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第9章
393話
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カールとのやり取りを終わらせて、私は皆んなに追い付く。
「シク様、無事でしたか」
「あぁ、問題無い」
来た道をそのまま戻っている為、直ぐにリッテ達と合流する事が出来るだろう。
「へへ、ここまで来れば後は逃げるだけだな!」
「ググガよ、油断するな」
「心配すんなよ! 俺達に追い付ける奴なんていねぇーよ」
ガルルの言う通り油断は禁物だが、確かに人間族で私達に追い付ける者が果たして居るかどうかだな……
「皆に作戦成功した事を伝えたらきっと喜ぶぜ?」
ラシェン王の暗殺に成功したのが、よっぽど嬉しいのかググガは先程からテンションが高い。
そして、長い廊下を曲がろうとした時であった……
「──ッ止まれ!」
何かの気配を察知した私は皆に止まる様に指示をする。
普段、大きな声を出さない私がいきなり叫び出した為、ガルル達は驚きながらも止まってくれた様だ。
すると、私達からは死角になって見えなかった廊下の曲がり角から、何やら声が聞こえた。
「ほぅ……侵入者の癖して中々の者がいる様だな……」
誰だが分からない声の正体がゆっくりと、こちらに歩いて来るのが足音で分かった。
「だ、誰だッ。出てきやがれ!」
「言われなくても、出て行く」
そう言って、廊下から姿を現したのは……
「グンドウ……」
そう、人間族最強と謳われる近接隊総隊長のグンドウであった……
その姿は老兵とは、とても思えない程、しっかりした体付きである。
グンドウは自慢の顎髭を弄る──その顎髭に白いロングコートがよく似合っていた。
「お前ら何者だ……? ん? 待てよ、見た事あるな」
グンドウは一通り私達を見回した後に思い出す様にして頭を捻る。
「うむ、思い出した──貴様らカールの奴隷だな……?」
「「「「「ッ!?」」」」」
カールという単語を口にした瞬間グンドウからの威圧感が増した。
「侵入者では無く、奴隷だったか。しかし、カールの奴……城内に奴隷なんぞ入れて、一体何を考えてやがる?」
グンドウはカールの奴隷である私達を怪しげに見る。
「お前達、この鐘は何だ? それとカールはどうした?」
どうやら、グンドウは私達とカールが敵同士だとは、まだ、気がついて無い様子だ。
グンドウの威圧に私も含めて全員が既に戦闘態勢を取っているが、恐らく無駄だろう……
私達が束で向かってもグンドウには勝てない。
そして、それを理解しているグンドウは私達の戦闘体制を気にした様子も無い。
「何故、鐘が鳴っている分からないから、カールに、外の様子を見に行って来いと言われた」
「ほぅ……」
私の言葉を値踏みするかの様にグンドウは鋭い眼光を飛ばして来る。
「なら、そのカールは一体どこにいる?」
「ラシェン王の寝室だ」
「なんだとッ?」
グンドウの威圧感が更に増した。
「あのクソ野郎……一体何を考えてやがる……」
一瞬だけ、何やら考えたグンドウだったが、直ぐに何かを察した様な表情を浮かべた。
「まさか、ラシェン王に何かするつもりか?!」
既に殺されている事を露とも知らずグンドウは慌てた様子でラシェン王の元へと向かおうとする。
ふぅ……これでなんとか……乗り切れるか……?
仲間の誰もが、そう思った時、グンドウは叫ぶ様にして声を上げた。
「そこのお前! 私に着いて来い!」
「……」
グンドウが寝室に向かいながらも、私に着いて来る様に指示をする。
……どうする? このまま、逃げても良いが、この男の場合は追い付いて来そうだ。
私だけなら、逃げ切れるだろうが、ランクの低い者は恐らく無理だろう……
私はチラリと仲間達のを見る。
うん……やるしか無いな……
「ガルルよ、皆んなを連れて先に逃げろ」
「し、しかし」
「お、俺が行くぜ!」
皆の言葉に首を振る。あまりノンビリしている暇も無い為、ガルルの目を見て一言だけ伝えた。
「皆んなを頼むぞ?」
「…………分かりました」
「兄貴ッ!?」
ガルルの返答に満足した私はグンドウの後を追う様にして、カールのいる所に向かう。
後ろを見ると、ググガが私の後を追おうとしている所をガルルに止められていた。
ふふ、あそこまで思ってくれる仲間達がいる事は嬉しい事だ。
「遅いッ! 上の者が指示した場合は、もっと迅速な対応しろ──全く……カールの奴は何を奴隷に教育している……」
カールの一つ一つの行動が、気に喰わないのかグンドウの機嫌は会った時から下がり続けている。
そして、グンドウは人間族にしたら信じられない程の速さでラシェン王の元に向かい、気が付けばあっという間に到着する。
「ラシェン王、ご無事ですか?!」
寝室の扉が空いている事に気が付いたグンドウは何かあったのでは無いかと思い、叫びながら室内に突入する。
すると、そこにはカールが居て、その周りに兵士達が倒れていた。
「あはは……グンドウさん……随分と早いですね……」
私達が出て行ってから、ほんの僅かしか経過して無い為、まさか直ぐに誰かが来るとは思って無かったのか、グンドウを見たカールの額からは冷や汗が流れ落ちるのであった……
「シク様、無事でしたか」
「あぁ、問題無い」
来た道をそのまま戻っている為、直ぐにリッテ達と合流する事が出来るだろう。
「へへ、ここまで来れば後は逃げるだけだな!」
「ググガよ、油断するな」
「心配すんなよ! 俺達に追い付ける奴なんていねぇーよ」
ガルルの言う通り油断は禁物だが、確かに人間族で私達に追い付ける者が果たして居るかどうかだな……
「皆に作戦成功した事を伝えたらきっと喜ぶぜ?」
ラシェン王の暗殺に成功したのが、よっぽど嬉しいのかググガは先程からテンションが高い。
そして、長い廊下を曲がろうとした時であった……
「──ッ止まれ!」
何かの気配を察知した私は皆に止まる様に指示をする。
普段、大きな声を出さない私がいきなり叫び出した為、ガルル達は驚きながらも止まってくれた様だ。
すると、私達からは死角になって見えなかった廊下の曲がり角から、何やら声が聞こえた。
「ほぅ……侵入者の癖して中々の者がいる様だな……」
誰だが分からない声の正体がゆっくりと、こちらに歩いて来るのが足音で分かった。
「だ、誰だッ。出てきやがれ!」
「言われなくても、出て行く」
そう言って、廊下から姿を現したのは……
「グンドウ……」
そう、人間族最強と謳われる近接隊総隊長のグンドウであった……
その姿は老兵とは、とても思えない程、しっかりした体付きである。
グンドウは自慢の顎髭を弄る──その顎髭に白いロングコートがよく似合っていた。
「お前ら何者だ……? ん? 待てよ、見た事あるな」
グンドウは一通り私達を見回した後に思い出す様にして頭を捻る。
「うむ、思い出した──貴様らカールの奴隷だな……?」
「「「「「ッ!?」」」」」
カールという単語を口にした瞬間グンドウからの威圧感が増した。
「侵入者では無く、奴隷だったか。しかし、カールの奴……城内に奴隷なんぞ入れて、一体何を考えてやがる?」
グンドウはカールの奴隷である私達を怪しげに見る。
「お前達、この鐘は何だ? それとカールはどうした?」
どうやら、グンドウは私達とカールが敵同士だとは、まだ、気がついて無い様子だ。
グンドウの威圧に私も含めて全員が既に戦闘態勢を取っているが、恐らく無駄だろう……
私達が束で向かってもグンドウには勝てない。
そして、それを理解しているグンドウは私達の戦闘体制を気にした様子も無い。
「何故、鐘が鳴っている分からないから、カールに、外の様子を見に行って来いと言われた」
「ほぅ……」
私の言葉を値踏みするかの様にグンドウは鋭い眼光を飛ばして来る。
「なら、そのカールは一体どこにいる?」
「ラシェン王の寝室だ」
「なんだとッ?」
グンドウの威圧感が更に増した。
「あのクソ野郎……一体何を考えてやがる……」
一瞬だけ、何やら考えたグンドウだったが、直ぐに何かを察した様な表情を浮かべた。
「まさか、ラシェン王に何かするつもりか?!」
既に殺されている事を露とも知らずグンドウは慌てた様子でラシェン王の元へと向かおうとする。
ふぅ……これでなんとか……乗り切れるか……?
仲間の誰もが、そう思った時、グンドウは叫ぶ様にして声を上げた。
「そこのお前! 私に着いて来い!」
「……」
グンドウが寝室に向かいながらも、私に着いて来る様に指示をする。
……どうする? このまま、逃げても良いが、この男の場合は追い付いて来そうだ。
私だけなら、逃げ切れるだろうが、ランクの低い者は恐らく無理だろう……
私はチラリと仲間達のを見る。
うん……やるしか無いな……
「ガルルよ、皆んなを連れて先に逃げろ」
「し、しかし」
「お、俺が行くぜ!」
皆の言葉に首を振る。あまりノンビリしている暇も無い為、ガルルの目を見て一言だけ伝えた。
「皆んなを頼むぞ?」
「…………分かりました」
「兄貴ッ!?」
ガルルの返答に満足した私はグンドウの後を追う様にして、カールのいる所に向かう。
後ろを見ると、ググガが私の後を追おうとしている所をガルルに止められていた。
ふふ、あそこまで思ってくれる仲間達がいる事は嬉しい事だ。
「遅いッ! 上の者が指示した場合は、もっと迅速な対応しろ──全く……カールの奴は何を奴隷に教育している……」
カールの一つ一つの行動が、気に喰わないのかグンドウの機嫌は会った時から下がり続けている。
そして、グンドウは人間族にしたら信じられない程の速さでラシェン王の元に向かい、気が付けばあっという間に到着する。
「ラシェン王、ご無事ですか?!」
寝室の扉が空いている事に気が付いたグンドウは何かあったのでは無いかと思い、叫びながら室内に突入する。
すると、そこにはカールが居て、その周りに兵士達が倒れていた。
「あはは……グンドウさん……随分と早いですね……」
私達が出て行ってから、ほんの僅かしか経過して無い為、まさか直ぐに誰かが来るとは思って無かったのか、グンドウを見たカールの額からは冷や汗が流れ落ちるのであった……
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