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第10章
464話
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「お兄さん、どうするの?! チルちゃんが言うにはそろそろモンスター達が集まって来るって!」
チルが先程、変異体が奇声を上げた意味を伝えに来てくれた。
どうやらリガスが気が付いた事らしいが、あの奇声は仲間を呼ぶ為の様で、着実にモンスター達が集まって来ているみたいだ。
「アトス様、話は聴かせて頂きました」
トッポに肩を貸しているグインが話し掛けて来る。
「グイン、禁止区域を抜けるまで後どれくらいだ?」
「恐らく、後一時間も掛からずに抜けられるでしょう」
一時間か……
「チルが言っていたが、この禁止区域はモンスター達に取って神聖な場所だか、抜けられさえすれば追ってこないと思うか?」
「絶対とは言えませんが、追って来ない可能性が高いと思います」
グインとトッポが顔を見合わせる。
「アトスさん、俺からもいいか?」
「なんだ?」
「俺やグインは狩の為に禁止区域の近くまで良く行っていたが、一度もモンスターと遭遇した事は無かったぜ?」
「そうなのか?」
「はい。他の場所ではモンスターなど居ましたが、この辺りだけは、遭遇した事がありませんでした」
グインとトッポの話を聞き、希望が湧いて来る。
しかし、今の状態でモンスターが来た場合、一体どうやって防ぐ?
「ロピ」
「なーに?」
「走りながらツェーンショットって撃てるか?」
俺の質問に首を振る。
「ううん。ツェーンショットは無理。フィンフショットまでなら……大丈夫だと思う」
「そうか……」
ロピのツェーンショットが有れば、先程の様に一掃出来たかもしれなかったんだがな……
何か良い案が無いか考えを巡らせていると──
「お兄さん、来たよ!」
変異体の後方から次々と小型がこちらに向かって来るのが見えた。
「あっちからも!」
続いて左側からも此方に向かって来る小型達。それから右側の方からもモンスターが迫り来ているとリザードマンが教えてくれる。
「アトス様、何かお考えが?」
「アトスさん、このままだとやべぇーぞ?!」
グインとトッポの声に何一つ応える事が出来ない。
まず、こんな数の相手と戦って勝てる筈が無い。
しかし、後ろからも、左右からもモンスター達が此方に向かっており、恐らくいずれ捕まる……だけど手が無い……
徐々にモンスター達が俺達に近付いている事を背中に感じながら足を動かし続ける俺達。
そして、とうとう抑えきれなくなったチルとリガスが合流する。
「アトス殿、すみませぬ。変異体一体で有れば抑えられるのですが、小型達が来ましたのでこれ以上は抑えきれませんでした」
これはしょうがない。リガスのスキルには制限があり、一度使用すると、しばらくの間置かないとスキルが発動出来ない。
そして、変異体を先頭に小型達がどんどん俺達に近付いて来るのが分かる。
流石に……これまでか?
変異体と小型が何十体も居る状況……それに対して俺達の方は全体で15人程。その内半分以上は疲労で疲れ切った者と怪我人だ。
この状況じゃ勝てる見込みは無い。
「せめて、ロピとチル、リガスの三人は生き残って貰わないとな」
俺が囮になるか? スキルの希少度で言えばリガスを除けば俺が一番高い為、スキルを発動しながら逃げれば俺に着いて来てくれるかもしれない……
だが、俺一人でモンスター全体を惹きつけられるものか?
知能を持たないモンスター達であれば、平気だったかもしれないが、あの変異体は難しいかもしれないな……
しかし、変異体だけで有ればリガス一人居れば問題無く逃げられるだろう。
「なら、やるしか無いよな!」
俺は、今考えた作戦をリガスにだけ言おうと思っている。
「はは、ロピとチルに言ったら着いて来るとか言ってくるだろうからな……」
俺の後に着いて来られたら、折角の囮作戦が全てパーである。
リガスなら、そこら辺の事をしっかりと分かってくれるだろう。
そんな事を考えていたら、モンスター達は直ぐ後ろまで来ている事に気がつく。
俺は急いでリガスに話をすると……
「アトス殿、なりませぬ! それで有れば私がその役目を果たしましょう!」
「いや、ダメだ。その場合ロピとチルを抑える者が居ない──だがリガスで有れば二人を抑えながらも逃げられるだろ?」
「……」
「はは、リガスでもそんな顔するんだな」
いつも、飄々と笑っているリガスだが、今は険しい表情だ。
「本当にやられるのですか?」
「あぁ……俺が囮になる。だから、リガス……二人を頼むぞ?」
俺はシッカリとリガスの目を真っ直ぐに見て伝える。そして俺の真剣味が伝わり、リガスはシッカリと頷く。
「お任せ下さい。チル様、ロピ殿に関しては何があっても──命を掛けてでもお守りする事を誓いますぞ」
「はは、リガスからその言葉を聞けたら安心だ──俺は最高の家族を持って幸せだな」
そして、俺はロピ、チル、リガスの為に囮になる事を決意する……
チルが先程、変異体が奇声を上げた意味を伝えに来てくれた。
どうやらリガスが気が付いた事らしいが、あの奇声は仲間を呼ぶ為の様で、着実にモンスター達が集まって来ているみたいだ。
「アトス様、話は聴かせて頂きました」
トッポに肩を貸しているグインが話し掛けて来る。
「グイン、禁止区域を抜けるまで後どれくらいだ?」
「恐らく、後一時間も掛からずに抜けられるでしょう」
一時間か……
「チルが言っていたが、この禁止区域はモンスター達に取って神聖な場所だか、抜けられさえすれば追ってこないと思うか?」
「絶対とは言えませんが、追って来ない可能性が高いと思います」
グインとトッポが顔を見合わせる。
「アトスさん、俺からもいいか?」
「なんだ?」
「俺やグインは狩の為に禁止区域の近くまで良く行っていたが、一度もモンスターと遭遇した事は無かったぜ?」
「そうなのか?」
「はい。他の場所ではモンスターなど居ましたが、この辺りだけは、遭遇した事がありませんでした」
グインとトッポの話を聞き、希望が湧いて来る。
しかし、今の状態でモンスターが来た場合、一体どうやって防ぐ?
「ロピ」
「なーに?」
「走りながらツェーンショットって撃てるか?」
俺の質問に首を振る。
「ううん。ツェーンショットは無理。フィンフショットまでなら……大丈夫だと思う」
「そうか……」
ロピのツェーンショットが有れば、先程の様に一掃出来たかもしれなかったんだがな……
何か良い案が無いか考えを巡らせていると──
「お兄さん、来たよ!」
変異体の後方から次々と小型がこちらに向かって来るのが見えた。
「あっちからも!」
続いて左側からも此方に向かって来る小型達。それから右側の方からもモンスターが迫り来ているとリザードマンが教えてくれる。
「アトス様、何かお考えが?」
「アトスさん、このままだとやべぇーぞ?!」
グインとトッポの声に何一つ応える事が出来ない。
まず、こんな数の相手と戦って勝てる筈が無い。
しかし、後ろからも、左右からもモンスター達が此方に向かっており、恐らくいずれ捕まる……だけど手が無い……
徐々にモンスター達が俺達に近付いている事を背中に感じながら足を動かし続ける俺達。
そして、とうとう抑えきれなくなったチルとリガスが合流する。
「アトス殿、すみませぬ。変異体一体で有れば抑えられるのですが、小型達が来ましたのでこれ以上は抑えきれませんでした」
これはしょうがない。リガスのスキルには制限があり、一度使用すると、しばらくの間置かないとスキルが発動出来ない。
そして、変異体を先頭に小型達がどんどん俺達に近付いて来るのが分かる。
流石に……これまでか?
変異体と小型が何十体も居る状況……それに対して俺達の方は全体で15人程。その内半分以上は疲労で疲れ切った者と怪我人だ。
この状況じゃ勝てる見込みは無い。
「せめて、ロピとチル、リガスの三人は生き残って貰わないとな」
俺が囮になるか? スキルの希少度で言えばリガスを除けば俺が一番高い為、スキルを発動しながら逃げれば俺に着いて来てくれるかもしれない……
だが、俺一人でモンスター全体を惹きつけられるものか?
知能を持たないモンスター達であれば、平気だったかもしれないが、あの変異体は難しいかもしれないな……
しかし、変異体だけで有ればリガス一人居れば問題無く逃げられるだろう。
「なら、やるしか無いよな!」
俺は、今考えた作戦をリガスにだけ言おうと思っている。
「はは、ロピとチルに言ったら着いて来るとか言ってくるだろうからな……」
俺の後に着いて来られたら、折角の囮作戦が全てパーである。
リガスなら、そこら辺の事をしっかりと分かってくれるだろう。
そんな事を考えていたら、モンスター達は直ぐ後ろまで来ている事に気がつく。
俺は急いでリガスに話をすると……
「アトス殿、なりませぬ! それで有れば私がその役目を果たしましょう!」
「いや、ダメだ。その場合ロピとチルを抑える者が居ない──だがリガスで有れば二人を抑えながらも逃げられるだろ?」
「……」
「はは、リガスでもそんな顔するんだな」
いつも、飄々と笑っているリガスだが、今は険しい表情だ。
「本当にやられるのですか?」
「あぁ……俺が囮になる。だから、リガス……二人を頼むぞ?」
俺はシッカリとリガスの目を真っ直ぐに見て伝える。そして俺の真剣味が伝わり、リガスはシッカリと頷く。
「お任せ下さい。チル様、ロピ殿に関しては何があっても──命を掛けてでもお守りする事を誓いますぞ」
「はは、リガスからその言葉を聞けたら安心だ──俺は最高の家族を持って幸せだな」
そして、俺はロピ、チル、リガスの為に囮になる事を決意する……
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