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第10章
424話
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「クソッ……アイツは俺達を舐めているのか……?」
先程まで少し離れた場所に居たロピやディング達がこちらに戻ってきた様だ。
「チルちゃん、お兄さんは大丈夫?!」
「うん……でも、頭を打ったから安静にさせないと」
ロピが心配そうな表情を浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。
「お兄さん大丈夫……?」
ロピに無事な事を伝えようと口を開く。
「あぁ……大丈夫だぞ……ただ、動けるまで……もう少しだけ掛かりそうだ……」
先程までは声すら出なかったが、時間が経った事で少しずつ話せる様になってきたな……
そんな様子の変化を見ていたリガス。
「ほっほっほ。どうやら少しずつの様ですがアトス殿が復活して来ている様ですな。それならば、我々はひたすら時間を稼ぎましょう」
「それよりも、逃げた方がいいんじゃないか?」
ディングは中型から目を離さずに提案をする。
「いえ、それは無理でしょう。あの中型は我々を逃す気がない様ですからな」
「だが、さっきから俺達を見ているだけで、一向に襲い掛かって来ないぞ?」
「恐らく、それは日が完全に落ちるのを待っているのでしょう──日が落ちれば以前同様、自分の独壇場になるでしょうから」
リガスの言葉にディングや他のオークは達は信じられない様子である。
「流石にモンスター如きがそこまで考えて行動しているのか……?」
「信じられないでしょうが、今までの行動を見ればお分かりになるでしょ?」
「むぅ……うぬ……」
リガスに言われ、ディングは先程の大木が倒れて来た事を思い出す。
「なら、あの大木が倒れて来たのも、アトスが言った通り、あそこに居る中型が仕掛けた罠だって言うのか?」
「えぇ、恐らくそうでしょう。いつ仕掛けたかは分かりませんが、我々が日没まで帰らない様に仕掛けたのでしょう」
俺も、リガスの意見に完全に同意だ。あの、中型が俺達を逃がさない為に仕掛けた罠だ……
それからも、中型は特に動く事も無くジッとこちらの様子を伺っているだけであった。
試しに、少しだけ全員で移動すると、移動した分だけ中型が距離を縮めるのであった……
そして、日も大分沈み掛かった時に、俺はやっと身体が動く様になる。
「アトス様、平気ですか? まだ無理しない方が……?」
「いや、大丈夫だ。もう身体が動く、チルありがとう」
俺はゆっくりとチルに下ろして貰い、今後の事を皆んなと考える。
「このまま、待っても、暗くなるだけだ──だから、中型から逃げるんじゃ無くて、中型を倒すぞ」
「ほっほっほ。その言葉を待っておりましたぞ」
「腕が鳴ります」
戦闘大好き二人組は俺の言葉を聞くと、早速やる気を漲らせる。
「アトス、アイツを倒すって言っても出来るのか? 普通の攻撃は効かないし、かと言って雷弾の攻撃も避けられちまう」
「そうだよー。私の攻撃が当たらないんだよー」
確かに、普通に撃っただけでは当たらないかもしれないけど、当てる為の工夫をすればいけるはずだ……
「ディングは、スキルを使用すればあの中型から逃げ切れるか?」
「……分からん。俺のランクはBだがさっきのスピードを見る限り、俺が全力出したらギリギリ追いつくか追いつかれかだと思う」
「そうか……」
「なんでだ?」
ディングは俺が何かを考えている事に興味を持ち確認して来る。
「いや、もし逃げ切れる様であればディングを囮にして最終的にロビがツェーンショットを撃つ場所たまで誘導して欲しかったんだ」
俺の言葉に一度目を閉じるディング。
「よし、引き受けよう」
「「「──村長!!」」」
ディングの言葉に村から、ずっと付いてきた部下達が声を上げる。
「そんな危険な真似はよして下さい」
「そうですよ、貴方にもしものことがあったら、我々だけでオークの村を存続させるのは無理です」
部下達からの言葉を聞いて、少し嬉しそうにするディングだが、改めて表情を作り直す。
「心配してくれるのはありがたいが、俺はやるぞ? こうして、自分達には関係無いのに手伝ってくれているアトス達が俺達のせいで危険な目にあっているのに、当の本人である俺達が何もやらない訳にはいかんだろ?」
「「「……」」」
部下達も同じ事を思っていたのか、それ以上反論する事は無かった。
「アトスよ、俺が囮になるから作戦を教えてくれ」
「本当にいいのか? かなり危険だぞ?」
「はは、全く問題無いさ」
「……分かった」
ディングの決意を感じた俺は急いで、思い付いた作戦を話す。
俺の作戦にリガスやディングも自分なりの意見を言って、それを取り入れる形で進めていると……
「「「俺達にもせめて、何かやらせてくれ!」」」
オーク三人がディングと同じ様な表情をしていた。
「ディングさんだけに危険な事はさせられねぇ!」
「そうだ。せめて俺達にも出来る事をさせてくれ!」
「村長の為ならどんな事だってするぜ!」
三人の決意も、またディング同様に硬い様なので俺は頷き、皆んなで考え、役目を振り分けて行く……
先程まで少し離れた場所に居たロピやディング達がこちらに戻ってきた様だ。
「チルちゃん、お兄さんは大丈夫?!」
「うん……でも、頭を打ったから安静にさせないと」
ロピが心配そうな表情を浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。
「お兄さん大丈夫……?」
ロピに無事な事を伝えようと口を開く。
「あぁ……大丈夫だぞ……ただ、動けるまで……もう少しだけ掛かりそうだ……」
先程までは声すら出なかったが、時間が経った事で少しずつ話せる様になってきたな……
そんな様子の変化を見ていたリガス。
「ほっほっほ。どうやら少しずつの様ですがアトス殿が復活して来ている様ですな。それならば、我々はひたすら時間を稼ぎましょう」
「それよりも、逃げた方がいいんじゃないか?」
ディングは中型から目を離さずに提案をする。
「いえ、それは無理でしょう。あの中型は我々を逃す気がない様ですからな」
「だが、さっきから俺達を見ているだけで、一向に襲い掛かって来ないぞ?」
「恐らく、それは日が完全に落ちるのを待っているのでしょう──日が落ちれば以前同様、自分の独壇場になるでしょうから」
リガスの言葉にディングや他のオークは達は信じられない様子である。
「流石にモンスター如きがそこまで考えて行動しているのか……?」
「信じられないでしょうが、今までの行動を見ればお分かりになるでしょ?」
「むぅ……うぬ……」
リガスに言われ、ディングは先程の大木が倒れて来た事を思い出す。
「なら、あの大木が倒れて来たのも、アトスが言った通り、あそこに居る中型が仕掛けた罠だって言うのか?」
「えぇ、恐らくそうでしょう。いつ仕掛けたかは分かりませんが、我々が日没まで帰らない様に仕掛けたのでしょう」
俺も、リガスの意見に完全に同意だ。あの、中型が俺達を逃がさない為に仕掛けた罠だ……
それからも、中型は特に動く事も無くジッとこちらの様子を伺っているだけであった。
試しに、少しだけ全員で移動すると、移動した分だけ中型が距離を縮めるのであった……
そして、日も大分沈み掛かった時に、俺はやっと身体が動く様になる。
「アトス様、平気ですか? まだ無理しない方が……?」
「いや、大丈夫だ。もう身体が動く、チルありがとう」
俺はゆっくりとチルに下ろして貰い、今後の事を皆んなと考える。
「このまま、待っても、暗くなるだけだ──だから、中型から逃げるんじゃ無くて、中型を倒すぞ」
「ほっほっほ。その言葉を待っておりましたぞ」
「腕が鳴ります」
戦闘大好き二人組は俺の言葉を聞くと、早速やる気を漲らせる。
「アトス、アイツを倒すって言っても出来るのか? 普通の攻撃は効かないし、かと言って雷弾の攻撃も避けられちまう」
「そうだよー。私の攻撃が当たらないんだよー」
確かに、普通に撃っただけでは当たらないかもしれないけど、当てる為の工夫をすればいけるはずだ……
「ディングは、スキルを使用すればあの中型から逃げ切れるか?」
「……分からん。俺のランクはBだがさっきのスピードを見る限り、俺が全力出したらギリギリ追いつくか追いつかれかだと思う」
「そうか……」
「なんでだ?」
ディングは俺が何かを考えている事に興味を持ち確認して来る。
「いや、もし逃げ切れる様であればディングを囮にして最終的にロビがツェーンショットを撃つ場所たまで誘導して欲しかったんだ」
俺の言葉に一度目を閉じるディング。
「よし、引き受けよう」
「「「──村長!!」」」
ディングの言葉に村から、ずっと付いてきた部下達が声を上げる。
「そんな危険な真似はよして下さい」
「そうですよ、貴方にもしものことがあったら、我々だけでオークの村を存続させるのは無理です」
部下達からの言葉を聞いて、少し嬉しそうにするディングだが、改めて表情を作り直す。
「心配してくれるのはありがたいが、俺はやるぞ? こうして、自分達には関係無いのに手伝ってくれているアトス達が俺達のせいで危険な目にあっているのに、当の本人である俺達が何もやらない訳にはいかんだろ?」
「「「……」」」
部下達も同じ事を思っていたのか、それ以上反論する事は無かった。
「アトスよ、俺が囮になるから作戦を教えてくれ」
「本当にいいのか? かなり危険だぞ?」
「はは、全く問題無いさ」
「……分かった」
ディングの決意を感じた俺は急いで、思い付いた作戦を話す。
俺の作戦にリガスやディングも自分なりの意見を言って、それを取り入れる形で進めていると……
「「「俺達にもせめて、何かやらせてくれ!」」」
オーク三人がディングと同じ様な表情をしていた。
「ディングさんだけに危険な事はさせられねぇ!」
「そうだ。せめて俺達にも出来る事をさせてくれ!」
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