過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
474 / 492
第11章

473話

しおりを挟む
「み、皆さん申し訳無いッス……」
「いいから、今はとにかく走る……」
「ベムさんの言う通りですよ、ラバさん! 今は逃げましょう!」

 俺達は現在、小型に追われている。

「ここまで、モンスターには良い感じに遭遇しなかったんだけどな。ちくしょうッ」

 シクさんと別れてから、結構な日にちが経っていたが、俺達は一度もモンスターと遭遇はしなかった。

 それは、レギュとベムのお陰である。二人が居ればモンスターをいち早く見つけられる為、うまい具合に遭遇せずに出来ていた。

 しかし、今回は完全に俺の判断ミスだった。チラリとラバの方に視線を向けると、今にも泣きそうな表情を浮かべながら前を向いて走っている。

 事の発端は夜に起きた。

 全員で一斉に寝るのは危険な為、俺達は一人を見張りとして、後の三人は寝る様にしていた。
 その際に、数時間毎に見張りを交代する様にしてそれぞれ睡眠を取っている。

 そして、モンスターに追われる様な事態が起きた原因はラバの見張りであった。

 これまで、この様な長い旅をした事が無かったラバ。恐らく少しずつ疲労が蓄積していたのだろう、見張りの際に少しだけ、うたた寝をしてしまった様で、気が付いた時には遅かった。

 最初に気がついたのはレギュであった。いきなり、飛び跳ねて寝ている俺達を文字通り叩き起こす。

 俺が起きた時には既に小型が少し遠目から視認出来る距離まで近付いており、完全に俺達を狙っている事が分かる。

 それからは、ひたすら逃げ続けている状況だ。

「デグ、どうする……?」
「小型は一体だが……」

 俺はレギュとラバを一瞬だけ見る。

「このメンバーじゃ、流石に危険過ぎるな」
「私もそう思う……」

 後二人、手練れが居れば倒す事を考えていたが、戦闘経験が浅いレギュとラバの二人では小型と戦うのは危険過ぎる。

「クソッ、強くなる前に、同じ状況になっちまったな」
「これは試練……私達なら乗り切れる……」

 後ろを振り向くと、100メートルくらい後ろをピッタリとくっ付いて追ってくる小型。

 小型と言えど、俺達から比べれば、かなり大きい。それなのに小型は器用に木を避けながら追ってくる。

「デグさん、ベムさん、これからどうするつもりですかッ?」

 レギュの質問に俺とベムは黙り込む。

「とにかく……今は逃げるしか無い……」
「分かりましたッ! 私は体力だけは自信があるので、疲れたら私が運びますので言ってください!」
「ふふ……レギュは頼もしい……」

 自分で言うだけあって、レギュは本当に体力がある。あの時、シクさんと逃げている時でさえもレギュだけは、まだまだ余裕があったくらいだ。

 だが、問題はラバである。

「はぁはぁ」
「ラバ、大丈夫か?」
「はいッス! まだ、余裕あるので問題無いッス!」

 確かに、俺達に比べて呼吸は荒いが、まだ平気そうだな……だけど、それも時間の問題だろう。

 モンスターとの距離感は付かず離れずを保っている。
 本当はこのまま引き剥がしたいが、俺達にはそこまでのスピードが無い。

「身体能力の低さに嫌になるぜ」
「弱音を吐かない……」
「そうですよ! 心が折れたら、そこで終わりですよ!」

 それから、俺達は更に半日程小型から逃げ回る。

「はぁはぁ」
「ラバ……大丈夫……?」
「はぁはぁ、だ、大丈夫ッス……」

 これは、無理そうだな。ラバは肩で息をしている。
 むしろ、良くここまで走っているくらいだ。

「デグ……そろそろ、ラバが……」
「あぁ。そうだな、こうなったら戦うしかねぇーな」
「勝てる……?」

 ベムの言葉に後ろの小型を見る。特に変わった所も無い小型だ。

 しかし、噂で聞いた所に寄ると、モンスターの中には知能を持ったモンスターもいる様だが、コイツは違うだろうな?

「そんな事、考えている暇はねぇーか」

 ラバはいつ足を止まっても良いくらい疲れ果てている。

「皆んな、良く聞け。これ以上逃げてもラバが保たないから、戦おうと思うが良いか?」

 俺の言葉にベムとレギュが頷くが、ラバは違った。

「デグさん……はぁはぁ、自分なら大丈夫ッス。だからこのまま逃げましょう」

 自分の所為で、モンスターに追われて、自分の所為でモンスターと戦わないと、いけないこの状況にラバは申し訳ないとの感情でいっぱいの様だ。

「ラバ、気にしないで……どうせ、このままでも体力が切れるだけ……」
「そうですよ! ここは、小型を倒しちゃいましょう! それか、私が運んでこのまま逃げますか?」

 レギュがこちらを見ながら確認して来る。

「それでも、良いがどうせ戦うなら、まだ体力のある、今のうちに戦った方がいいだろう」
「分かりました!」


 こうして、俺達は後ろから追って来ている一体の小型を倒す事にした

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生冒険者は無自覚にチートぶりを発揮する〜ねぇ、普通じゃないって気付いてる?〜

宮本亜門・SAE
ファンタジー
交通事故で死んでしまった少年が異世界に転生して、無自覚無自重なチートでもって色々とヤラかす冒険譚。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

処理中です...