過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第10章

410話

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 ディングの話を詳しく聞くと、どうやら、最近になって村から少し離れた場所に中型が住み着いてしまったらしい。

「他のモンスターとかは居ないのー?」
「あぁ、俺達が確認した限りではその中型が一体、陣取っているだけで他は見当たらない」

 なら、その中型さえ倒す事が出来れば解決だな。

「ディング、今のオーク達の戦力はどんな感じなんだ?」
「そうだな……」

 ディングが顎に手を添えて、出せる兵力を考えている様子だ。

「何かあった時の為に、戦闘員を何人か村に残して、後は全て注ぎ込むとしたら……俺を合わせて五人は確保可能だ」

 五人か……恐らく問題ないだろう。

「分かった。それだけ居れば問題無く討伐可能だと思う」
「なにッ、本当か?!」

 俺が呆気なく討伐可能と口を開いた事にディングは驚いていた。

「ア、アトスよ……以前の事もあるからお前の実力を疑う訳では無いのだが、本当にこれだけの戦力で中型を討伐するのは可能なのか?」
「あぁ、問題無いと思うぞ」

 中型の討伐適正人数は十人以上と言われている為、俺達合わせて九人しか居ない状況でディングは信じられない様子であった。

「恐らく、ロピが居れば問題無く倒せると思うから、ディング達には中型の注意を惹きつけていて欲しいんだ」
「この嬢ちゃんが一人で倒すのか……?」

 横目でロピを見るディングだが、その視線を受けてロピは椅子から立ち上がる。

「あっははははは。任せてよ! 私が一撃で倒してあげるんだから!」

 急に大口を開いて笑い始めるロピにディングが心配そうに俺の方を見る。

「ディング、雷弾って言葉を聞いた事は?」
「あ、あぁ……あるぞ。ここ最近有名だよな──つい最近は炎弾と互角の戦いをしたって聞いたし、前に聞いたのは中型を一撃で倒したなんて言うのも聞いたことがある。遠距離最強とも聞くな」

 なるほど、ロピの武勇伝は既にここまで広がっているのか。

 ディングの言葉で気を良くしたのか、ロピは更に大声で笑い身体を後ろに反る。

「あっはははははは。私もここまで有名になったんだね!」
「姉さん、素敵!」
「あはは、私は世界一強いお姉ちゃんだからね!」

 ロピは笑い、チルはそんな姉をキラキラした目で見る。

 唯一、状況が掴めていないディングだけが取り残された様な顔付きで俺達を見回していた。

「ディングの知っている噂の雷弾が、そこで大笑いしているロピだ」
「──ッ!?」

 俺の言葉に再びロピに視線を向けるディング。
 その視線の先には、あまりにも大声で笑いすぎたのか、咳き込んでいるロピと、そんな姉を心配そうにして背中をさすって上げているチルが居た。

「……アトス、本当にあの嬢ちゃんが雷弾なのか?」

 訝しげに見るディングに俺はなんとか頷く。

「あ、あぁ。今はあんな感じだが戦闘になれば……大丈夫……なはず……」
「今の少しの間はなんだ?」
「心配するな……」

 俺もディング同様にロピを横目で見る。

「オェッ、ゴホッゴホッ。う~、笑いすぎたよー」
「姉さん、大丈夫?」
「うん……チルちゃんが背中をさすってくれたから大分楽になったよ」
「無理しないでね?」

 とても、中型を倒せる様には見えないけど、ロピは確かに倒せる実力があるんだ!

 誰に力説するのでも無く、俺は心の中でロピにフォローを入れる。

「そ、それじゃ……早速明日にでも中型を討伐しに行きたいのだがいいか?」
「あぁ、もちろんだ」
「ほっほっほ。腕が鳴りますな──あの戦いから戦闘は一切してないので身体が鈍ってしょうがないです」
「リガスの言う通り。私も、戦闘が足りない……もっと強くならないと!」

 姉の看病が終わったのか、チルが戻って来て、会話に入って来た。
 少し離れた場所でロピがチルに向かって手を出す。

「チ、チルちゃん……? お姉ちゃんはまだ重症だよ……?」

 妹の背中に手を伸ばし、戻って来る様に呟くロピであったが、チルには聞こえてない様で、リガスと一緒にディングに中型の大体の居場所を確認していた。

「チ、チルちゃ~ん……お姉ちゃんはココだよ?」

 チルの反応は無い。

「ゴホッ! オホッゴホ……私、もうダメかも……ゴホッ!」

 ワザとらしく咳き込み、横目でチルの様子を確認する。
 すると、チルがこちらに向き直し歩いて来る。

「チ、チルちゃん……やっぱり私の事を……うぅ……優しい」

 笑顔で待ち受けるロピだったが……チルが向かった先は俺の方だった……

「アトス様、明日の事について話し合いましょう。こちらに来て下さい」
「あ、あぁ……」
「チル……ちゃん? 私は?」
「姉さんは、咳き込んでいるから、こっち来ないで。アトス様に移るといけないから、そこに居て」
「「……」」

 恐らく悪気は無いのだろう。純粋に姉の事を心配したチルの言葉なのだろう……

「では、先にいってます」

 俺は打ちのめされているロピを盗み見る。

「……お兄さん……チルちゃんに取って私は何だろう……?」
「……」
「チルちゃんは戦闘狂なの……?」

 ひ、否定出来ない……チルがいつから、あんなに戦闘好きになったか分からない──だが、リガス同様、戦闘に魅了されているのは確かだな……

「……ロピ──」
「──私負けない! 絶対チルちゃんを取り返してみせるよ!」
「あ、あぁ……」

 何やらロピの中でスイッチが入った様だった……

 こうして、俺達は明日、中型を討伐する事にした……
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