451 / 492
第10章
450話
しおりを挟む
「お兄さん……? モンスターも生きているってどういう事?」
「あ、な、何でもない」
自分の考えをつい口にしてしまった様だ。
だが、これで確信した。モンスターも人間同様に感情があり、母性もある……それはモンスターが子育てした事で明らかだ。
この世界に来た当初は人間を殺す事に疑問や抵抗感、道徳感など色々な事に苦悩したが、そんな甘い考えでは生きていけない事を悟った。
もちろん、自分だけが生き残るのであれば、ピンチになる度に逃げれば良い。
だが、家族を守る時は必ず立ち向かうしか無いんだ──その事を俺はシクに習った。
シクは俺を守る為にモンスターに立ち向かったし、自分を犠牲にしたし、必要とあれば、人間だって殺すだろう。
そんなシクの背中を見て育った俺も、また考え方は同じだ!
いくらモンスターに感情があっても、そして子育てする姿を見ても、更に人間と何の変わりも無いと感じたとしても、守る為なら、俺は何だってやってやるさ。
そんな事を考えていると、不思議と先程までの手足の震えや嘔吐感が無くなり気分がスッキリする。
よし、なんとなく自分の中で整理が出来たな!
一人で、納得していると隣から鋭い声が飛んできた。
「お兄さん、アレ見て!」
ロピの声に皆が反応し、視線を移すと、子供達が一列に並び始めた。
「あれは、何をされているのでしょうか?」
「うーん、これから何かを始めようとしているのは、確かだよな……?」
綺麗にモンスターの子供達が立ち並び、各列事に親なのか子育て役なのか、小型達が一体ずつ付いていた。
何が始まる?
「むっ?! アトス殿、アレを見て下さい」
「ん……ッ?!」
「あッ?!」
ロピに続いてリガスの声に反応し視線を向けるとそこには、なんと人間が何人も現れたのであった。
しかも、その中にはグイン達の姿もある。
「な、何をするつもりだよ……一体……」
グイン達は特に縛られているわけでも無いが、両側を複数の小型に囲まれている為逃げる事が出来ない様だ。
「餌やりだ……」
誰かが、そう呟いた。
「ふむ……確かに、あれば餌やりなのかもしれませんな」
どうやら、餌の時間なのか、子供達にグイン達を食べさせようとしている様だ。
ピンチな状況なのは変わらないが、ひとまず生きていて良かった。俺が安堵の溜息をしていると……
「先生ッ!?」
グインの姿を見た瞬間にチルが木から飛び出そうとする。だがリガスが直ぐに止める。
「リガス離して!」
「チル様、落ち着いて下さい。今突っ込んでも助けることは出来ませぬ」
「でも! 先生が!」
「もし、助けたいと思うのであれば、冷静にならないと、なりません」
チル自身も分かっているのか、リガスの言葉を聞いて、暴れるのを辞める。
「わかった。アトス様、先生を助けたいです!」
「あぁ……分かっている」
チルの懇願する目を見て、頷く。
「どこまでやれるか分からないけど、助けよう。だけど俺が逃げろと言ったらいう事を聞くんだぞ?」
「はい!」
チルの瞳に力が宿るのを感じる。
「お兄さん、でもどうやって助けるの?」
「うーん……」
周囲を見回すと、そこには何体もの小型達がいる。そして子供達は果たして何体いるかも分からない。
「まず、小型の数は何体いる?」
「五体ですな」
リガスがすぐに回答。
「五体か……子供の数は分かるか?」
「お兄さん無理だよー、あんなに居たら数え切れないよ」
「ふむ。流石に数え切れませんな──恐らく100体以上は居るのでは?」
小型が五体だけなら、まだ何とかなったかもしれないが、子供がな……
「あの、子供の戦闘力がどれ位か分かればな……」
「恐らく、そこまで戦闘力は無いと思いますが、分かりませんぬな」
「どうするー? 一発私の雷弾を撃ち込んで見る?」
「いや、それだとモンスター達に俺達の事がバレる。どうせやるなら特大の雷弾を撃ち込んだ方がいいな」
まずはグイン達を助けたとして、このモンスター達からどうやって逃げるかだな。
「リガス、グイン達を助けた後何処に逃げれば良いと思う?」
「そうですな……モンスターの気配は、やはり何処を探ってもあるので、どうせ逃げるなら村に向かいませんか?」
「でも、リガス村の方向にはさっきまで小型達が何かしてたよ?」
リガスの、言葉にチルが首を傾げる。
「ですな──しかし、何処逃げても遭遇する可能性がありますから危険度で言えば変わりないでしょ」
「リガスの言う通りだな。これでもしかしたら居なくなっている可能性もあるしな」
こうして、俺達は村に向かって逃げる事にした。
しかし、肝心の救助方法については、まだ良い案が思い付かない。
「後は、どうやって助けるかだけど……どうするかな……」
「お兄さん、やっぱり私が一発撃ち込もうか?」
「うーん、それしか……無いか……」
ロピの雷弾で果たしてどこまで相手を倒せるかは分からない。そしてロピが雷弾を撃ち込む事で確実に俺達の存在はバレるだろう。
「だが、やるしか無さそうだな──よしロピはなるべく遠くまで移動して射程範囲ギリギリまで離れてくれ」
「分かったよ!」
「アトス殿、どうされるつもりですかな?」
「一発ぶち込んで、逃げるだけだ!」
「あはは、分かりやすいよ!」
「ほっほっほ。大胆かつ豪胆ですな」
「さすが、アトス様です──素晴らしい作戦に私、感銘しました」
俺の作戦は作戦にもなっていない酷いものである。
しかし、今にもグイン達の身に何が起こるか分からない以上、ジックリと考えている暇は無さそうだ。
「あ、な、何でもない」
自分の考えをつい口にしてしまった様だ。
だが、これで確信した。モンスターも人間同様に感情があり、母性もある……それはモンスターが子育てした事で明らかだ。
この世界に来た当初は人間を殺す事に疑問や抵抗感、道徳感など色々な事に苦悩したが、そんな甘い考えでは生きていけない事を悟った。
もちろん、自分だけが生き残るのであれば、ピンチになる度に逃げれば良い。
だが、家族を守る時は必ず立ち向かうしか無いんだ──その事を俺はシクに習った。
シクは俺を守る為にモンスターに立ち向かったし、自分を犠牲にしたし、必要とあれば、人間だって殺すだろう。
そんなシクの背中を見て育った俺も、また考え方は同じだ!
いくらモンスターに感情があっても、そして子育てする姿を見ても、更に人間と何の変わりも無いと感じたとしても、守る為なら、俺は何だってやってやるさ。
そんな事を考えていると、不思議と先程までの手足の震えや嘔吐感が無くなり気分がスッキリする。
よし、なんとなく自分の中で整理が出来たな!
一人で、納得していると隣から鋭い声が飛んできた。
「お兄さん、アレ見て!」
ロピの声に皆が反応し、視線を移すと、子供達が一列に並び始めた。
「あれは、何をされているのでしょうか?」
「うーん、これから何かを始めようとしているのは、確かだよな……?」
綺麗にモンスターの子供達が立ち並び、各列事に親なのか子育て役なのか、小型達が一体ずつ付いていた。
何が始まる?
「むっ?! アトス殿、アレを見て下さい」
「ん……ッ?!」
「あッ?!」
ロピに続いてリガスの声に反応し視線を向けるとそこには、なんと人間が何人も現れたのであった。
しかも、その中にはグイン達の姿もある。
「な、何をするつもりだよ……一体……」
グイン達は特に縛られているわけでも無いが、両側を複数の小型に囲まれている為逃げる事が出来ない様だ。
「餌やりだ……」
誰かが、そう呟いた。
「ふむ……確かに、あれば餌やりなのかもしれませんな」
どうやら、餌の時間なのか、子供達にグイン達を食べさせようとしている様だ。
ピンチな状況なのは変わらないが、ひとまず生きていて良かった。俺が安堵の溜息をしていると……
「先生ッ!?」
グインの姿を見た瞬間にチルが木から飛び出そうとする。だがリガスが直ぐに止める。
「リガス離して!」
「チル様、落ち着いて下さい。今突っ込んでも助けることは出来ませぬ」
「でも! 先生が!」
「もし、助けたいと思うのであれば、冷静にならないと、なりません」
チル自身も分かっているのか、リガスの言葉を聞いて、暴れるのを辞める。
「わかった。アトス様、先生を助けたいです!」
「あぁ……分かっている」
チルの懇願する目を見て、頷く。
「どこまでやれるか分からないけど、助けよう。だけど俺が逃げろと言ったらいう事を聞くんだぞ?」
「はい!」
チルの瞳に力が宿るのを感じる。
「お兄さん、でもどうやって助けるの?」
「うーん……」
周囲を見回すと、そこには何体もの小型達がいる。そして子供達は果たして何体いるかも分からない。
「まず、小型の数は何体いる?」
「五体ですな」
リガスがすぐに回答。
「五体か……子供の数は分かるか?」
「お兄さん無理だよー、あんなに居たら数え切れないよ」
「ふむ。流石に数え切れませんな──恐らく100体以上は居るのでは?」
小型が五体だけなら、まだ何とかなったかもしれないが、子供がな……
「あの、子供の戦闘力がどれ位か分かればな……」
「恐らく、そこまで戦闘力は無いと思いますが、分かりませんぬな」
「どうするー? 一発私の雷弾を撃ち込んで見る?」
「いや、それだとモンスター達に俺達の事がバレる。どうせやるなら特大の雷弾を撃ち込んだ方がいいな」
まずはグイン達を助けたとして、このモンスター達からどうやって逃げるかだな。
「リガス、グイン達を助けた後何処に逃げれば良いと思う?」
「そうですな……モンスターの気配は、やはり何処を探ってもあるので、どうせ逃げるなら村に向かいませんか?」
「でも、リガス村の方向にはさっきまで小型達が何かしてたよ?」
リガスの、言葉にチルが首を傾げる。
「ですな──しかし、何処逃げても遭遇する可能性がありますから危険度で言えば変わりないでしょ」
「リガスの言う通りだな。これでもしかしたら居なくなっている可能性もあるしな」
こうして、俺達は村に向かって逃げる事にした。
しかし、肝心の救助方法については、まだ良い案が思い付かない。
「後は、どうやって助けるかだけど……どうするかな……」
「お兄さん、やっぱり私が一発撃ち込もうか?」
「うーん、それしか……無いか……」
ロピの雷弾で果たしてどこまで相手を倒せるかは分からない。そしてロピが雷弾を撃ち込む事で確実に俺達の存在はバレるだろう。
「だが、やるしか無さそうだな──よしロピはなるべく遠くまで移動して射程範囲ギリギリまで離れてくれ」
「分かったよ!」
「アトス殿、どうされるつもりですかな?」
「一発ぶち込んで、逃げるだけだ!」
「あはは、分かりやすいよ!」
「ほっほっほ。大胆かつ豪胆ですな」
「さすが、アトス様です──素晴らしい作戦に私、感銘しました」
俺の作戦は作戦にもなっていない酷いものである。
しかし、今にもグイン達の身に何が起こるか分からない以上、ジックリと考えている暇は無さそうだ。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる