上 下
478 / 492
第11章

477話

しおりを挟む
「あ? お前ら人間族か? ならダメだ俺の宿には泊められねぇーよ! 早く出て行けッ」

 ベムの要望により、俺達は村の観光より、まずは宿を取る為、歩き回っていた。

 しかし、何故か分からないが宿が取れない。

「なんで……宿が取れないの……」

 既に疲れ果てて半分魂が抜けかけているベムはボソボソと苦言を漏らす。

「本当に何でなんですかね? 私達の顔を見た瞬間に断られますもんね」
「それも、これで五件目ッス!」

 そう、なぜか宿の亭主は俺達を見ると何も聞かずに断って来るのだ。
 中には、殴り掛かって来そうな者までいるくらいだ。

「なんか、様子が変だな」

 五件目を断られた俺達は、流石におかしいと思い、四人で頭を悩ませながら歩いている。

 すると……

「──うぉッ?! 冷てッ!?」

 俺は頭から急に寒気を感じ、一瞬何が起きたか分からなかった。
 だが、寒気を感じた次の瞬間には顔が濡れている事に気が付き、どうやら誰かに水を掛けられた事を悟る。

「デ、デグさん大丈夫ですか?!」

 結構な量の水をぶっかけられたのか、俺はビショビショになり、レギュが慌てた様子でタオルを取り出し渡して来る。

「ありがとう、レギュ……」

 水を掛けられたと思った瞬間に周りを見渡すが、どいつも知らん顔をしており、誰が水を掛けたか分からなかった。

「さ、流石に、これは可笑しすぎるッス!」
「ラバの言う通り……私達はなぜか目の敵にされている……」

 ベムも一度、周りを見渡した後に続けて口を開いた。

「でも……デグに水を掛けた人間は良くやったと言いたい……」
「──ッおい!」

 ッたく……ベムの奴……だがベムの推測は恐らく正しい。俺達が村を歩いていると、睨み付ける様に見て来る者が殆どである。それも、その中には女、子供まで居るくらいだ。

 普段、強面の男なんかに睨まれた所で、どうって事無いベムだが流石に幼い子供にまで睨まれると精神的に来る者がある様だ。

「小さい子に睨まれた……」
「ベ、ベムさん……別にベムさんの事を睨んでいた訳じゃないですよ!」
「ううん……あの目は確かに私を見てた……」

 肩を落とし落ち込んでいるベムにレギュとラバが元気付ける様に励ます。

 ああ見えて、ベムは子供が好きだしな……

 それから、もう数件の宿を回ったが結果は同じであり、理由を聞いても、お前らに教える義理はねぇ! の一点張りであった。

 仕方なく、俺達は村の入り口付近まで戻り野宿の準備をする事にした。

「今日はゆっくり休めると思ったのに……」

 先程から、色々と裏目に出ている事でベムはどんどん落ち込んでおり、今では地面を見ながら、歩いているくらいだ。

「ベムさん、野宿の準備は自分がやるッス! だから、ベムさんは休んでて下さいッス!」
「そ、そうですよ! 私とラバさんで準備するので、ベムさんはゆっくりしてて下さい!」

 若い二人に、相当気を使わせているベムは、流石に悪いと思ったのか顔を上げて歩き出す。

「ううん……私もやる……」
「そ、そうッスか……?」
「む、無理しないで大丈夫ですよ……?」

 心配する二人に対して問題無いと答え、野宿する場所まで歩く。村の入り口に戻ってきた俺達は、どこに寝床を作ろうかと、良さそうな所を探し回る。

「うーん、どこも良さそうな場所は取られていますね」
「レギュ言う通りッス。それに、なんだか此処でも睨まれている感じがするのは気のせいッスかね?」
「いや、気のせいじゃねぇーな。明らかに俺達をみてやがるぜ?」

 先程、宿を探していた時よりあからさまでは無く、俺達が顔を向けると慌てた様子で顔を背けるが、やはり俺達四人を見ている事は間違え無さそうだ。

「もう、今はそんな事どうでも良いから……横になりたい……」

 疲れ果てているベムは、周りの視線など気にせず、寝床に良さそうな場所を探す。結局良さげな場所が見当たらなかった為、仕方なく少し開けた場所に寝床を作る事にした。

「まぁ、周りの奴らと距離取れて丁度良いか」
「はは……そうッスね……」
「それにしても……離れ過ぎなのでは?」

 先程、少し開けたとは言ったが、本当はかなり開けた場所と言った方が良いかもしれない。

 他の者達は、村の門から百メートル程村に入り込んだ場所で集まり、寝床を作っていたが、俺たちは門から直ぐの所で寝床を作る事にした。

「ジロジロ見られるより、こっちの方が全然いい……」
「ベムさんの言う通りッスよね!」

 別にここに追い出されたというわけでは無いが、俺達が近くで寝床を作ると、睨み付けて来るのだ……それも周りの者達が一斉に。
 その為、しょうがなく、かなり離れた位置に寝床を作る事にした。

「せめて、ご飯は美味いの食べたい……」
「それに関してはお任せ下さい!」
「レギュ、自分も手伝うッス!」

 こうして、レギュとラバのお陰で飯だけはマトモな物を食べる事が出来た……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...