし」
オカは顔が赤くなる。やはり女性経験が無いので、女性の一言で直ぐに意識して勘違いしてしまいそうになるらしい。
それがカリンみたいな美人なら尚更だ。
「カリンさー」
「ん?」
「ホラー映画とか見たりする?」
「好きだよー、ホラー系の映画とか怖いけど面白いよね」
この男は友人達が全く興味を見せなかったので、カリンを引き込もうとしているらしい。未だに恥ずかしくてカリンの目を見て話せない男が、この時ばかりは積極的に引き込もうと策略している……。
「そうだよなー。ホラー面白いよな」
「うんうん。オカも好きなの?」
「最近ハマっててさ」
「なになに、メッチャ気になるんですけどー!」
オカはカリンに見えない様に、ニヤリと笑う。
「実はさ、最近ある都市伝説を見たんだよ」
「都市伝説って口裂け女とか、そういうの?」
「そうそう。よく知っているな」
「小学生の頃とか流行ってたよね」
これはいけると思ったのかオカはカリンに言う……。
「興味があるなら、俺の見ている都市伝説見るか?」
「見たい! なんてやつ?」
「マサオさん」
「あはは、なにそれ人の名前じゃん!」
どこかで聞いた事あるセリフを言いながらカリンは笑い出す。
「でも、尚更興味が出てきた!」
「お?! そうかそうか」
興味を持ってくれた事が嬉しかったのかオカは上機嫌になる。
「よし、俺が見ているサイトを教えてやるよ!」
「教えてー」
「今、URL送るから……って、俺カリンの連絡先知らないわ」
「もうー、オカが全然教えてくれなかったんじゃん!」
オカはごめんごめんと謝りながらカリンと連絡先を交換して都市伝説マサオさんのURLを送信した。
「送ったぞ」
「オッケー。このブログで見れるのね」
「見たら感想くれよ」
「分かったー!」
こうして、オカは初のマサオさん仲間が出来る可能性に内心とても喜んでいた。
二人は別れて、オカは家に到着する。
「カリンの奴、見てくれるかな」
どうやら、その場だけ合わせてくれただけで実際には見てくれないかもと思い始めた様だ。
そしていつも通りパソコンの電源をつけてネットサーフィンをする。
「お、マサオさんの記事更新されているじゃん!」
【都市伝説マサオさん。眠れない夜のお供にどうぞ その3】
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