過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
449 / 492
第10章

448話

しおりを挟む
 俺達は禁止区域に入った時より、更に慎重になってグイン達の足跡が消えた場所まで戻っている。

 リガスが言うには、モンスターの気配がどんどん近付いて来ている様だ。その為、グイン達の足跡の場所まで一度戻り、何も手掛かりが無いなら、一度村に戻る事にした。

「先生……」

 チルがグインを心配して、不安そうな表情を浮かべる。

「チル、きっと大丈夫だ……今は手がかりを探す事だけに集中しろ」
「はい……」

 チルには大丈夫だと言ったが、足跡が消えている事から、何かがあった事は明確だ──無事で居てくれよ……?

「皆さん止まってください」
「リガス様、どうされましたか? あと少しですよ?」
「この先にモンスターが居ます」
「「「「──ッ!?」」」」

 リガスの言葉に緊張感が走る。

「リガス、何体居るか分かるか?」
「分かりませぬ」

 俺の質問に首を振るリガス。そんなリガスを見て皆んながどうするか考え始める。

「アトス様……前みたいに気に登りましょう」
「木か?」
「はい。木の上を移動すれば気付かれない筈です」
「そう……だな……」

 このまま、進むよりかは、気に登った方が見つかりにくいだろう──それに、村に帰るには、どっちにしろこちらの方向に行かないとダメだしな。

 チルの意見を取り合えれて、俺達は木の上を移動する。
 俺達四人は、以前に経験した事があるので特に問題無かったが、案内役として付いてきたリザードマンは、木の移動に慣れていない様で、何度か落ちかけていた。

「み、皆さん、流石ですね。こんな足場の悪い所を良くそんなスピードで走れるものだ」
「ほっほっほ。慣れですぞ?」
「そうだよー! 慣れれば直ぐだよー!!」
「集中すれば問題無い」

 リガス達三人は木の上を移動する為のアドバイスなどをしていた。

 案内役程では無いが、俺も木の上の移動は苦手である。
 皆んなが案内役に教えているコツなどを盗み聞きするのであった。

 そして、足跡の場所に到着した俺達は、木の上から見た光景が信じられなかった……

「な、なんだよアレ……」
「お、お兄さん、こんな事あるの……?」
「リガス、あれ何しているの?」
「ふ、ふむ。長い事生きて来た私ですが、これまでに見た事が無い光景ですな……」

 俺達四人は、それぞれ見たまんまの感想を口から溢す。案内役なんて開けた口が塞がらない様だ。

 一体目の前には何が起きているというと、そこには二体の小型が居たのである。

 だが、ただ普通の小型が二体居るわけでは無かった。

「アトス様、あれ何をされているんですか?」

 チルは小型達が何をしているか、分からない様子である。しかし、チル以外の者達はモンスターが何をしているか、何となく把握する……

「お、お兄さん……モンスターってあんな事するの……?」
「わ、分からねぇ……こんなの初めてだよ」

 その光景は、一体の小型にもう一体の小型が上に被さっていた──そう、それはまるで交尾する様に……

「リガスは、アレの事何か知っているか?」
「いえ、知りませぬ。まさかモンスターが、その様な行為をするなんて……」

 皆んなが驚くのも無理は無い、モンスターが交尾をするなんて、チルから習った事も無いし、これまでの旅でも聞いた事なんて無いぞ……?

 モンスターは俺達に気付く様子も無く、ひたすら行為に耽っていた。
 そんな、モンスターの行為が何をしているか、未だ理解出来ないチルが姉に尋ねる。

「姉さん、モンスターは何をしているの?」
「──えっ?! えーっとね……アレはね……」
「うん?」

 妹に、何で説明していいか分からないロピはしどろもどろしながら答える。

「チ、チルちゃんには、まだ少し早いかな……? あ、あはは……」
「なんで?」
「と、とにかく今はその話は無し! 帰ったら教えてあげるから!」
「……分かった」

 緊迫した状況であり、グインを助けたい気持ちが強い、チルは納得して再度モンスターに視線を向ける。

「ふぅ……」

 一方、ロピの方は安堵した溜息を漏らして、妹同様にモンスターに視線を向ける。

「アトス殿、どうします?」
「うーん、向こうは俺達のことを気が付いて無いし、このまま様子を見よう」
「ふむ。そうですな──どっちにしろ村に帰るにも此処を通るしかありませんしな」

 俺達五人は、モンスター達が何処かに移動するまで、木の上で待機する事にした。

 それにしても、こんな事があるのかよ……交尾している理由は何だ?
 快楽の為か? それとも……子孫繁栄……?

 この世界にモンスターは大量に居る。それが、一体どれくらい居るか分からないが、全種族を合わせた数より多いのでは無いかと言われたりしている。

 どうやら、この世界で生きている者達は生まれた時からモンスターが居る世界にいた為、モンスターがどの様にして誕生して来るかなどに興味を持つ者は少なく、モンスターの増え方などについて研究や調査などされていなかった様だ。

 しかし、この状況を見る限りモンスターも、俺達人間みたいに交尾をして子供を産んでいたのか……?

 それから暫く様子を見ていたら、更に驚く光景を目の当たりにした……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...