過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

第10章

412話

　朝日が登り、窓から溢れる日光が俺の顔に当たり、目が覚める。

「朝か」

　誰かに起こされる前に目が覚めた為、寝具から静かに起き上がり、着替える事にする。

　部屋の外からは、既に生活音がする。

　うーん、今日は中型との戦闘があると言うのに随分落ち着いているな。

　周りの音が耳に入ってくる。

　
　朝という比較的静かな状況は情報量が少ない為、情報過多にならず頭の整理がしやすいのでありがたい。

　静かな朝の一時を優雅に堪能していると、扉がノックされた。

「アトス様朝でございます。入ります」

　静かなノックの後に、ゆっくりと扉が開き、チルが入って来た。

「おはようございます。お目覚めでしたか」

　着替えを済ませた俺を見たチルはどこか残念そうな様子でジッと俺の姿を見ていた。
　少ししてから、いつのものチルに戻る。

「今日は中型討伐日ですね」
「あぁ、そうだな」
「体調の方は如何ですか？」
「特に問題ないな」

　自身の調子を聞かれた俺は肩を回したりと、自分の体調について色々確認するが、特に悪い所は無さそうだ。

「それでは、着替えが終わったら居間に来て下さい」

　それだけ言ってチルは部屋を出ていく。

　手早く着替えを終えて、部屋を出ると、直ぐにどこからも無く、良い匂いが嗅覚を刺激する。

「なんだか、急にお腹が減って来たな……」

　匂いはディング宅に充満して、何処に居ても空腹を誘う。
　そんな、匂いを元である居間にたどり着くと、テーブルには理想の朝ごはんが立ち並んでいた。

「アトスおはよう」
「あぁ、ディングおはよう」
「昨日はよく寝られたか？」
「あぁ。お陰様でよく寝れたよ」

　俺は空いている席に座る。
　すると、両手に大皿を持ってリガスが登場した。

「ほっほっほ。アトス殿おはようございます──調子はどうですかな？」
「リガス、おはよう。調子はまずまずって所かな」
「ふむ。それは良かった──それでは私が用意したものを食べて、さらに調子を上げてもらいたいですな」

　リガスの手作り料理がテーブルの上に次々と立ち並ぶ。
　まだ、朝だと言うのに豪華な品目達に目を奪われつつ、未だ手を付けずにいる。

　少しすると、妹のチルに引きずられる様にしてロピが登場した。

「ふぁ～、みんなおはよう～」

　目を擦り、妹の手を握り、そして引っ張られているロピ。

　今の様子を見ると少し頼りなさそうだが今回の中型を倒すのに必要な人材であり、今回の作戦のメインを担当すると言っても過言では無い。

　まだ、半分寝ているのか席に座った後は妹の肩に頭を置いて、二度寝を試みようとしている所をチルに注意される。

「姉さん、起きないとダメッ」
「あはは……分かっている……分かっている……」

　あの表情は分かっていないな……

　姉の眠気を覚まさせる為に、いつも通り頭にチョップを与えて、強制的に覚醒させる。

「痛い……」
「起きた？」
「うん……」
「ご飯だよ？　食べる？」
「うん！」

　食卓に全員が揃い、食べ始める。

「魔族さん、これ美味しいよ！」
「ほっほっほ。ありがとうございます」
「確かに、これはうめぇーな。流石リガスだぜ」
「料理はリガスの特技です」
「ほっほっほ。皆さんありがとうございます」

　俺達はいつも通りの朝を過ごす様に朝食を食べるが、ディングの表情が優れない。

「ディングどうした？」
「あ、あぁ……ちょっと、緊張してな……」
「緊張……？」
「あぁ、相手は中型だ……俺の村の仲間は、あのクソ野郎のせいで人数が大分減ってしまった……それなのに更に仲間が減ると考えるとな……」

　なるほど……確かにそうだよな……自分の大切な仲間を失うのは何より怖いだろう……
　俺が、三人を失ったと考えたら……うん、生きていけないかもな……

　俺は、なんて言ったら良いか考えていると、ロピが口を開く。

「あはは、何心配しているのー？」

　ロピが笑う。

「私達が居るんだからそんな心配無駄だよ？　それになんて言っても私達にはお兄さんが居るから、心配するだけ損だよ？」
「ほっほっほ。ロピ殿の言う通りですな、我々が居ればそんな心配不要ですぞ？」
「はい。アトス様が居れば、どんな事があっても心配ないです」

　三人があまりにも心配無いと言い切るのがおかしかったのかディングも大声で笑う。

「がはははは、そうか……そうだな。俺は何を似合わず悩んでいたんだ」

　ディングの表情に力が宿る。

「よーし、お前達のお陰で安心したら、急にお腹が減って来たぞ！」

　そう言って、ディングはロピに負けないくらいの食いっぷりで、リガスの作った最高の料理を食べ、あっという間に平らげたのであった……