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第10章

426話

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「クソッ、流石にはぇーぜ」

 ディングが一瞬だけ後ろを振り向き様子を伺っていた。

 このままだと、追い付かれるな……

 ディングのスピードはかなり早い筈だが、それでも尚中型のスピードの方が上の様だ。

「4……5……6……」

 俺の後方ではバチバチと音が鳴っており、カウントが進む度に大きくなる。

 頼むぞ……

 俺はディングでは無く、チルとリガスを見る。
 二人は中型がディングに食い付いた瞬間に走り出した。

「リガス、私から行く」
「ほっほっほ。承知致しました」

 チルはディングが通るルートまで素早く移動すると、ルートの真ん中で構えを取った。

「後は、来るのを待つだけ」
「ふむ。そう言っている間に来た様ですぞ」

 リガスの言葉と同時に物凄いスピードでチル達が居る場所まで向かって来るディングと中型。

 そこでチルはディングに呟く。

「そのまま、走り去って」
「おう!」

 ディングは走るスピードを緩めず二人の間を駆け抜ける。
 そして、中型もディングの事を追う様に二人の間を抜ける様に猛スピードで走るが、それをチルが邪魔する。

「貴方は行かせない」

 中型が走り抜ける瞬間にチルはカウンター気味に全力で中型の顔面を殴り飛ばした。

 余りの衝撃だったのか中型は動きを止めるしか無かった様だ。
 中型は崩れた態勢を素早く戻して、ディングを追うのを辞めてチルに向き直る。

 ここまでは想定内とは言え、心臓がバクバクするぜ……

 中型はチルの様子を伺い、どうするか考えている感じだ。

「リガス……後はお願いね」
「ほっほっほ。お任せ下さい」

 チルの言葉にリガスが入れ替わる様にして前に出る。

 中型は、このままでは拉致が開かないと思ったのか、ディングから標的を変えてチルやリガスに向かって突進をする。

「7……8……」

 一方、ロピはロピで確実にカウントを進めていく。

 そして、自分達に向かって来た中型をリガスが受け止める。

「カネル!」

 リガスに自身の突進を受け止められて、又もや驚いた雰囲気を発した中型。

「ほっほっほ。それでは、そろそろ貴方にはこの世から退場して頂きましょう」

 リガスはカネルからの第二の盾を発動させる。

「オーハンッ!」

 第二の盾の効果によって、リガスは中型を空中に吹き飛ばしたのである──それも俺達の方に向かって。

 これは俺達が考えた作戦であり、中型をディングの後を追い掛けさせた後に、リガスのオーハンで移動出来ない空中に浮かべて、最後にロピのツェーンショットで仕留める作戦だ。

「ロピ来たぞ」
「9……10……ツェーンショットッ!」
「アタック!」

 こちらに向かって吹き飛んで来る中型に向かってロピは雷弾を放った。

 周りの音を吸収しながら雷弾は中型に向かって真っ直ぐと飛んでいく。

「よし、このまま行けば直撃だな!」

 しかし、雷弾が中型に直撃はしたが、倒す事は出来なかった……
 中型は空中だというのに、身体を整えだと同時にロピの放った雷弾を自身の尻尾によって防いだのであった。

「おいおい……そんなのアリかよ……」

 それはまるで、少しでも自分の体の前に壁を作り、急所に雷弾が到達しない様にしている様子だ。
 その姿は、見た目は違えど人間そのものであり、考え方もまるで人間と同じだ……

 ロピのツェーンショットは、そこら辺にある木であれば何本も貫通する程の威力と貫通力を誇る技だが、どうやら中型に対しては尻尾に風穴を開けるのがやっとの様子だな。

「お、お兄さんどうすればいい?!」
「落ち着け、ロピ」
「で、でもでも、目の前に中型がいるんだよ!?」

 ロピの言う通り、リガスによって吹き飛ばされ、雷弾が直撃した中型が五メートル離れた程の距離にいる。

 しかし、いくら尻尾に寄って雷弾を防いだとしてもロピの攻撃は強烈である。

 中型はツェーンショットにて体内部で電気が流れて一時的な麻痺状態になっている様子だ。

 痺れてその場から動けない中型にロピがどうすれば良いか俺に顔を向けて来た。

「ロピ、次こそ一撃で倒してやれ」
「分かったよ!」

 すると、再びツェーンショットを打つ為にカウントを始めるロピ。
 俺達からしたら、頼もしい、カウントアップだが、敵からしたらこれ程嫌なカウントも無いだろう。

 ロピがカウントを始めた瞬間にある気配を感じた。

 ──ッ!? なんだ?

 本来気配などを読むのが苦手な俺ですら、何か気配を感じる……

「一体なのん気配だ……? もしかしてもう一体モンスタが?」

 どうやら俺だけでは無くここに居る全員が急に現れた気配に困惑している様子だ。

 そして、森の奥からある一体のモンスターが姿を現したのである。

 そのモンスターはこれまた傷だらけのモンスターと同じで少し特徴的な様子であった。

 それは……全身が真っ黒の小さいモンスターが居たのであった……







 
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