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第10章

409話

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「そうか、そんな事になっていたのか……」

 俺はディングに今の現状を伝えた。

「確かに、エルフの長から何度も文が届いていた。内容も人間族と戦う協力をして欲しいと書いてあったな」
「そうだよー。大鎌さんは皆んなに協力求めてたのに、なんで助けてくれなかったのー?」

 ロピが思っている事を率直に口にした。

「むぅ……それを言われると、困るな」

 普段は、些細な事を気にしなさそうなディングが申し訳無さそうにする。

「アトス達が絡んでいた分かっていれば、無理してでも協力をしていたんだがな……」

 ディングの言葉が嬉しくもあるが、もし仮に炎弾との戦いでオーク達が居れば被害はもっと抑えられただろう……

「今回、ディングにはお願いがあって来た」
「……」
「実は、これから更に大きな戦いがある──相手は分かっている思うが人間族であり、それも全兵力が投入してくる。だからその戦いにディング達オーク族も参加して貰いたい」

 俺はディングに向かって頭を下げると、それに従い隣に座っていたロピとチル、リガスも一緒になって頭を下げる。

 その様子を見たディングが慌てた様子で口を開く。

「や、やめろ。俺はお前達に一度救われた身だ──そんな風に頭を下げなくても協力はするつもりだ!」
「本当かッ!?」
「あぁ。もちろんだ」

 ディングの言葉に俺達は喜ぶ。

 そして、俺は炎弾達の戦いで感じた違和感の一つが、今この瞬間に分かった。

「あッ!?」

 俺の驚いた表情に皆が注目する。

「アトス様、どうされたのでしょうかー?」

 皆んなが心配する中、俺は頭を掻き毟る。

「クソー、なんであの時、気がつかなかったんだよ……」
「お兄さん、どうしたのー?」

 ロピの声に俺は応える。

「実は炎弾達と戦った時、相手側には人間族と二つの種族が居た」
「二つの種族だと?」

 ディングが聞き返して来る。

「あぁ、オーガ族と……ゴブリン族だ」
「ッ!?」
 
 俺が言った種族を聞いてディングの表情が険しくなるのを感じる。

「仲間の報告では、ゴブリンを率いていた者はグダと名乗った様だ」
「ほぅ……アイツか……」

 ディングの口元がニヤける。

「あの裏切り者が生きていたか……がははは、アトスよ我々オーク族は、戦いに参加するぞ! ──なんとしても、あのクソ野郎をぶち殺して仲間達を弔う」

 以前、グダというゴブリンの策略によってディング達の仲間が大勢殺された。
 その際のディングの悲しみは想像を絶する程のものだろう。

 ディングはいつか仇を取りたいと思っていのだろう。
 グダの話を聞いた瞬間から様子が少し変わった。

「直ぐ協力しよう! と言いたい所なんだけどな……」

 今にも、飛び出した人間族の住処に突っ込んで行きそうな様子のディングだったが、急に歯切れの悪い感じで言葉を切るディングが気になった。

「何かあったのか?」

 俺の質問にディングは押し黙る。

「ちょっと……な」
「何があった?」
「いや、これは俺達オーク族の問題だから気にしないでくれ」
「いや、ディングには一日でも早く戦いに集中してもらえる為に俺達で協力出来る事があれば手伝うぞ?」

 俺の協力の申し出を聞いてディングは決意した様に口を開ける。

「実は……村の近くの場所で少し前からモンスターが住み着いてしまった……」 

 忌々しそうな表情を浮かべる。

 ん? モンスターの、一体くらいであれば、いくら少ない人数でも下手したらディング一人で討伐可能だろう──しかし、そうでは無いのだろう。

「モンスターは沢山いるのか?」

 ディングが首を振る。

「いや、住み着いたのは一体だけだ」
「一体だけならそのモンスターを、倒しちゃえば、いいんだよ!」 

 ロピがディングに対して思った事を再び口にする。

「俺も、出来ればそうしたかったが……出来なかった」
「どういう事だ?」
「……住み着いたモンスターは中型だ。あの裏切り者に殺された仲間達が居れば、もしかしたら何とか出来たかもしれない──いや……仲間が居たとしても中型相手では分が悪かったな」

 どうやら、ディングは人間族達との戦争に参加するのは問題無いが、村の近くに中型が住み着いてしまった為、もしなんかあった場合、子供や年寄りなどを避難、或いは守る為には村を離れるわけにはいかない様だ。

「だから、済まない。少しでも早く中型を倒せる為の案を考えて俺達、オーク族も戦いに参加出来る様に努力する」

 ディングが申し訳無さそうにする。俺は直ぐ様、隣に居た皆んなの方を見ると、三人はそのまま、ゆっくりと頷いた。

 はは、流石、俺の家族だな……考える事は皆んな一緒だ。

 心が通じ合っている事を嬉しく思いながら俺はディングに対して口を開く。

「ディング、俺達が中型討伐に協力するぜ!」

 その言葉を聞いたディングは目を見開くのであった……
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