416 / 492
第10章
415話
しおりを挟む
夜の静まり返った場所に聞こえる音は複数の寝息と、虫の声、そして木々が風によって擦れる音だけであった。
そんな三つの音に一つの音がプラスされた。
「アトスよ、見張り交換の時間だ」
ディングに声を掛けられて目が覚める。
夜の見張りとして四人ずつ交代制にした──どうやら見張りの時間になった様でディングが起こしに来てくれた様だ。
「あ、あぁ……今起きる……」
野宿と言う事もあり、熟睡なんて出来る筈も無いので俺は直ぐに身体を起こす事が出来た。
周りを見ると、既にリガスとチルは起きており、見張りに立つ為の準備を手早くしている。
そして、俺は自分が寝ていた場所の隣に視線を向ける。
「むにゅ……あはは……お肉があるよ……」
夜ご飯は、とても質素であり育ち盛りのロピには足りなかったのだろう……ロピは夢でもご飯を食べている様だ。
「うふふ、これはお兄さん……そっちはチルちゃん……魔族さんはそれ……そして……私はこの大きなヤツだよ……」
とても、幸せそうな表情と寝言に起こすのが申し訳ないが、俺は心を鬼にしてロピを起こす。
「ロピ、起きろ……見張りの時間だぞ」
身体を軽く揺するが、起きる気配は無い。
「ほら、起きないと皆んなが迷惑するから、起きなさい」
次は少し強めに揺する。
「あはは……お兄さん……そんな所触っちゃダメだよ……」
一体どんな夢を見ているのやら……
すると、後ろに誰かが立つ気配を感じて、後ろを振り向くと、そこにはチルが立っていた。
「アトス様、お任せください」
そう言って、何故だか少し怒っている様子のチルは手早く姉の目の前まで歩き、得意のチョップを姉のデコに落とす。
「──ッイデ!」
チョップした後は、何事も無かった様に再び見張りの準備を行なっていた。
「な、なんか痛い……なんでー?」
「ロピ、おはよう……み、見張り時間だから用意しなさい」
「見張り……? うん、分かった……用意する……」
まだ、半分寝ぼけているが、もそもそと起き出して準備を始めるロピ。
素早く準備を整えて、俺達はディング達と見張りを交換する。
「異常の方は?」
「いや、今の所は何も無しだ」
「そうか、なら後は俺達が引き受ける」
「頼む」
それだけ、言葉を交わし、見張りを交換する俺とディングであったが急に大きな揺れを感じた。
「「──ッなんだ?!」」
大きな揺れに驚きながらも、俺とディングは一瞬で腰を落とし周囲の状況を確認する。
「お、お兄さん無事?!」
「あぁ、大丈夫だ! 他の皆んなも無事か?!」
俺の言葉に次々と返答があり、全員無事な事を確認する。
「リガス! さっきの揺れは何か分かるか?!」
「ふむ。説明する必要は、どうやら無い様ですぞ!」
リガスの言葉を聞くのと同時に、目の前から大きな物体が近付いて来るのが分かった。
最初は夜という事もあり、見え辛かったが、その姿は次第に大きくなり今ではハッキリと見える。
中型か……
「中型が現れたぞッ!!」
ディングの声に緊張が走る。
そして、次第に暗闇に目が慣れて来たのか中型の姿がハッキリと見える様になる。
「お、おいアトスよ……なんだ……あれは……?」
中型の様子を見たディングがポツリと呟く。
他の者達も中型を見て、開いた口が塞がらない様だ。
なんだ、あの中型は……?
俺の目に映っている中型は異様であった。別に形が変形していたり普通のモンスターと異なっていたりなど、変異型って訳では無い。
ただ、変異型と同じくらいインパクトが有るのは確かである。
なんとその中型は傷だらけであった。
その傷は身体のあっちこっちにある。
「あんな異様な姿のモンスターは初めてだぞ……」
ディングの言う通り、異様過ぎる。何故、あんなにも複数の傷があるのかは謎だが、中型の身体に刻まれた傷は無数にあり、むしろ傷が無い箇所を見つける方が大変である。
「ディ、ディングさん! どうすりゃいい?!」
「と、突撃か?」
ディングの部下である四人のオーク達が慌てる様にしてディングに指示を仰ぐ。
恐らく、中型を見るのが初めてだったのだろう、オーク達は武器を構えつつもも腰は引けていた。
「アトス、どうする!?」
ディングも流石に中型を相手にするのは初めてなのか、どうすれば良いか分からない様だ。
「ディング、一度皆んなを一箇所に集めてくれ」
「分かった!」
俺の言葉にディングは大声を上げて、皆んなに集まる様に指示を飛ばした。
その間、俺は中型を観察するが、既にこの時点でおかしい事がある。
この中型なんで襲って来ないんだ……?
ハッキリ言えば、中型からすれば今が、絶好のチャンスだろう。
ロピ、チルとリガスはこれまでの経験から中型に標的にされても、なんとかなるだろう。
しかし、オーク達は別だ──今まで小型しか相手にして来た事が無い為、非常に困惑している様子である。
恐らく今なら直ぐにでも捕食可能だろう……しかし、中型は特に襲い掛かって来る様な事はせず、姿を現してからはずっと俺達の方をずっと見ているのであった……
そんな三つの音に一つの音がプラスされた。
「アトスよ、見張り交換の時間だ」
ディングに声を掛けられて目が覚める。
夜の見張りとして四人ずつ交代制にした──どうやら見張りの時間になった様でディングが起こしに来てくれた様だ。
「あ、あぁ……今起きる……」
野宿と言う事もあり、熟睡なんて出来る筈も無いので俺は直ぐに身体を起こす事が出来た。
周りを見ると、既にリガスとチルは起きており、見張りに立つ為の準備を手早くしている。
そして、俺は自分が寝ていた場所の隣に視線を向ける。
「むにゅ……あはは……お肉があるよ……」
夜ご飯は、とても質素であり育ち盛りのロピには足りなかったのだろう……ロピは夢でもご飯を食べている様だ。
「うふふ、これはお兄さん……そっちはチルちゃん……魔族さんはそれ……そして……私はこの大きなヤツだよ……」
とても、幸せそうな表情と寝言に起こすのが申し訳ないが、俺は心を鬼にしてロピを起こす。
「ロピ、起きろ……見張りの時間だぞ」
身体を軽く揺するが、起きる気配は無い。
「ほら、起きないと皆んなが迷惑するから、起きなさい」
次は少し強めに揺する。
「あはは……お兄さん……そんな所触っちゃダメだよ……」
一体どんな夢を見ているのやら……
すると、後ろに誰かが立つ気配を感じて、後ろを振り向くと、そこにはチルが立っていた。
「アトス様、お任せください」
そう言って、何故だか少し怒っている様子のチルは手早く姉の目の前まで歩き、得意のチョップを姉のデコに落とす。
「──ッイデ!」
チョップした後は、何事も無かった様に再び見張りの準備を行なっていた。
「な、なんか痛い……なんでー?」
「ロピ、おはよう……み、見張り時間だから用意しなさい」
「見張り……? うん、分かった……用意する……」
まだ、半分寝ぼけているが、もそもそと起き出して準備を始めるロピ。
素早く準備を整えて、俺達はディング達と見張りを交換する。
「異常の方は?」
「いや、今の所は何も無しだ」
「そうか、なら後は俺達が引き受ける」
「頼む」
それだけ、言葉を交わし、見張りを交換する俺とディングであったが急に大きな揺れを感じた。
「「──ッなんだ?!」」
大きな揺れに驚きながらも、俺とディングは一瞬で腰を落とし周囲の状況を確認する。
「お、お兄さん無事?!」
「あぁ、大丈夫だ! 他の皆んなも無事か?!」
俺の言葉に次々と返答があり、全員無事な事を確認する。
「リガス! さっきの揺れは何か分かるか?!」
「ふむ。説明する必要は、どうやら無い様ですぞ!」
リガスの言葉を聞くのと同時に、目の前から大きな物体が近付いて来るのが分かった。
最初は夜という事もあり、見え辛かったが、その姿は次第に大きくなり今ではハッキリと見える。
中型か……
「中型が現れたぞッ!!」
ディングの声に緊張が走る。
そして、次第に暗闇に目が慣れて来たのか中型の姿がハッキリと見える様になる。
「お、おいアトスよ……なんだ……あれは……?」
中型の様子を見たディングがポツリと呟く。
他の者達も中型を見て、開いた口が塞がらない様だ。
なんだ、あの中型は……?
俺の目に映っている中型は異様であった。別に形が変形していたり普通のモンスターと異なっていたりなど、変異型って訳では無い。
ただ、変異型と同じくらいインパクトが有るのは確かである。
なんとその中型は傷だらけであった。
その傷は身体のあっちこっちにある。
「あんな異様な姿のモンスターは初めてだぞ……」
ディングの言う通り、異様過ぎる。何故、あんなにも複数の傷があるのかは謎だが、中型の身体に刻まれた傷は無数にあり、むしろ傷が無い箇所を見つける方が大変である。
「ディ、ディングさん! どうすりゃいい?!」
「と、突撃か?」
ディングの部下である四人のオーク達が慌てる様にしてディングに指示を仰ぐ。
恐らく、中型を見るのが初めてだったのだろう、オーク達は武器を構えつつもも腰は引けていた。
「アトス、どうする!?」
ディングも流石に中型を相手にするのは初めてなのか、どうすれば良いか分からない様だ。
「ディング、一度皆んなを一箇所に集めてくれ」
「分かった!」
俺の言葉にディングは大声を上げて、皆んなに集まる様に指示を飛ばした。
その間、俺は中型を観察するが、既にこの時点でおかしい事がある。
この中型なんで襲って来ないんだ……?
ハッキリ言えば、中型からすれば今が、絶好のチャンスだろう。
ロピ、チルとリガスはこれまでの経験から中型に標的にされても、なんとかなるだろう。
しかし、オーク達は別だ──今まで小型しか相手にして来た事が無い為、非常に困惑している様子である。
恐らく今なら直ぐにでも捕食可能だろう……しかし、中型は特に襲い掛かって来る様な事はせず、姿を現してからはずっと俺達の方をずっと見ているのであった……
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚
ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。
原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。
気が付けば異世界。10歳の少年に!
女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。
お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。
寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる!
勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる