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第10章
417話
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中型の尻尾による攻撃をディングは両手で防ごうとする。
そんな事は無理だと分かっている筈なのに、ディングは逃げない。
そして、ディング達の目の前に巨大な尻尾が迫り、今にでも接触しようとするが……そうはならなかった。
「カネルッ!」
リガスがディングと中型の間に割り込み、攻撃を防ぐ。
流石、リガスだ!
すると、リガスの後を追っていたチルがリガスの横をすり抜けて、中型の脇腹に滑り込む様に移動する。
「アームズ……」
いつもの様に強烈な拳を横腹に突き刺す。
「──ッ!?」
チルの攻撃に中型は驚き、直ぐ様俺達と距離を取る様に離れる。
「7……8……9……10」
ロピの持つ小石からはバチバチと電気が流れる音が辺りに広がる。
そして、ロピは中型に狙いを定めたロピが呟いた。
「ツェーンショット!!」
周囲が暗い中、ロピの放った雷弾だけは眩しい程光を放ち、中型に向かっていく。
中型はロピの放った雷弾を即座に危険なものと判断したのか、向かい受けるのでは無く避ける事を選択した様だ。
「あたれッー!」
ロピの願い虚しくすんでの所で中型は雷弾を避ける。
避けられた雷弾はそのまま大木を貫通し、暗闇に消えていった。
「あー、外しちゃったよ。お兄さん、どうしよ……?」
「いや、問題無い──ロピは直ぐに次の準備を頼む」
「分かったよ!」
ロピは再びスリングショットを構えて、カウントを数え始める。
そして、前方からは先ほど飛び出したオークを連れてディングやチル、リガス達が戻って来た。
「アトス、済まん!」
「今は気にするな! それよりも陣形をッ!」
俺の言葉に頷いたオーク達は直ぐに予定通りの配置につき、武器を構える。
「中型はどこいった?」
「ふむ。どうやら隠れた様ですな」
「隠れた……?」
ここに来て、またしても疑問が頭に浮かんだ。
隠れたって何だ……? 今まで、モンスターと戦って、そんな事があったか?!
俺が考える限り、今まで姿を隠すモンスターなんて遭遇した事が無いし、聞いた事も無い。
「どうなっているんだ……?」
俺の呟きが聞こえたのかチルが口を開いた。
「アトス様、今回の中型は何かおかしいです」
「ふむ。まだ判断するのは早いかもしれませんが、少し違和感がありますな」
「どう言う事だ?」
ディング達、オークはこの状況が特別変だとは感じない様だ。
「移動時に知能があるモンスターが居ると言っただろう?」
「あぁ」
「そんな知能があるモンスターでさえ、ピンチになっても隠れるなんて事はした事が無かったんだよ」
そう、今までこんな事は無かった……
そんな事をしていると、ロピのカウントが止まる。
「あー、だめだ……相手が見えないから数えても意味ないよー。中型はどこに行ったのー?」
「わからない……」
皆で辺りを見回すが、ジャングルという障害物が多い所で、なお夜と言うこともあり気配は感じるものの、どこに潜んでいるかが全く分からない状態だ。
「アトス様、どうしますか? 中型の気配は感じますが、正確な場所まで特定出来ないです」
「リガスはどうだ?」
「ほっほっほ。今回のモンスターは随分と隠れんぼが上手な様ですな、全く分かりませぬ」
俺達の中で気配を読むのが一番上手いリガスですらこのありザマだ。
一旦引くしか無いか……?
考えている暇も無駄だと思った俺は直ぐ様声を上げる。
「一旦引くぞ!」
俺の言葉にロピ、チル、リガスは素直に頷くがオーク達は納得いかないようだ。
「アトス、作戦に文句を言いたい訳では無いのだが、何故ここで引く! 先程の雷弾、剛力、鉄壁の実力をこの目で見て確信したぞ! 中型を倒せる事をな!」
ここに来るまでは、若干顔が強張って居たディングだったが三人の実力を見て、倒せると確信が持てた様だ。
だが、今のこの状況は、なんだか不味い様な気がする……
「ディング! 確かに中型一体なら倒せるが、それは明るい状況での話だ」
「どういう事だ!」
「さっき見てたと思うが、最終的に倒すにはロピによる攻撃が必要だ──しかし、この暗さじゃロピが雷弾を当てる事が困難だ」
そう、ロピの攻撃を最終的には当てないとならない。
普通のモンスターであればこちらに向かって、ただ突っ込んで来るだけなので、夜であっても戦えただろう。
しかし、今回のモンスターはロピの攻撃を見て一瞬で危険な事を理解して、姿を隠している。
このまま攻撃を仕掛けて来るかは不明だが、今は攻撃をして来て無い為、撤退するなら今だ。
ディング達に素早く状況を説明すると、なんとか納得してくれたので、俺達は暗闇に乗じてその場を撤退する。
陣形が崩れない程度の速さで移動する俺達だったが……
「……ふむ」
「魔族さん、どうしたのー?」
「恐らく……我々を追って来て居ますな……」
「「「「!?」」」」
リガスの言葉に緊張が走った……
そんな事は無理だと分かっている筈なのに、ディングは逃げない。
そして、ディング達の目の前に巨大な尻尾が迫り、今にでも接触しようとするが……そうはならなかった。
「カネルッ!」
リガスがディングと中型の間に割り込み、攻撃を防ぐ。
流石、リガスだ!
すると、リガスの後を追っていたチルがリガスの横をすり抜けて、中型の脇腹に滑り込む様に移動する。
「アームズ……」
いつもの様に強烈な拳を横腹に突き刺す。
「──ッ!?」
チルの攻撃に中型は驚き、直ぐ様俺達と距離を取る様に離れる。
「7……8……9……10」
ロピの持つ小石からはバチバチと電気が流れる音が辺りに広がる。
そして、ロピは中型に狙いを定めたロピが呟いた。
「ツェーンショット!!」
周囲が暗い中、ロピの放った雷弾だけは眩しい程光を放ち、中型に向かっていく。
中型はロピの放った雷弾を即座に危険なものと判断したのか、向かい受けるのでは無く避ける事を選択した様だ。
「あたれッー!」
ロピの願い虚しくすんでの所で中型は雷弾を避ける。
避けられた雷弾はそのまま大木を貫通し、暗闇に消えていった。
「あー、外しちゃったよ。お兄さん、どうしよ……?」
「いや、問題無い──ロピは直ぐに次の準備を頼む」
「分かったよ!」
ロピは再びスリングショットを構えて、カウントを数え始める。
そして、前方からは先ほど飛び出したオークを連れてディングやチル、リガス達が戻って来た。
「アトス、済まん!」
「今は気にするな! それよりも陣形をッ!」
俺の言葉に頷いたオーク達は直ぐに予定通りの配置につき、武器を構える。
「中型はどこいった?」
「ふむ。どうやら隠れた様ですな」
「隠れた……?」
ここに来て、またしても疑問が頭に浮かんだ。
隠れたって何だ……? 今まで、モンスターと戦って、そんな事があったか?!
俺が考える限り、今まで姿を隠すモンスターなんて遭遇した事が無いし、聞いた事も無い。
「どうなっているんだ……?」
俺の呟きが聞こえたのかチルが口を開いた。
「アトス様、今回の中型は何かおかしいです」
「ふむ。まだ判断するのは早いかもしれませんが、少し違和感がありますな」
「どう言う事だ?」
ディング達、オークはこの状況が特別変だとは感じない様だ。
「移動時に知能があるモンスターが居ると言っただろう?」
「あぁ」
「そんな知能があるモンスターでさえ、ピンチになっても隠れるなんて事はした事が無かったんだよ」
そう、今までこんな事は無かった……
そんな事をしていると、ロピのカウントが止まる。
「あー、だめだ……相手が見えないから数えても意味ないよー。中型はどこに行ったのー?」
「わからない……」
皆で辺りを見回すが、ジャングルという障害物が多い所で、なお夜と言うこともあり気配は感じるものの、どこに潜んでいるかが全く分からない状態だ。
「アトス様、どうしますか? 中型の気配は感じますが、正確な場所まで特定出来ないです」
「リガスはどうだ?」
「ほっほっほ。今回のモンスターは随分と隠れんぼが上手な様ですな、全く分かりませぬ」
俺達の中で気配を読むのが一番上手いリガスですらこのありザマだ。
一旦引くしか無いか……?
考えている暇も無駄だと思った俺は直ぐ様声を上げる。
「一旦引くぞ!」
俺の言葉にロピ、チル、リガスは素直に頷くがオーク達は納得いかないようだ。
「アトス、作戦に文句を言いたい訳では無いのだが、何故ここで引く! 先程の雷弾、剛力、鉄壁の実力をこの目で見て確信したぞ! 中型を倒せる事をな!」
ここに来るまでは、若干顔が強張って居たディングだったが三人の実力を見て、倒せると確信が持てた様だ。
だが、今のこの状況は、なんだか不味い様な気がする……
「ディング! 確かに中型一体なら倒せるが、それは明るい状況での話だ」
「どういう事だ!」
「さっき見てたと思うが、最終的に倒すにはロピによる攻撃が必要だ──しかし、この暗さじゃロピが雷弾を当てる事が困難だ」
そう、ロピの攻撃を最終的には当てないとならない。
普通のモンスターであればこちらに向かって、ただ突っ込んで来るだけなので、夜であっても戦えただろう。
しかし、今回のモンスターはロピの攻撃を見て一瞬で危険な事を理解して、姿を隠している。
このまま攻撃を仕掛けて来るかは不明だが、今は攻撃をして来て無い為、撤退するなら今だ。
ディング達に素早く状況を説明すると、なんとか納得してくれたので、俺達は暗闇に乗じてその場を撤退する。
陣形が崩れない程度の速さで移動する俺達だったが……
「……ふむ」
「魔族さん、どうしたのー?」
「恐らく……我々を追って来て居ますな……」
「「「「!?」」」」
リガスの言葉に緊張が走った……
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