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第10章

438話

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「お兄さん、まだ着かないのー?」
「うーん、そろそろだと思うぞ?」
「着いたら、お腹一杯ご飯食べたーい!」
「お前、朝も沢山食べただろ……?」

 ロピはリガスが作ったご飯を俺達の倍以上食べていた。

「あんなのは全然序の口だよ? だってお腹いっぱい食べてないもん!」
「あんなに食べて、お腹一杯にならないのか……?」
「うん! 成長期なのかな?」

 おいおい、勘弁してくれよ……。ただでさえ身長が既に俺よりデカいのにこれ以上差が離れたら親としての威厳が……

 神様……どうか、ロパとチルが身体的な面でこれ以上成長しませんように。

 おかしな願いを心で願う。

 そして、次はチルの方に目を向ける。すると、ちょうどチルの方も俺に話し掛けようと思って居たのか、こちらに近付いて来た。

「アトス様、リザードマンの村に行く件ありがとうございます」
「はは、気にするな──あの時約束したからな! まぁ、俺が直接チルを強くする訳では無いけど」
「いえ、アトス様が約束を覚えてくれた事と、私の為に考えてくれた事がとても嬉しいです」

 ニコリと微笑むチル。

「私は、姉さんのあまりの強さに焦っていました……」
「ロピの強さ?」
「はい……姉さんは中型でさえ倒せる威力の技を持っています──それにこの前は炎弾という人間族最強と言われている者にも互角で張り合っていました……」

 直接見たわけでは無いが雷弾ことロピと炎弾の戦いは壮絶なものだったようだ。
 遠距離最強にして、人間族の二強の一人である炎弾に対してはロピは一歩も、引けを取らずに互角以上の戦いを繰り広げた事を聞いた俺は驚いた。

 どうやら、そんなロピの姿を見ていたチルは姉の成長と強さに焦りを覚えたみたいだ。

「はは、確かにロピはすごいな」
「……」
「中型を一撃で倒せる者が果たしてこの世界に何人居るか分からないけど、間違えなくロピ以上の攻撃力を持つ人間は五人と居ないだろう」
「はい……私も、そう思います」
「まぁ……ロパは言わば対モンスターのスペシャリストだな」

 モンスター討伐に関して言えばロピの右隣に立つ者は炎弾くらいだろう。

「だから、チルは対人間最強になれば良いさ」
「対人間……最強……?」
「あぁ、そうだ。別に姉妹揃ってモンスターのスペシャリストになる必要は無い。それよりもお互い劣っている部分を補う様に自分の力を高め合っていけばいいんだよ」

 俺の言葉に目を見開くチル。

「ロピはモンスターに対しては強いが、人間に対してで言えばそうでも無い。だから、そんな姉を妹のチルが助けてやれ」

 俺の言葉にチルは表情を固める。

「流石アトス様です……私、今の言葉に感銘を受けました……」

 チルはそう言うと、片膝を地面に付けて腕を組み祈るポーズを取る。

「チ、チルちゃん?! どうしたの?! また、例のヤツ始まっちゃったの?!」
「姉さん、やはりアトス様は神様だったよ? 私をいつも導いて来れるの」
「うわーん、妹が訳わからない事言って壊れたー!!」

 そして、暫くの間、チルは俺に向かって祈るポーズを続けていた……

 まぁ、悩みが解決したならいいか……?


 その後もジャングル内を歩いているとリガスが立ち止まる。

「ふむ。此処らへんですな」
「なんで、分かるの?」

 リガスの言葉にチルが首を傾げた。

「以前にもこの辺りに来た覚えがありますからな──覚えありませんか?」

 そう言って辺りを見渡すリガスに習うように俺達三人も周囲を見渡すが、リガスの様に分かるはずも無かった。

「お兄さん……私全然分からないんだけど……」
「あぁ……俺もだ……どこ見ても木と草しか見えない」
「どうやら、私達では見比べても、判断付かない様です……」

 俺達が目を細めたりしている様子がおかしかったのか、リガスは肩を揺らして笑っている。

「ほっほっほ。私と皆さんとでは生きている年数が違いますからな──皆さんも私くらい生きたら、区別が付くようになりますぞ?」

 一体あと、どれくらい生きればいいんだよ……

 それから、リガスを信じて暫く後ろを着いて歩き回った所、本当に到着するのであった。

「魔族さんすごーい! 本当に着いたよー。あの先にある村だよね?!」 

 ロパが指差す先には確かに村が存在していた。

「流石、私の執事。優秀……」
「ほっほっほ。ありがたいお言葉ですな」
「いや……それにしてもマジですげぇーな」 

 驚きながらも、俺達が村に向かって進んでいくと、門の所には二人のリザードマン達が見張りをしていた。

 俺達が近付くのを発見すると、最初は警戒する様子の表情を見せて居たが、顔の認識が出来る程近付くと俺達が誰か分かった様で驚いた表情を浮かべていた。

「──ッ!? おい、村長を読んで来い……」
「あ、あぁ分かった……」

 こうして、俺達はリザードマンの村に到着したのであった。


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