上 下
425 / 492
第10章

424話

しおりを挟む
「クソッ……アイツは俺達を舐めているのか……?」

 先程まで少し離れた場所に居たロピやディング達がこちらに戻ってきた様だ。

「チルちゃん、お兄さんは大丈夫?!」
「うん……でも、頭を打ったから安静にさせないと」

 ロピが心配そうな表情を浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。

「お兄さん大丈夫……?」

 ロピに無事な事を伝えようと口を開く。

「あぁ……大丈夫だぞ……ただ、動けるまで……もう少しだけ掛かりそうだ……」

 先程までは声すら出なかったが、時間が経った事で少しずつ話せる様になってきたな……

 そんな様子の変化を見ていたリガス。

「ほっほっほ。どうやら少しずつの様ですがアトス殿が復活して来ている様ですな。それならば、我々はひたすら時間を稼ぎましょう」
「それよりも、逃げた方がいいんじゃないか?」

 ディングは中型から目を離さずに提案をする。

「いえ、それは無理でしょう。あの中型は我々を逃す気がない様ですからな」
「だが、さっきから俺達を見ているだけで、一向に襲い掛かって来ないぞ?」
「恐らく、それは日が完全に落ちるのを待っているのでしょう──日が落ちれば以前同様、自分の独壇場になるでしょうから」

 リガスの言葉にディングや他のオークは達は信じられない様子である。

「流石にモンスター如きがそこまで考えて行動しているのか……?」
「信じられないでしょうが、今までの行動を見ればお分かりになるでしょ?」
「むぅ……うぬ……」

 リガスに言われ、ディングは先程の大木が倒れて来た事を思い出す。

「なら、あの大木が倒れて来たのも、アトスが言った通り、あそこに居る中型が仕掛けた罠だって言うのか?」
「えぇ、恐らくそうでしょう。いつ仕掛けたかは分かりませんが、我々が日没まで帰らない様に仕掛けたのでしょう」

 俺も、リガスの意見に完全に同意だ。あの、中型が俺達を逃がさない為に仕掛けた罠だ……

 それからも、中型は特に動く事も無くジッとこちらの様子を伺っているだけであった。
 試しに、少しだけ全員で移動すると、移動した分だけ中型が距離を縮めるのであった……

 そして、日も大分沈み掛かった時に、俺はやっと身体が動く様になる。

「アトス様、平気ですか? まだ無理しない方が……?」
「いや、大丈夫だ。もう身体が動く、チルありがとう」

 俺はゆっくりとチルに下ろして貰い、今後の事を皆んなと考える。

「このまま、待っても、暗くなるだけだ──だから、中型から逃げるんじゃ無くて、中型を倒すぞ」
「ほっほっほ。その言葉を待っておりましたぞ」
「腕が鳴ります」

 戦闘大好き二人組は俺の言葉を聞くと、早速やる気を漲らせる。

「アトス、アイツを倒すって言っても出来るのか? 普通の攻撃は効かないし、かと言って雷弾の攻撃も避けられちまう」
「そうだよー。私の攻撃が当たらないんだよー」

 確かに、普通に撃っただけでは当たらないかもしれないけど、当てる為の工夫をすればいけるはずだ……

「ディングは、スキルを使用すればあの中型から逃げ切れるか?」
「……分からん。俺のランクはBだがさっきのスピードを見る限り、俺が全力出したらギリギリ追いつくか追いつかれかだと思う」
「そうか……」
「なんでだ?」

 ディングは俺が何かを考えている事に興味を持ち確認して来る。

「いや、もし逃げ切れる様であればディングを囮にして最終的にロビがツェーンショットを撃つ場所たまで誘導して欲しかったんだ」

 俺の言葉に一度目を閉じるディング。

「よし、引き受けよう」
「「「──村長!!」」」

 ディングの言葉に村から、ずっと付いてきた部下達が声を上げる。

「そんな危険な真似はよして下さい」
「そうですよ、貴方にもしものことがあったら、我々だけでオークの村を存続させるのは無理です」

 部下達からの言葉を聞いて、少し嬉しそうにするディングだが、改めて表情を作り直す。

「心配してくれるのはありがたいが、俺はやるぞ? こうして、自分達には関係無いのに手伝ってくれているアトス達が俺達のせいで危険な目にあっているのに、当の本人である俺達が何もやらない訳にはいかんだろ?」
「「「……」」」

 部下達も同じ事を思っていたのか、それ以上反論する事は無かった。

「アトスよ、俺が囮になるから作戦を教えてくれ」
「本当にいいのか? かなり危険だぞ?」
「はは、全く問題無いさ」
「……分かった」

 ディングの決意を感じた俺は急いで、思い付いた作戦を話す。
 俺の作戦にリガスやディングも自分なりの意見を言って、それを取り入れる形で進めていると……

「「「俺達にもせめて、何かやらせてくれ!」」」

 オーク三人がディングと同じ様な表情をしていた。

「ディングさんだけに危険な事はさせられねぇ!」
「そうだ。せめて俺達にも出来る事をさせてくれ!」
「村長の為ならどんな事だってするぜ!」

 三人の決意も、またディング同様に硬い様なので俺は頷き、皆んなで考え、役目を振り分けて行く……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...