過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
483 / 492
第11章

482話

しおりを挟む
 あまりの武器の安さに驚いた俺達だったが、無事代金を支払い武器を受け取った。

「レギュ、見るッス! どうッスか?」

 ラバは受け取った剣を構える。

「ラバさん、カッコいいです!」
「そういうレギュもグローブがとても似合っているッス!」
「えへへ、このグローブ気に入りました!」

 二人の様子をエルフは嬉しそうに眺めていた。その表情は今までのドワーフ達とは違った為、俺はある事を聞いてみた。

「なぁ、ここの住人が俺達を目の敵にしている様に感じるんだが、何でか知っているか?」

 俺が話しかけると、直ぐにエルフは表情を戻す。

「いえ、分かりません。ただ、これだけは言っときます」

 エルフはシッカリと俺の目を見て来る。

「一刻でも早く、この村から出て行った方がいいですよ。貴方達は今、危ない状況に瀕しています」
「どういう事……?」

 俺達の会話にベムが入って来る。

「これ以上は話す事は無いです。さぁ、武器も売りましたし、早くここから出て行って下さい」

 そう言うと、エルフは俺達を追い出す様に店の外まで追い出す。

「あ、あの!」

 エルフが店に戻ろうとする間際にレギュが声を上げる。

「なんですか?」
「こ、このグローブと盾、ありがとうございます! このお店以外は武器すら見せてくれませんでしたから、とても嬉しかったです!」
「自分からもお礼を言うッス! こんなにカッコいい武器を売ってくれてありがとうッス!」

 若い二人のまっすぐな視線にエルフは再び微笑を浮かべる。

「私にも人間族の知り合いが一人居ます。その方は種族なんて関係無しに周りを大事にする人でしたので、その方と同じ人間族の貴方達につい力を貸してあげたくなっただけですよ」

 そう言って、エルフは今度こそ店の奥に引っ込み、再び武器を作り始めた。

 レギュとラバは、まだ話し足りなかった様だが、向こうが話す気がない事を悟り俺達は寝床に戻る事にした。

「はぁ……お名前だけでも知りたかったです」
「名前って……エルフの……?」
「はい。私のはじめての武器の製作者を知っときたかったです」
「名前なら分かる……あのエルフはトラクって言うエルフ……」

 ベムが先程のエルフの名前を呟く。

「なんで分かるッスか?」
「名札に書いてあった……」

 あぁ、なるほど。

「トラクさんって言うんですね! もう忘れません!!」

 こうして、俺達は苦労しながらも、なんとか武器を手に入れることが出来た。
 後は、二人に戦い方を教えれば良いだけだな!

「早く強くなって、自分もデグさんみたいになりたいッス!」
「別にデグは強くない……むしろ弱いくらい……」
「──ッうるせぇーよ!」

 クソ、ベムの奴め……俺が気にしている事をズバズバと言いやがるぜ。

 そんな事を話していると、後ろから声を掛けられる。

「おい、アンタ達、強くなりたいのか?」

 後ろを振り向くと、二人のドワーフが近づいて来た。そのドワーフ達は、まだ若いのか他のドワーフ達と比べて身体の線が細い。

「なんだ、お前達?」
「悪りぃ悪りぃ。急に声を掛けて驚かせちまったな」
「俺達はこの村で武器作りの訓練を受けている者だ」
「何の用だ?」

 俺は急に声を掛けられたことに警戒する。

「昨日からアンタ達を見ていてな……余りにも不憫だったんだで、なんか手伝える事がねぇーかと思ってたのよ」
「そうだぜ? そんな時に、アンタ達から強くなりたいって声が聞こえてな」

 二人の言葉にレギュとラバが反応した。

「どこか強くなれる所があるんですか?」
「もし、そうなら教えて欲しいッス!」
「あぁ、いいぜ。その為に声を掛けたわけだしな」

 うーん……昨日、今日のドワーフ達と大違いな態度だな。

 やっぱり、人間同士の関わり合いは、こうじゃ無いとな!

「場所はどこにあるんだ?」
「今、地図書いてやるよ!」

 そしてドワーフの二人は、地図に現在地から目的地までのルートを書き込んでくれた。

「ここだな。大体歩きで三日から五日くらいで行ける距離だな。まぁ、普通であれば四日って言った所かな」
「聞いて良い……?」

 ベムが二人に質問する。

「その場所は、何でおすすめなの……?」
「そりゃ、程よく動物が居て、程よくモンスターも居るからだな。泊まりがけで行く事になるが、動物が豊富に居るから飯には困らね」
「あぁ、コイツの言う通りだ。しかも更に奥に行くと大きい湖があるから、そこに辿り着ければ水にも困らねぇーぜ! しかもそこが絶景でドワーフの村に来たからには是非見るべきだな」

 コイツら、すげぇー親切じゃないか。

「それに、強くなるなら多少の危険は覚悟した方が、その分早く強くなれると思うぜ?」

 同意だな。危険であればある程、その危機を乗り越えて人間は強くなる──しかし、今はそこまで危険を犯してまで強くなる必要は無いと思っている。

 それから二人から途中途中にある野宿のおすすめ場所なども教えてくれた。

「そうか。丁寧にありがとうな。行くか分からないが参考にさせて貰うぜ!」

 俺達は親切にしてくれた二人のドワーフにお礼を言って、寝床に戻った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

チート能力【無限増殖】を得た俺は終末世界でもファンタジーしている ~無限に増え続ける能力で世界最強~

仮実谷 望
ファンタジー
ある日、俺は謎の薬を手に入れてそれを飲んだら、物を増やす能力に目覚めていた。お金儲けしたり、自分自身の欲望を叶えているうちに厄介ごとやモンスターと出会う。増える超能力。増え続ける超能力が進化していつの日か世界最強の男になっていた。基本的に能力は増え続けます。主人公は色々なことをしようとします。若干異能力バトルに巻き込まれます。世界は終末世界に移行してしまいます。そんな感じでサバイバルが始まる。スライムをお供にして終末世界を旅して自由気ままに暮らすたまに人助けして悪人を成敗する毎日です。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...