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第10章

403話

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 今日の俺達の予定は復興作業の手伝いだ。

「人って、すげぇーな……」

 俺は目の前の光景を見ながら呟く。

「ほっほっほ。いきなりどうされましたかな?」
「いや……あんな事があったばかりなのに、直ぐに復興作業を初めているのを見てすげぇーなって……」
「ふむ。確かに……戦いには勝ったとは言え被害的な状況を見ると、人間族より我々の方が大きいですからね……」

 人員的な被害はお互い同じ位だろうが、こちらは村を戦場にしてしまった。

 あれ程、木々に囲まれていたエルフの村は、炎弾の攻撃により丸焦げである。

「大分、見晴らしが良くなったな……」
「そうですね……ですが、半年もすれば元通りになるでしょうからあんまり気にする必要も無いでしょう」

 どうやら、この世界では木々の育つスピードが異常に速いらしく、村全面が焼け野原になっていたとさても半年で全て元に戻る様だ。

 そして、現在は戦いで比較的軽症なエルフとドワーフ達が復興作業に励んでいる。

 見ているだけで、生きる力を貰える気がする程、エルフやドワーフ達には生命力を感じた。

 しかし、どうしたって人員が不足している為、復興スピード自体は遅い。

「ほっほっほ。アトス殿見てください──あそこでチル様とロピ殿が頑張っていますよ?」

 リガスに言われて顔を動かすと、そこにはエルフやドワーフ達と一緒に復興作業をしている二人の姿が見えた。

「チルちゃん凄ーい!」
「私のスキルなら、もっと持てるよ?」

 チルが大きな丸太を十本程一気に持って、ロピを始め、皆を驚かせていた。

「あはは、流石私の妹だよ! 皆んなー、これが私の妹なんだよー?」

 妹の活躍が嬉しかったのかロピは全員に喧伝する様に大声でチルの自慢を始める。

「ね、姉さん……やめて……恥ずかしい……」

 姉のロピとは違って、チルは注目されるのが恥ずかしかったのかササっと移動して丸太を持っていくのであった。

「二人共、元気で良かった」
「ほっほっほ。ですな──どれ、私もお手伝いをしてきましょうかね。ご主人様だけに働かせては、執事としての名が泣きますからな」
「あぁ、リガスが参加すれば更に助かるだろう」
「ほっほっほ。褒めすぎですよ。アトス殿はここでノンビリしていて下さい」

 そう言って、リガスはチルとロピの所に移動していった。

「クソ……俺も片腕を失って無かったらな……」

 俺は、ソコにあるはずの無い腕を摩る様な仕草をする。

「はは、でもこの腕があったら今頃ロピやチル、リガス達が居なくなってたかもしれないから、結果オーライだな」

 少しの後悔をした後に直ぐにコレで良かったという気持ちになる。

「まぁ……でも、何もやらないって言うのは少し気まずいな……」

 皆んなが必死に働いているのに自分だけがボーッとしているのが非常に申し訳ない様な気持ちになり、ソワソワし始める。

「な、何かやった方がいいよな……」

 余りにもオロオロした雰囲気が出て来たのか、ドワーフ達が話しかけて来た。

「がはは、隻腕よ何をしている?」
「あ、あぁ……自分が出来る仕事が無いか探しているんだが、何も無くてなッ……」

 俺の言葉にドワーフ達は無言で隻腕と無い腕を交互に見る。

「……隻腕よ、ハッキリ言おう……」

 ドワーフの一人が非常に言い辛そうに口を開く。

「隻腕の気持ちは、とても有難い。だが、復興作業には力が居る……だから隻腕は無理せず見ていてくれればいい」
「分かった……」

 そうだよな……こんな俺に出来る事は少ない。
 別に落ち込んでいる訳では無い、この事は既に自身で納得している。

「隻腕よ……だが、一つだけ言わせてくれ──俺達はお前に本当に感謝しているんだよ」
「あぁ、そうさ! 本当に感謝しているぜッ!」
「あの、不思議な光は隻腕がやったって聴いたぜ? あの光があったから俺達はは助かったぜ!」

 ドワーフ達が次々と感謝をしてくれた。
 戦闘が終わってからも、かなり感謝されたが、ここでも同じ様に感謝される。

「隻腕が居なければ、家族達にだって会えなかった! だが、今はこうして生きている!」
「あぁ、そうだ。隻腕の戦場の働きを考えたら、復興作業が出来ないからってなんなんだ! って感じだぜ」
「隻腕はそこで村が復興していく様子を 見ていてくれ」

 そして、ドワーフは最後の最後まで感謝の言葉を言って移動していく。

 その後も何かと復興作業をしているドワーフ達に声を掛けられて、感謝の言葉を何度も掛けられた。

 すると、ロピがやって来て、不満を垂らす。

「もー、お兄さんがソコに居るとドワーフさん達が次々とお兄さんの所に行くから、復興作業が進まないよー!」
「ほっほっほ。それ程皆さん、アトス殿に感謝しているのでしょう」
「リガスの言う通り。アトス様は神ッ! だからドワーフ族がアトス様の所に行ってしまうのはしょうがない事」

 それからは、俺も軽い物など、自分で出来る事で復興作業に参加し、夜遅くまで続けたのである……
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