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第10章

421話

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「魔族さん、どこらへんに居るのー?」
「ふむ。この先ですな──恐らくもう少し近づけばチル様やロピ殿も、分かると思いますぞ?」

 リガスを先頭に俺達はひたすら走る。

 そして、少し移動するとロピとチルが反応する。

「あ! 私にもわかったよー」
「私も分かりました」

 二人も、どうやらリガスが感じた中型の気配を感じ取った様だ。

「リガス! 後どれくらいで遭遇すると思う?」
「ふむ……分かりませぬな……気配に対して近付いているのは確かですが、確実に此処に居ると分かるわけでは無いので……」
「そうか……」

 検討が付かないというリガス。俺は他の二人にも聞くが、リガス同様、気配は感じるが、正確な位置までは把握して無い様子だ。

 大丈夫だろうか……? 俺の心配はますます募って行く。

 それから俺達は暫くの間中型の気配がする方に移動し続けた。

「アトス殿、大分気配が近くなって来ましたので、恐らく居るとしたらこの辺りだと思われます」

 リガスの言葉に俺も集中して気配というモノを探ってみるが、やはり俺には分からなかった。

 しかし、ここまで来ると大分中型の気配が強くなっているのかディング達オーク族も中型の気配を感じ取っている様だ。

「アトス、確実にこの辺りに居るぜ……?」

 ディングは辺りをゆっくりと見回し、中型の姿を探す。

 前回と違い、今は周囲が明るい。ジャングルの木々によって見え辛くはあるが、それでも夜に比べたら断然見やすいだろう。

 それから、俺達はひたすら気配を探って中型の姿を見つける為、傷だらけのモンスターを探して続けた。

「おーい、早く出ておいでー」
「姉さん……そんな風に言っても出て来ないと思うよ?」
「そうかなー?」

 前と同じで、気配はしっかりと有るのに見つける事が出来ない。

 ……このまま、探して続けても前回の二の舞だな。
 今回は早めに切り上げ無いと。

「ふむ。どうやら、前と同じく気配はしますが姿が見当たりませんな……」
「一体どうなっているんだろうねー?」
「ここまで、気配が強いのに何故見当たらないのか不思議です」

 リガスやロピ、チルは首を傾げる。

「ここまで来ると、流石に俺達でも中型の気配がハッキリと分かるが、見当たらねぇーな」

 ディング達も同じく首を傾げる。

 このままでは、また辺りが暗くなる。だが、暗くなってからは、中型の独壇場になってしまうので、俺達は村に戻ることを決意した。

「今から、帰れば何とか日没ギリギリまでには帰れるな?」
「あぁ、問題無い。急げば俺達の村まで日没までには到着する」
「よし、なら帰ろう、見つけられないまま、夜を迎えたら勝ち目は無いからな」

 俺の言葉に反論は出ず、来た道を引き返す事にした。

「あーぁ、今日もダメだったねー」
「なかなか、隠れるのが上手い中型です」

 村に帰る途中にロピが愚痴を零し、それにチルが同意していた。

 他の者達もそれぞれ走りながらも今日の反省点や次はどうすれば中型を見つける事が出来るかの話し合いをしていた。

 皆が完全に帰宅気分で話していると、急にリガスが声を張り上げた。

「皆さん、止まって下さい!」

 急な事だったので一体リガスが何で声を張り上げたのか理解出来た者は居なかった。

 しかし、俺達の目には左右の大木がこちらに向かって倒れて来るのが見えた。

 あ、ヤバい……

 リガスの声に全員が急ブレーキを掛けるが、間に合う筈も無く左右の大木がこちらに向かって倒れる。

 こんなスキルもある様な世界で木くらい大した事無いと思うかもしれないが、この世界での大木は大きさが尋常では無い程大きい為、下敷きになったら、命を落とすか、良くて大怪我だろう……

 ど、どうする!?

 焦る俺と違い、まずリガスが冷静に左右の木の内の一つを対処する。

「カネルッ!!」

 倒れて来る大木に対して、リガスは自ら走り出し、第一の盾で防ぐ。
 そして、そのまま第二の盾を発動させた。

「オーハンッ!」

 カネルで受け止めた大木を向きをズラしてオーハンで吹き飛ばす。
 吹き飛ばした方向はもう一つ倒れて来た大木の方である。

 リガスによって吹き飛ばした大木と倒れて来る大木がお互いぶつかり合い倒れて来る方向がズレて、何とか俺達は無事に済んだ様だ。

「ほっほっほ。皆さんお怪我はありませんか?」

 誰もが今の出来事に唖然としている中、リガスは朗らかな笑顔を浮かべていた。
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