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第9章
388話
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シク達がラシェン王を殺害した頃……リッテ達は城門付近に居た。
「リ、リッテさん私達はどうしますか?」
「シク様達が必ず成功させるから、私達はそれを念頭に行動しましょう──まずは、この城門までの逃走ルートの確保よ」
リッテの指示に全員が頷く。
「城内から外に出るのは、ここしか無いから、なんとしてでも、ここは死守する必要があるわ」
そう言って、リッテは足元に気絶している門番達を見る──先程ググガ達が倒した者だろう。
「まずは、この見張り達の鎧を全て脱がせましょう──その後に私達が来て、見張りの振りをするわよ」
こうして、リッテは気絶した見張りから装備を剥ぎ取り、鎧を着た。
流石、王城と言うべきか門番の装備はフルフェイスであり、カールが率いる遊撃隊の軽装とは真逆で顔おろか、身体のラインすら分からない程の重装装備であった。
「リ、リッテさん、私も着ます!」
「いいえ、キャリは隠れて様子を見てて頂戴──もし、私達がバレて捕まる様な事があれば貴方が、どうにかするのよ?」
「で、でも……」
「うふふ。大丈夫、貴方なら出来るわ──それに他にもやって欲しい事があるのよ」
リッテの言葉に首を傾げる。
「シク様達が、作戦を成功させて、此処まで来たら、次は外で待機しているネークさん達に合図を送る必要があるわ」
「そ、そうでした」
「だから……」
リッテは、キャリを含めた二人にある指示を与える。
「わ、わかりました」
「うふふ。頼むわよ? 私達は怪しまれない様に此処で見張りをするわね」
こうして、キャリともう一人がリッテ達の元を離れて自身の任務にあたり、リッテ達三人は鎧を装備して、城門の前に立ち上がる。
「リッテさん」
「なにかしら?」
「人間族共と離す場合は、俺が話した方がいいでしょう」
「うふふ。そうね──気絶させた兵士達の中に女性は居なかったし、頼むわ」
リッテ達は、先程気絶させた見張りの様に、談話をしながら見張りに当たる。
シク達の行動がバレていない為、城内や城外共に静かなものである。
「後は、このままシク様達が無事に戻って来てくれれば、無事に帰れそうね」
「えぇ。俺達獣人族の未来も明るいですよ」
シク達と別れて、一体どれ程の時間が経過しただろうか?
恐らく、時間としては、まだ三十分も経過していない筈だが、リッテ達はどうしても焦燥感を感じている様だ。
「ま、まだでしょうか」
「うふふ。落ち着きなさい──シク様達と別れて、まだ三十分も経過して無いわよ?」
仲間に、そう言いつつ、リッテ自身も焦りや不安がある様で、無意識に左足を小刻みに揺らしていた。
すると、リッテ達三人の目の前にボトリと木の枝が落ちて来た。
「「「──ッ?!」」」
三人は一瞬で反応し、戦闘体制を取る。
しかし、落ちて来た物を確認した三人は直ぐに体制を解く。
「うふふ。どうやらキャリ達は準備が出来た様ね」
「その様です」
周りを見回すと、微かに草の茂みに誰かが居るのがわかった。
「ふぅ……後はシク様達を待つだけね」
リッテの頭の中では着実作戦成功までのゴールが近付いて来ている事が分かっていた。
すると、城外から誰かが来る気配を感じる一同。
その声は次第に大きくなっていき、リッテ達が居る城門まで来た。
「よぅ、お疲れさん。交代の時間だぜ──何か異常は無かったか?」
「「「…………」」」
まさか、交代の時間に被るとは思っていなかったリッテ達は、焦る。
そんな焦る様子を相手に悟られない様にしつつ、リッテの隣に居た仲間が応えた。
「特に異常は無い。それにもう、そんな時間か?」
「あはは、お前達一体、どんだけ楽しい話に花を咲かせていたんだ? たっぷりと六時間経過したぞ?」
「そ、そうか。ど、どうだろうか? 今日はこのままお前達の分まで見張りをやるから、次の時は交換してくれないか?」
なんとか、見張りを継続したい為、続行する旨を伝える。
「あ? いいのか?」
「勿論だ。まだ話し足りないくらいだからな」
「かははは、そうかそうか──おい、どうする?」
新しく見張りに来た者が他の仲間に声を掛ける。
特に反対意見も出ずに、なんとか無事にやり過ごせそうだ。
「よっしゃ! お前達の希望を叶えてやるよ」
「す、済まない。感謝する」
「良いってことよ!」
こうして、なんとか見張りの続行をする事に成功したリッテ達だった。
「うふふ。貴方やるわね」
「いえ、冷や冷やしましたよ……」
なんとか、やり過ごせた安堵感を感じながら再び見張りに就こうとするが、また何者かが城門に近付いて来た。
それも複数人である。
「お仕事ご苦労──我々は遊撃隊の者達だ。カール隊長に呼ばれた為城内に入れて頂きたい」
そこには、リッテ達が昼間に戦闘訓練を行った兵士達十人程が居て、代表で話しているのは副隊長であった。
「な、何故城内に入るか、理由を聞いても良いか?」
「それは我々も分からん。ただ、カール隊長に呼ばれただけである」
これ以上、聞いても何も知らなそうと判断したのか、遊撃隊をなんとか城内に入れない様にするリッテ達。
「じょ、城内に入る目的が不明瞭な者を城内に入れるわけには行かん。それも、こんな夜更であれば尚更だ──申し訳無いが朝に出直して頂きたい」
最もらしいことを言って追い出そうとするが、副隊長には効かない。
「少し、急いでいる為、話している暇は無い──通らせて頂くぞ? もし、邪魔する様であれば、我々全員を敵にすると思え」
そう言って、中に押し入ろうとする遊撃隊。
どうすれば良いか分からず、たまらずリッテの方に向くと、リッテ首を横に振り小声で、話しかける。
「今、ここで荒事を起こしたら、逃走ルートを塞いでしまうわ──別に城内に用事があるからと言ってシク様達の所に行くとは限らないんだし、通しましょう」
リッテの指示により、遊撃隊を通し、城内に入れた。
本来の対応であれば、いくら遊撃隊とは言え城内に入れてはならないだろう。
だが、ここで騒ぎになり人が集まることを嫌ったリッテは遊撃隊を中に入れる。
この結果がシク達の作戦にどう影響するかは謎だが、良い結果にはならなそうである……
「リ、リッテさん私達はどうしますか?」
「シク様達が必ず成功させるから、私達はそれを念頭に行動しましょう──まずは、この城門までの逃走ルートの確保よ」
リッテの指示に全員が頷く。
「城内から外に出るのは、ここしか無いから、なんとしてでも、ここは死守する必要があるわ」
そう言って、リッテは足元に気絶している門番達を見る──先程ググガ達が倒した者だろう。
「まずは、この見張り達の鎧を全て脱がせましょう──その後に私達が来て、見張りの振りをするわよ」
こうして、リッテは気絶した見張りから装備を剥ぎ取り、鎧を着た。
流石、王城と言うべきか門番の装備はフルフェイスであり、カールが率いる遊撃隊の軽装とは真逆で顔おろか、身体のラインすら分からない程の重装装備であった。
「リ、リッテさん、私も着ます!」
「いいえ、キャリは隠れて様子を見てて頂戴──もし、私達がバレて捕まる様な事があれば貴方が、どうにかするのよ?」
「で、でも……」
「うふふ。大丈夫、貴方なら出来るわ──それに他にもやって欲しい事があるのよ」
リッテの言葉に首を傾げる。
「シク様達が、作戦を成功させて、此処まで来たら、次は外で待機しているネークさん達に合図を送る必要があるわ」
「そ、そうでした」
「だから……」
リッテは、キャリを含めた二人にある指示を与える。
「わ、わかりました」
「うふふ。頼むわよ? 私達は怪しまれない様に此処で見張りをするわね」
こうして、キャリともう一人がリッテ達の元を離れて自身の任務にあたり、リッテ達三人は鎧を装備して、城門の前に立ち上がる。
「リッテさん」
「なにかしら?」
「人間族共と離す場合は、俺が話した方がいいでしょう」
「うふふ。そうね──気絶させた兵士達の中に女性は居なかったし、頼むわ」
リッテ達は、先程気絶させた見張りの様に、談話をしながら見張りに当たる。
シク達の行動がバレていない為、城内や城外共に静かなものである。
「後は、このままシク様達が無事に戻って来てくれれば、無事に帰れそうね」
「えぇ。俺達獣人族の未来も明るいですよ」
シク達と別れて、一体どれ程の時間が経過しただろうか?
恐らく、時間としては、まだ三十分も経過していない筈だが、リッテ達はどうしても焦燥感を感じている様だ。
「ま、まだでしょうか」
「うふふ。落ち着きなさい──シク様達と別れて、まだ三十分も経過して無いわよ?」
仲間に、そう言いつつ、リッテ自身も焦りや不安がある様で、無意識に左足を小刻みに揺らしていた。
すると、リッテ達三人の目の前にボトリと木の枝が落ちて来た。
「「「──ッ?!」」」
三人は一瞬で反応し、戦闘体制を取る。
しかし、落ちて来た物を確認した三人は直ぐに体制を解く。
「うふふ。どうやらキャリ達は準備が出来た様ね」
「その様です」
周りを見回すと、微かに草の茂みに誰かが居るのがわかった。
「ふぅ……後はシク様達を待つだけね」
リッテの頭の中では着実作戦成功までのゴールが近付いて来ている事が分かっていた。
すると、城外から誰かが来る気配を感じる一同。
その声は次第に大きくなっていき、リッテ達が居る城門まで来た。
「よぅ、お疲れさん。交代の時間だぜ──何か異常は無かったか?」
「「「…………」」」
まさか、交代の時間に被るとは思っていなかったリッテ達は、焦る。
そんな焦る様子を相手に悟られない様にしつつ、リッテの隣に居た仲間が応えた。
「特に異常は無い。それにもう、そんな時間か?」
「あはは、お前達一体、どんだけ楽しい話に花を咲かせていたんだ? たっぷりと六時間経過したぞ?」
「そ、そうか。ど、どうだろうか? 今日はこのままお前達の分まで見張りをやるから、次の時は交換してくれないか?」
なんとか、見張りを継続したい為、続行する旨を伝える。
「あ? いいのか?」
「勿論だ。まだ話し足りないくらいだからな」
「かははは、そうかそうか──おい、どうする?」
新しく見張りに来た者が他の仲間に声を掛ける。
特に反対意見も出ずに、なんとか無事にやり過ごせそうだ。
「よっしゃ! お前達の希望を叶えてやるよ」
「す、済まない。感謝する」
「良いってことよ!」
こうして、なんとか見張りの続行をする事に成功したリッテ達だった。
「うふふ。貴方やるわね」
「いえ、冷や冷やしましたよ……」
なんとか、やり過ごせた安堵感を感じながら再び見張りに就こうとするが、また何者かが城門に近付いて来た。
それも複数人である。
「お仕事ご苦労──我々は遊撃隊の者達だ。カール隊長に呼ばれた為城内に入れて頂きたい」
そこには、リッテ達が昼間に戦闘訓練を行った兵士達十人程が居て、代表で話しているのは副隊長であった。
「な、何故城内に入るか、理由を聞いても良いか?」
「それは我々も分からん。ただ、カール隊長に呼ばれただけである」
これ以上、聞いても何も知らなそうと判断したのか、遊撃隊をなんとか城内に入れない様にするリッテ達。
「じょ、城内に入る目的が不明瞭な者を城内に入れるわけには行かん。それも、こんな夜更であれば尚更だ──申し訳無いが朝に出直して頂きたい」
最もらしいことを言って追い出そうとするが、副隊長には効かない。
「少し、急いでいる為、話している暇は無い──通らせて頂くぞ? もし、邪魔する様であれば、我々全員を敵にすると思え」
そう言って、中に押し入ろうとする遊撃隊。
どうすれば良いか分からず、たまらずリッテの方に向くと、リッテ首を横に振り小声で、話しかける。
「今、ここで荒事を起こしたら、逃走ルートを塞いでしまうわ──別に城内に用事があるからと言ってシク様達の所に行くとは限らないんだし、通しましょう」
リッテの指示により、遊撃隊を通し、城内に入れた。
本来の対応であれば、いくら遊撃隊とは言え城内に入れてはならないだろう。
だが、ここで騒ぎになり人が集まることを嫌ったリッテは遊撃隊を中に入れる。
この結果がシク達の作戦にどう影響するかは謎だが、良い結果にはならなそうである……
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