過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第10章

445話

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「グインッ、どうする!?」
「逃げろッ! 皆んな、全力で逃げろッ!!」

 クソッ、やっぱり禁止区域なんかに入らなければ良かった!

 俺達は今、モンスターに追われている。

 アトス様が村に来た次の日に、戦闘が得意な者を十人程、引き連れて禁止区域に向かった。
 理由はもちろん牢屋から逃げ出したトッポを捕まえる為である。トッポが裏切った事で、リザードマン達が多く亡くなった。
 その行為は決して許せる事では無い。

 それに、仮に俺が許した所で家族を殺された村人達が許さないだろう。
 その為、俺達は禁止区域に隠れただろうトッポを見つける為にジャングルの中をどんどん突き進んだのである。

 そして、そこには複数のモンスターが居て、信じられ無い光景が広がって居たのだ。
 その光景はとても信じられず目を疑った──もしかしたら違うのかもしれ無いが、見たのは一瞬の為判断が付かない。

 そんな光景を目の当たりにした俺達は一瞬で複数のモンスターに見つかり、現在、逃げている所だ。

「お、おいグイン! も、もうだめだ……追いつかれちまう」
「諦めるなッ!」

 絶対、ここに居る十人で生き残るんだ!

 後ろを確認すると、三体の小型が俺達を追い掛けて来る。

「クッ……どうする……」

 こちらは全力で逃げているが引き剥がせない。このまま、逃げ続けても、こちらの体力が先に奪われてしまうだろう。

「グイン、お前だけでも逃げろ。お前だったら、もう少しスピードをあげられるだろ?」
「ダメだッ。皆んな一緒に帰るぞ」
「バカ言ってんじゃねぇ!」 

 俺の言葉に反応して他の者達が声を荒らげる。

「俺達は死んでも良いが、お前は村長だろ。村長が居なくなったら、あの村は終わるぞ?!」

 その言葉は正しい。トッポとの戦いで、現在村にいる中で戦闘出来る者達は少ない。
 今回連れてきた者達を抜けば数人しか居ない上に、皆んなまだ若いので、村長になって、村を纏めるのはとてもじゃ無いが無理だろう。

「お前も分かっているんだろ?」
「……」
「この中で絶対に生き残らないといけないのはお前だッ!」
「そうだぜ? だから、グイン……先に行けよ」

 仲間達を見回すと、誰もが覚悟した表情になり、そして俺に先に行けと言う。

「……で、出来な──」

 仲間達に向かって、出来ないと応えようとした瞬間だった──前方から、急に小型二体がこちらに向かって来たのだ。

「──ッ!?」

 挟み撃ちされただと?!

「おいおい、勘弁してくれよ。モンスターの癖に挟み撃ちだと?」
「まるで俺達、人間みたいじゃねぇーかよ……」

 仲間達も、この小型の行動には動揺している様だ。
 そして……

「グインッ! やっぱり、お前だけでも逃げろッ!」
「そうだぜ。もう、俺達が逃げ切るのは無理だ、せめてお前だけでも逃げて、この禁止区域の本当の秘密を子供に継がせろ!」
「秘密を継がせるのは、村長であるお前の役目だからなッ!」

 そう言って仲間達は既に話し合っていたのでは無いかとお前る様に、それぞれがバラバラになり、小型達に向かって走り向かう。

「お前達ッ!」

 俺がいくら、叫んでも戻って来る事は無く、小型に向かって走り出す。

「くそッ!!」

 村長である俺が、村で一番強い俺が、村人達に守られているッ!
 普通は逆だろ!

 自身の不甲斐無さを覚え、怒り、悲しむ。

 今この場で自分自身も、仲間達の後を追って小型と戦いたいが、それは無謀であり、勝ち目は無いだろう。

 そして、仲間達の言う通り、この禁止区域の秘密は絶対に言い伝える必要がある!

 俺は、仲間から視線を外して、村に向かって全力で走り向かう!!

「──ッ!?」

 しかし、それは叶わなかった……

「な、なんで……?」

 俺が、全力で走り出そうとすると、既に俺は小型に囲まれていたからだ。

「さっきまで、仲間達の所に……」

 そう、思って周囲を探ると、先程俺達を追いかけていた小型は居る……という事は、更に新しい小型が潜んでいたって事か……?

 そんな事を考えていたら、小型による尻尾の振り払いを直撃する。

「ヴッ……」

 私の受け流しやカウンターは、人間に対しては有効だが、モンスターには効かない。
 吹き飛ばされ、背中から木に激突した俺は意識が朦朧として、目の前の光景が霞む。

「あぁ……俺も食われるのか……」

 この世界で、酷い死に方の一つとしてモンスターに食われる事だと、良く言われている。
 そんな死に方を今、正に体験しようとしている俺は、恐怖で身体が勝手に震える。

「皆んな、済まない……」

 俺は、届かないと知っていながらも、仲間や村人、妻と娘に向かって謝る。

 そして、痛い思いをするくらいならと、朦朧とする意識を手放した……
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