過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

文字の大きさ
上 下
428 / 492
第10章

427話

しおりを挟む
 なんだ……あの、モンスターは?

 気配に誘われて視線を動かすと、そこには真っ黒なモンスターが居た。
 そのモンスターは見ているだけで不安を煽る様な気配を発しており、無意識に手が震えている事に気が付く。

「お、お兄さん……アレ……何……?」

 真っ黒なモンスターに怯えているのかロピはカウントをするのも忘れ俺の背中に自身の身体を隠す様に移動する。

「わ、分からない……」
「とても不気味で、なんだか怖いよ……」

 その、漆黒のモンスターはこちらに近付く気配は無く、ただただ俺達の方をジッと見ているだけであった……

 空が薄暗くなり、それなりに周りも暗くなってはいるが、そんな暗さなんて比べ物にならい程、黒いモンスターは、そこから一歩も動かずに居る。

 傷だらけの中型に真っ黒なモンスターと、俺達が知るモンスターの情報には無い事ばかりが目の前で起きていた。

 すると、ディングの部下達が漆黒のモンスターに向かって、突撃する様に走って行くのが見えた。

「あ、あのモンスターをやっちまうぞッ!」
「そうだな! あんな小さいんだし俺達でも余裕だろ!!」

 確かに、オーク達が言う様に漆黒のモンスターは小さい──小型と比べてもかなり小さく感じる。

 ドダドダと決して早くは無いがオーク達はモンスターに向かって武器を掲げながら走って行くのであった。

「お、お前ら、止まれッ!」

 得体の知れないしっこくのモンスターにディングは部下達に止まる様に命じるが、聞こえて無いのか止まる気配は無い。

「「──ッ!?」」

 そんな様子を見ていた俺とロピだったが、目の前に居る傷だらけの中型が動いた事により、慌てて目の前に集中する。

「お、お兄さん動き出して来たよ?!」
「と、とにかくもう一発ツェーンショットだ!」
「わ、わかったよ!」

 ロピがスリリングショットを再び構えるが、中型の回復速度が早いのか、大きな身体はどんどん動く様になり、遂には完全に身体を起き上がらせたのであった……

「ロ、ロピ、逃げるぞ……」
「う、うん。その方が良さそうだね!」

 俺とロピは無駄だと思いながらも足音を立てずにゆっくり、静かに中型から距離を取ろうとする。

 だが、案の定中型は俺達の方に顔を向けた。

「ば、バレている様だよ……?」

 どうすればこの場をやり過ごせるか、急ピッチで考え始めるが、どうやら考える必要は無かった様だ。

 中型は俺達の事を一瞥すると、その場から一瞬で消えて、漆黒のモンスターの所に向かって移動する。
 ロピのツェーンショットで尻尾には大きな穴が空いているのにも関わらず、怪我を感じさせ無い程のスピードであっという間に漆黒のモンスターの場所に到着した。

「なんなんだよ……あのモンスター達は……」

 そして、デァングの部下達の目の前に中型が現れた。その様子はまるで漆黒のモンスターを護るかの様な騎士の様な立ち振る舞いだ。

「やばそうだなッ!」

 俺は、すぐ様オーク達に向かってスキルを発動する。

「ガードッ!」

 オーク達は中型に吹き飛ばされ俺同様に木に激突した。ディングはそんな部下達を心配して駆けつける。

 中型がトドメを刺そうと追撃しようとすると、漆黒のモンスターが何やら鳴き声を上げて、静止させる。

 そして、漆黒のモンスターも傷だらけの中型も何故か俺とロピの方に身体を向けていた……

「お、お兄さん……なんか私達──いや、お兄さんの事見てない……?」
「お、俺の事をか……? いや流石に違うだろ……」

 ロピが言うには、二体のモンスターは俺の事を見ている様だが気のせいだよな?

「ちょっとお兄さんだけ動いてみれば?」
「お、おう」

 言われた通り、俺は移動する。すると、確かにモンスター達は俺の事を追って顔が動いている様な感じがする……

 おいおい、何で俺がモンスター達に注目され無いといけないんだよ……

 本来であれば脅威であるロピか珍しいスキルを持つリガスに注目する所だろ?

 そして、暫くの間俺はモンスター達に観察されていたが、二体のモンスターが動きを見せた。

「な、なんか去っていくね」
「そうだな」
「私達助かったの……?」
「多分……」

 実際このまま戦っていたら、どうなっていたか分からない。
 しかし、漆黒のモンスターが現れなかったら、恐らく傷だらけの中型は倒せたと思うが……

 二体のモンスターは俺達を全滅させる訳でも無く、踵を返してジャングルの奥に消えていったのであった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...