404 / 492
第10章
403話
しおりを挟む
今日の俺達の予定は復興作業の手伝いだ。
「人って、すげぇーな……」
俺は目の前の光景を見ながら呟く。
「ほっほっほ。いきなりどうされましたかな?」
「いや……あんな事があったばかりなのに、直ぐに復興作業を初めているのを見てすげぇーなって……」
「ふむ。確かに……戦いには勝ったとは言え被害的な状況を見ると、人間族より我々の方が大きいですからね……」
人員的な被害はお互い同じ位だろうが、こちらは村を戦場にしてしまった。
あれ程、木々に囲まれていたエルフの村は、炎弾の攻撃により丸焦げである。
「大分、見晴らしが良くなったな……」
「そうですね……ですが、半年もすれば元通りになるでしょうからあんまり気にする必要も無いでしょう」
どうやら、この世界では木々の育つスピードが異常に速いらしく、村全面が焼け野原になっていたとさても半年で全て元に戻る様だ。
そして、現在は戦いで比較的軽症なエルフとドワーフ達が復興作業に励んでいる。
見ているだけで、生きる力を貰える気がする程、エルフやドワーフ達には生命力を感じた。
しかし、どうしたって人員が不足している為、復興スピード自体は遅い。
「ほっほっほ。アトス殿見てください──あそこでチル様とロピ殿が頑張っていますよ?」
リガスに言われて顔を動かすと、そこにはエルフやドワーフ達と一緒に復興作業をしている二人の姿が見えた。
「チルちゃん凄ーい!」
「私のスキルなら、もっと持てるよ?」
チルが大きな丸太を十本程一気に持って、ロピを始め、皆を驚かせていた。
「あはは、流石私の妹だよ! 皆んなー、これが私の妹なんだよー?」
妹の活躍が嬉しかったのかロピは全員に喧伝する様に大声でチルの自慢を始める。
「ね、姉さん……やめて……恥ずかしい……」
姉のロピとは違って、チルは注目されるのが恥ずかしかったのかササっと移動して丸太を持っていくのであった。
「二人共、元気で良かった」
「ほっほっほ。ですな──どれ、私もお手伝いをしてきましょうかね。ご主人様だけに働かせては、執事としての名が泣きますからな」
「あぁ、リガスが参加すれば更に助かるだろう」
「ほっほっほ。褒めすぎですよ。アトス殿はここでノンビリしていて下さい」
そう言って、リガスはチルとロピの所に移動していった。
「クソ……俺も片腕を失って無かったらな……」
俺は、ソコにあるはずの無い腕を摩る様な仕草をする。
「はは、でもこの腕があったら今頃ロピやチル、リガス達が居なくなってたかもしれないから、結果オーライだな」
少しの後悔をした後に直ぐにコレで良かったという気持ちになる。
「まぁ……でも、何もやらないって言うのは少し気まずいな……」
皆んなが必死に働いているのに自分だけがボーッとしているのが非常に申し訳ない様な気持ちになり、ソワソワし始める。
「な、何かやった方がいいよな……」
余りにもオロオロした雰囲気が出て来たのか、ドワーフ達が話しかけて来た。
「がはは、隻腕よ何をしている?」
「あ、あぁ……自分が出来る仕事が無いか探しているんだが、何も無くてなッ……」
俺の言葉にドワーフ達は無言で隻腕と無い腕を交互に見る。
「……隻腕よ、ハッキリ言おう……」
ドワーフの一人が非常に言い辛そうに口を開く。
「隻腕の気持ちは、とても有難い。だが、復興作業には力が居る……だから隻腕は無理せず見ていてくれればいい」
「分かった……」
そうだよな……こんな俺に出来る事は少ない。
別に落ち込んでいる訳では無い、この事は既に自身で納得している。
「隻腕よ……だが、一つだけ言わせてくれ──俺達はお前に本当に感謝しているんだよ」
「あぁ、そうさ! 本当に感謝しているぜッ!」
「あの、不思議な光は隻腕がやったって聴いたぜ? あの光があったから俺達はは助かったぜ!」
ドワーフ達が次々と感謝をしてくれた。
戦闘が終わってからも、かなり感謝されたが、ここでも同じ様に感謝される。
「隻腕が居なければ、家族達にだって会えなかった! だが、今はこうして生きている!」
「あぁ、そうだ。隻腕の戦場の働きを考えたら、復興作業が出来ないからってなんなんだ! って感じだぜ」
「隻腕はそこで村が復興していく様子を 見ていてくれ」
そして、ドワーフは最後の最後まで感謝の言葉を言って移動していく。
その後も何かと復興作業をしているドワーフ達に声を掛けられて、感謝の言葉を何度も掛けられた。
すると、ロピがやって来て、不満を垂らす。
「もー、お兄さんがソコに居るとドワーフさん達が次々とお兄さんの所に行くから、復興作業が進まないよー!」
「ほっほっほ。それ程皆さん、アトス殿に感謝しているのでしょう」
「リガスの言う通り。アトス様は神ッ! だからドワーフ族がアトス様の所に行ってしまうのはしょうがない事」
それからは、俺も軽い物など、自分で出来る事で復興作業に参加し、夜遅くまで続けたのである……
「人って、すげぇーな……」
俺は目の前の光景を見ながら呟く。
「ほっほっほ。いきなりどうされましたかな?」
「いや……あんな事があったばかりなのに、直ぐに復興作業を初めているのを見てすげぇーなって……」
「ふむ。確かに……戦いには勝ったとは言え被害的な状況を見ると、人間族より我々の方が大きいですからね……」
人員的な被害はお互い同じ位だろうが、こちらは村を戦場にしてしまった。
あれ程、木々に囲まれていたエルフの村は、炎弾の攻撃により丸焦げである。
「大分、見晴らしが良くなったな……」
「そうですね……ですが、半年もすれば元通りになるでしょうからあんまり気にする必要も無いでしょう」
どうやら、この世界では木々の育つスピードが異常に速いらしく、村全面が焼け野原になっていたとさても半年で全て元に戻る様だ。
そして、現在は戦いで比較的軽症なエルフとドワーフ達が復興作業に励んでいる。
見ているだけで、生きる力を貰える気がする程、エルフやドワーフ達には生命力を感じた。
しかし、どうしたって人員が不足している為、復興スピード自体は遅い。
「ほっほっほ。アトス殿見てください──あそこでチル様とロピ殿が頑張っていますよ?」
リガスに言われて顔を動かすと、そこにはエルフやドワーフ達と一緒に復興作業をしている二人の姿が見えた。
「チルちゃん凄ーい!」
「私のスキルなら、もっと持てるよ?」
チルが大きな丸太を十本程一気に持って、ロピを始め、皆を驚かせていた。
「あはは、流石私の妹だよ! 皆んなー、これが私の妹なんだよー?」
妹の活躍が嬉しかったのかロピは全員に喧伝する様に大声でチルの自慢を始める。
「ね、姉さん……やめて……恥ずかしい……」
姉のロピとは違って、チルは注目されるのが恥ずかしかったのかササっと移動して丸太を持っていくのであった。
「二人共、元気で良かった」
「ほっほっほ。ですな──どれ、私もお手伝いをしてきましょうかね。ご主人様だけに働かせては、執事としての名が泣きますからな」
「あぁ、リガスが参加すれば更に助かるだろう」
「ほっほっほ。褒めすぎですよ。アトス殿はここでノンビリしていて下さい」
そう言って、リガスはチルとロピの所に移動していった。
「クソ……俺も片腕を失って無かったらな……」
俺は、ソコにあるはずの無い腕を摩る様な仕草をする。
「はは、でもこの腕があったら今頃ロピやチル、リガス達が居なくなってたかもしれないから、結果オーライだな」
少しの後悔をした後に直ぐにコレで良かったという気持ちになる。
「まぁ……でも、何もやらないって言うのは少し気まずいな……」
皆んなが必死に働いているのに自分だけがボーッとしているのが非常に申し訳ない様な気持ちになり、ソワソワし始める。
「な、何かやった方がいいよな……」
余りにもオロオロした雰囲気が出て来たのか、ドワーフ達が話しかけて来た。
「がはは、隻腕よ何をしている?」
「あ、あぁ……自分が出来る仕事が無いか探しているんだが、何も無くてなッ……」
俺の言葉にドワーフ達は無言で隻腕と無い腕を交互に見る。
「……隻腕よ、ハッキリ言おう……」
ドワーフの一人が非常に言い辛そうに口を開く。
「隻腕の気持ちは、とても有難い。だが、復興作業には力が居る……だから隻腕は無理せず見ていてくれればいい」
「分かった……」
そうだよな……こんな俺に出来る事は少ない。
別に落ち込んでいる訳では無い、この事は既に自身で納得している。
「隻腕よ……だが、一つだけ言わせてくれ──俺達はお前に本当に感謝しているんだよ」
「あぁ、そうさ! 本当に感謝しているぜッ!」
「あの、不思議な光は隻腕がやったって聴いたぜ? あの光があったから俺達はは助かったぜ!」
ドワーフ達が次々と感謝をしてくれた。
戦闘が終わってからも、かなり感謝されたが、ここでも同じ様に感謝される。
「隻腕が居なければ、家族達にだって会えなかった! だが、今はこうして生きている!」
「あぁ、そうだ。隻腕の戦場の働きを考えたら、復興作業が出来ないからってなんなんだ! って感じだぜ」
「隻腕はそこで村が復興していく様子を 見ていてくれ」
そして、ドワーフは最後の最後まで感謝の言葉を言って移動していく。
その後も何かと復興作業をしているドワーフ達に声を掛けられて、感謝の言葉を何度も掛けられた。
すると、ロピがやって来て、不満を垂らす。
「もー、お兄さんがソコに居るとドワーフさん達が次々とお兄さんの所に行くから、復興作業が進まないよー!」
「ほっほっほ。それ程皆さん、アトス殿に感謝しているのでしょう」
「リガスの言う通り。アトス様は神ッ! だからドワーフ族がアトス様の所に行ってしまうのはしょうがない事」
それからは、俺も軽い物など、自分で出来る事で復興作業に参加し、夜遅くまで続けたのである……
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

チート能力【無限増殖】を得た俺は終末世界でもファンタジーしている ~無限に増え続ける能力で世界最強~
仮実谷 望
ファンタジー
ある日、俺は謎の薬を手に入れてそれを飲んだら、物を増やす能力に目覚めていた。お金儲けしたり、自分自身の欲望を叶えているうちに厄介ごとやモンスターと出会う。増える超能力。増え続ける超能力が進化していつの日か世界最強の男になっていた。基本的に能力は増え続けます。主人公は色々なことをしようとします。若干異能力バトルに巻き込まれます。世界は終末世界に移行してしまいます。そんな感じでサバイバルが始まる。スライムをお供にして終末世界を旅して自由気ままに暮らすたまに人助けして悪人を成敗する毎日です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる