過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
439 / 492
第10章

438話

しおりを挟む
「お兄さん、まだ着かないのー?」
「うーん、そろそろだと思うぞ?」
「着いたら、お腹一杯ご飯食べたーい!」
「お前、朝も沢山食べただろ……?」

 ロピはリガスが作ったご飯を俺達の倍以上食べていた。

「あんなのは全然序の口だよ? だってお腹いっぱい食べてないもん!」
「あんなに食べて、お腹一杯にならないのか……?」
「うん! 成長期なのかな?」

 おいおい、勘弁してくれよ……。ただでさえ身長が既に俺よりデカいのにこれ以上差が離れたら親としての威厳が……

 神様……どうか、ロパとチルが身体的な面でこれ以上成長しませんように。

 おかしな願いを心で願う。

 そして、次はチルの方に目を向ける。すると、ちょうどチルの方も俺に話し掛けようと思って居たのか、こちらに近付いて来た。

「アトス様、リザードマンの村に行く件ありがとうございます」
「はは、気にするな──あの時約束したからな! まぁ、俺が直接チルを強くする訳では無いけど」
「いえ、アトス様が約束を覚えてくれた事と、私の為に考えてくれた事がとても嬉しいです」

 ニコリと微笑むチル。

「私は、姉さんのあまりの強さに焦っていました……」
「ロピの強さ?」
「はい……姉さんは中型でさえ倒せる威力の技を持っています──それにこの前は炎弾という人間族最強と言われている者にも互角で張り合っていました……」

 直接見たわけでは無いが雷弾ことロピと炎弾の戦いは壮絶なものだったようだ。
 遠距離最強にして、人間族の二強の一人である炎弾に対してはロピは一歩も、引けを取らずに互角以上の戦いを繰り広げた事を聞いた俺は驚いた。

 どうやら、そんなロピの姿を見ていたチルは姉の成長と強さに焦りを覚えたみたいだ。

「はは、確かにロピはすごいな」
「……」
「中型を一撃で倒せる者が果たしてこの世界に何人居るか分からないけど、間違えなくロピ以上の攻撃力を持つ人間は五人と居ないだろう」
「はい……私も、そう思います」
「まぁ……ロパは言わば対モンスターのスペシャリストだな」

 モンスター討伐に関して言えばロピの右隣に立つ者は炎弾くらいだろう。

「だから、チルは対人間最強になれば良いさ」
「対人間……最強……?」
「あぁ、そうだ。別に姉妹揃ってモンスターのスペシャリストになる必要は無い。それよりもお互い劣っている部分を補う様に自分の力を高め合っていけばいいんだよ」

 俺の言葉に目を見開くチル。

「ロピはモンスターに対しては強いが、人間に対してで言えばそうでも無い。だから、そんな姉を妹のチルが助けてやれ」

 俺の言葉にチルは表情を固める。

「流石アトス様です……私、今の言葉に感銘を受けました……」

 チルはそう言うと、片膝を地面に付けて腕を組み祈るポーズを取る。

「チ、チルちゃん?! どうしたの?! また、例のヤツ始まっちゃったの?!」
「姉さん、やはりアトス様は神様だったよ? 私をいつも導いて来れるの」
「うわーん、妹が訳わからない事言って壊れたー!!」

 そして、暫くの間、チルは俺に向かって祈るポーズを続けていた……

 まぁ、悩みが解決したならいいか……?


 その後もジャングル内を歩いているとリガスが立ち止まる。

「ふむ。此処らへんですな」
「なんで、分かるの?」

 リガスの言葉にチルが首を傾げた。

「以前にもこの辺りに来た覚えがありますからな──覚えありませんか?」

 そう言って辺りを見渡すリガスに習うように俺達三人も周囲を見渡すが、リガスの様に分かるはずも無かった。

「お兄さん……私全然分からないんだけど……」
「あぁ……俺もだ……どこ見ても木と草しか見えない」
「どうやら、私達では見比べても、判断付かない様です……」

 俺達が目を細めたりしている様子がおかしかったのか、リガスは肩を揺らして笑っている。

「ほっほっほ。私と皆さんとでは生きている年数が違いますからな──皆さんも私くらい生きたら、区別が付くようになりますぞ?」

 一体あと、どれくらい生きればいいんだよ……

 それから、リガスを信じて暫く後ろを着いて歩き回った所、本当に到着するのであった。

「魔族さんすごーい! 本当に着いたよー。あの先にある村だよね?!」 

 ロパが指差す先には確かに村が存在していた。

「流石、私の執事。優秀……」
「ほっほっほ。ありがたいお言葉ですな」
「いや……それにしてもマジですげぇーな」 

 驚きながらも、俺達が村に向かって進んでいくと、門の所には二人のリザードマン達が見張りをしていた。

 俺達が近付くのを発見すると、最初は警戒する様子の表情を見せて居たが、顔の認識が出来る程近付くと俺達が誰か分かった様で驚いた表情を浮かべていた。

「──ッ!? おい、村長を読んで来い……」
「あ、あぁ分かった……」

 こうして、俺達はリザードマンの村に到着したのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...