441 / 492
第10章
440話
しおりを挟む
俺はグインにこれまでの人間族との出来事を話した。
俺の話に終始相打ちを付き、時には驚いたり、怒りを見せる場面もあった。
「成る程……その様な事が……」
「あぁ……それでグイン達、リザードマンに頼みたい事が、あって今日は此処に来た」
「頼みたい事……?」
俺達の様子と話を聞いて、これから俺が何を言うか分かっている様子であったが、グインは俺の言葉を持つ。
「グイン達の力を貸して欲しい──俺達と力を合わせて一緒に人間族を倒してくれないか?」
「……」
グインは俺の言葉を聞いて一度両目を閉じる。
「……アトス様、一つ聞いても?」
「なんだ?」
「何故、人間族であるアトス様は、エルフやドワーフ達に協力するのです?」
グインは続けて疑問を投げかけて来る。
「アトス様達くらいの実力があれば、戦闘に参加なんて為ずに、人間族の住処から離れれば暮らしていけるのに、何故?」
……何故……か……
この疑問については自分自身何度も考えたけどねぇ……結局見つからなかった。
「グイン……明確な答えを出せる訳では無いんだが、俺がエルフやドワーフに力を貸す理由は助けたいからだ!」
「助けたい……ですか?」
「あぁ、こうやって知り合った以上、見過ごす訳にはいかない──本来であればこんな勝ち目の無い戦に尻尾巻いて逃げるのが普通かもしれない」
命あってのものだねだからな……でも……
「でも、俺と仲良くしてくれた人が仮に自分と違う種族であっても、ピンチになったら仲間として助けてやりたいだろ?」
最後は臭いセリフを誤魔化す為に戯けた雰囲気で言った。
「……流石、アトス様だ……」
俺の言葉に何やら感じ取ったのかグインは口元を緩めながら独り言を呟く様に話す。
「俺達の時もそうだ……自分とは関係無いのに一緒に戦ってくれた……」
それは、以前のことかな?
「そして、アトス様は又もや自分とはあまり関係ない戦闘を他種族の仲間の為に参加している……流石だ……」
何やらブツブツと暫くの間、呟いていたと思ったら、グインがいきなり椅子から立ち上がった。
「アトス様!」
「お、おう! ……なんだ?」
「俺達リザードマンは戦いに参加します」
「本当か……?」
「はい、我々も一緒に戦わせて下さい──どっちにしろ最終的にはこの村まで来るなら、その前に叩きたいです」
「ありがとう!」
俺は感謝の気持ちを表す為に、グインの手を握り上下にブンブンと振る。
「流石、先生です」
「チルちゃん先生さすが!」
「ほっほっほ、素晴らしいですぞ」
そんなグインは最後に言いたい事がある様だ。
「これだけは言っときます──俺達はエルフやドワーフ達の為に戦うのでは無く、リザードマン達の未来の為に、そしてアトス様達個人の為に戦う事を覚えといて下さい」
……ん? なんか似た様な言葉を最近聞いた様な……気のせいか?
「協力、ありがとうな。戦闘でピンチになったら逃げてくれて、勿論構わない。一番大切なものは自分の命と家族の命だからな!」
こうして、なんとかオーク族に引き続き、リガードマン達も戦闘に参加してくれることになった。
「戦いは一年後の予定だ──戦場など詳細はまだ決まってないから、決まったら改めて連絡するよ」
「分かりました……今すぐでは無いのなら問題ありません」
ん……?
「今すぐだと、何か問題あるのー?」
どうやら、ロピもグインの言葉が気になった様だ。
「いえ、何でもありません」
「先生……何か困り事ですか?」
「いや、問題無い。チルは気にする必要は無い」
グインは、それ以上この話は終わりだと言わんばかりに、話題を逸らした。
「そういえば、アトス様達の噂を聞きましたよ」
「噂?」
「はい、四人の二つ名が、この村にも伝わっておりますよ?」
「えー、本当ー?! 私達、そんな有名になっているのー?」
ロピが嬉しそうに騒ぐ。
「私の二つ名はー?」
「はは、ロピの二つ名は雷弾だろ?」
「あたりー! えへへ、じゃチルちゃんはー?」
「チルは、剛腕だな」
「当たりです、先生」
グインが知っていた事に嬉しそうに笑うチル。
「リガスさんが、鉄壁ですね?」
「ほっほっほ。知って頂いて光栄です」
「それで、アトス様がよく分からない奴でした……か?」
「ちげぇーよッ!」
なんで、昔のままの二つ名なんだよッ!
「プッ!」
グインの言葉にロピが吹き出す。
「あはは、お兄さんの二つ名、昔のままんだねー!」
「姉さん!!」
「あはは、だってー!!」
クソ……ロピめ……
俺がロピを睨みつけるが、笑い続けるロピにチルが──
「あはは、お兄さんの、その二つ名面白すぎだよ、あはは──イタッ!?」
「姉さん、笑いすぎ。反省するべき」
「い、痛いよチルちゃん!」
姉であるロピの頭に遠慮無くゲンコツを落とす。そこからは、いつもの姉妹喧嘩が始まる。
そんな様子を戸惑った様子に、リガスが俺の今の二つ名と、姉妹喧嘩に対しては気にするなと説明する。
グインは俺の二つ名を間違えた事に、とても申し訳無さそうにして謝り、その後宴会の準備が整ったという事で宴会場に向かった。
俺の話に終始相打ちを付き、時には驚いたり、怒りを見せる場面もあった。
「成る程……その様な事が……」
「あぁ……それでグイン達、リザードマンに頼みたい事が、あって今日は此処に来た」
「頼みたい事……?」
俺達の様子と話を聞いて、これから俺が何を言うか分かっている様子であったが、グインは俺の言葉を持つ。
「グイン達の力を貸して欲しい──俺達と力を合わせて一緒に人間族を倒してくれないか?」
「……」
グインは俺の言葉を聞いて一度両目を閉じる。
「……アトス様、一つ聞いても?」
「なんだ?」
「何故、人間族であるアトス様は、エルフやドワーフ達に協力するのです?」
グインは続けて疑問を投げかけて来る。
「アトス様達くらいの実力があれば、戦闘に参加なんて為ずに、人間族の住処から離れれば暮らしていけるのに、何故?」
……何故……か……
この疑問については自分自身何度も考えたけどねぇ……結局見つからなかった。
「グイン……明確な答えを出せる訳では無いんだが、俺がエルフやドワーフに力を貸す理由は助けたいからだ!」
「助けたい……ですか?」
「あぁ、こうやって知り合った以上、見過ごす訳にはいかない──本来であればこんな勝ち目の無い戦に尻尾巻いて逃げるのが普通かもしれない」
命あってのものだねだからな……でも……
「でも、俺と仲良くしてくれた人が仮に自分と違う種族であっても、ピンチになったら仲間として助けてやりたいだろ?」
最後は臭いセリフを誤魔化す為に戯けた雰囲気で言った。
「……流石、アトス様だ……」
俺の言葉に何やら感じ取ったのかグインは口元を緩めながら独り言を呟く様に話す。
「俺達の時もそうだ……自分とは関係無いのに一緒に戦ってくれた……」
それは、以前のことかな?
「そして、アトス様は又もや自分とはあまり関係ない戦闘を他種族の仲間の為に参加している……流石だ……」
何やらブツブツと暫くの間、呟いていたと思ったら、グインがいきなり椅子から立ち上がった。
「アトス様!」
「お、おう! ……なんだ?」
「俺達リザードマンは戦いに参加します」
「本当か……?」
「はい、我々も一緒に戦わせて下さい──どっちにしろ最終的にはこの村まで来るなら、その前に叩きたいです」
「ありがとう!」
俺は感謝の気持ちを表す為に、グインの手を握り上下にブンブンと振る。
「流石、先生です」
「チルちゃん先生さすが!」
「ほっほっほ、素晴らしいですぞ」
そんなグインは最後に言いたい事がある様だ。
「これだけは言っときます──俺達はエルフやドワーフ達の為に戦うのでは無く、リザードマン達の未来の為に、そしてアトス様達個人の為に戦う事を覚えといて下さい」
……ん? なんか似た様な言葉を最近聞いた様な……気のせいか?
「協力、ありがとうな。戦闘でピンチになったら逃げてくれて、勿論構わない。一番大切なものは自分の命と家族の命だからな!」
こうして、なんとかオーク族に引き続き、リガードマン達も戦闘に参加してくれることになった。
「戦いは一年後の予定だ──戦場など詳細はまだ決まってないから、決まったら改めて連絡するよ」
「分かりました……今すぐでは無いのなら問題ありません」
ん……?
「今すぐだと、何か問題あるのー?」
どうやら、ロピもグインの言葉が気になった様だ。
「いえ、何でもありません」
「先生……何か困り事ですか?」
「いや、問題無い。チルは気にする必要は無い」
グインは、それ以上この話は終わりだと言わんばかりに、話題を逸らした。
「そういえば、アトス様達の噂を聞きましたよ」
「噂?」
「はい、四人の二つ名が、この村にも伝わっておりますよ?」
「えー、本当ー?! 私達、そんな有名になっているのー?」
ロピが嬉しそうに騒ぐ。
「私の二つ名はー?」
「はは、ロピの二つ名は雷弾だろ?」
「あたりー! えへへ、じゃチルちゃんはー?」
「チルは、剛腕だな」
「当たりです、先生」
グインが知っていた事に嬉しそうに笑うチル。
「リガスさんが、鉄壁ですね?」
「ほっほっほ。知って頂いて光栄です」
「それで、アトス様がよく分からない奴でした……か?」
「ちげぇーよッ!」
なんで、昔のままの二つ名なんだよッ!
「プッ!」
グインの言葉にロピが吹き出す。
「あはは、お兄さんの二つ名、昔のままんだねー!」
「姉さん!!」
「あはは、だってー!!」
クソ……ロピめ……
俺がロピを睨みつけるが、笑い続けるロピにチルが──
「あはは、お兄さんの、その二つ名面白すぎだよ、あはは──イタッ!?」
「姉さん、笑いすぎ。反省するべき」
「い、痛いよチルちゃん!」
姉であるロピの頭に遠慮無くゲンコツを落とす。そこからは、いつもの姉妹喧嘩が始まる。
そんな様子を戸惑った様子に、リガスが俺の今の二つ名と、姉妹喧嘩に対しては気にするなと説明する。
グインは俺の二つ名を間違えた事に、とても申し訳無さそうにして謝り、その後宴会の準備が整ったという事で宴会場に向かった。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
りんねに帰る
jigoq
ファンタジー
人間の魂を回収し、輪廻に乗せる仕事を担う下級天使のルシア。ある日、バディのフーガと魂の回収に向かった先で死神の振るう大鎌に殺されそうになる。それを庇ったフーガが殺されたかに思えた。しかし大鎌は寸前で止められる。その時ルシアの耳朶を打ったのは震える声。――死神は泣いていた。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる