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第9章

386話

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 現在、城内を足音を立てずに移動する。

 夜という事もあり、殆どの箇所で明かりは消されていた。主に頻繁に使用する場所だけが明るく、見張りの兵士達が歩き回っている状況だ。

「よし、手筈通り私達は極力明かりが付いていない場所を通って行くぞ」

 私の言葉に四人が頷く。

 明かりが付いていない場所の見張りはどうやら時間制で見回っている様で、今は誰一人居ない。

「へへ、ラッキーだぜ」
「油断するな」

 ガルルが戒めるが、本当に運が良い様で、誰一人遭遇する事も無くどんどん進んでいく。

 すると、先頭に居るガルルの足が止まった。

「どうやら、安全に進めるのはここまでの様です」

 ガルルの視線の先には明るい場所に兵士が居た。

「ッチ、せっかく良い感じに進んできたのに、これかよ──迂回するか?」
「いや、ダメだな。ラシェン王の寝室に向かうには必ずこの道を通る必要がある」

 兵士が一人だけ見張りで立っているが、この先を曲がった所に以前カールから案内されたラシェン王の寝室に繋がる階段があるのだ。

「あの見張りをどうにかする必要があるが、どうする……」

 流石にここまで来ると、門に居たようなずさんな対応では無く、常に周りを警戒して隙が無い。

「随分と警戒しているな……」
「クソ、門に居た奴らと質が段違いだな」

 皆がどうすれば良いか悩んでいる──そして、私も思いつかない……

「だが、どうにかしないとな……」

 私はその場で思い付いた事を皆に説明して実行に移す。

「まずは……」

 私は、兵士から見えない所から、見張りにギリギリ聞こえるか、聞こえないかの音を立てる。

「──ん?」

 すると、門に居た見張りとは、やはり違う様で、直ぐに異変に気がつく。

「ネズミか?」

 ゆっくりと、こちらに向かって居る所を見ると、ネズミか何かだろうと思っている様だ──しかし職務に忠実なのか、見張りは確認する。

「やっぱり、ネズミか」

 見張りは、先程まで私達が居た薄暗い場所まで移動して様子を見る──だがそこに私達は既に居ない。

 いや、居ないとは少し語弊があるな。

 兵士が現在いる所にググガが居る。

 では、何故、兵士がググガに気が付かないのか……それはググガが兵士の見える範囲にいないからだった……

 ならどこに居るのか……それは兵士の上──天井だ。

 私達、四人でググガを高い天井に移動させた。

 通常であれば、そんな事は無理と判断するくらいの高さである。
 だが、ググガも含めて全員が身体強化持ちの為、それが可能だった。

「はぁ……早く朝にならねぇーかな」

 何の異常も無い事が分かった見張りは振り返り元の位置に戻ろうとするが、それが叶う事は無かった。

「へへ、アンタはちゃんと見張りをしていたと言っとくぜ?」
「──ッ?!」

 何者かの声が自身の上から聞こえた事に兵士は一瞬で反応して上を向くが、もう遅い。

 何かを叫ぶ前にググガの攻撃が見張りに直撃して、音も立てずに気絶した……

「良くやったぞググガ」
「これくらい、楽勝だぜ」

 見つからない場所に隠れていた私達はググガと気絶した見張りの元に行く。

「シク様、コイツどうする?」
「見つからない場所に置いとこう。見張りがいなくなった事に気がつかれたら騒ぎになるかもしれないが時間稼ぎにはなるだろう」

 ガルルとググガ二人で気絶した見張りを近くの使用してなさそうな部屋まで運び隠す。

「後は、階段の前に居る奴らだな……」
「はい。その見張りをどうにかすれば遂にラシェン王の寝室です」

 見張りの一人を隠した後、私達は急いで先に進む。

 すると、遂に最後の障害であろう、二人の見張りが見えた。

 そこには、上に続く階段があり、その前に二人の見張りが立っている。

 先程の見張りも、警戒心が高かったが、やはり最後の見張りだからか、こちらは更に警戒心が高く常に周りを警戒していた。

「参ったぜ……これは流石にさっきの手が通じなさそうだな」
「あぁ、シク様どうしますか?」

 このまま、考えて時間を使うのは良く無いだろう……

「よし、突っ込むぞ」

 私の考えに、少しだけ戸惑いを見せるが、特に反対はされなかった。

 今、私達がいる所から見張りが居る所まで約30メートルくらいか……

 私なら……いけるな

「まず、私だけが突っ込む。その後数秒後にガルル達も来てくれ」
「そ、それは危険なのでは……?」
「問題無い」

 私は見張り二人を見据えてスキルを発動する。

「「「「──ッ!?」」」」

 私がスキルを発動させて見張り二人に向かって走り出すと、後ろの方でガルル達が驚いているのを感じた。

 そして私は二人の見張りに向かって走り寄りそれぞれに一撃を与えて気絶させた。

 見張りは、私を視認する事なく、いきなり何かに殴られたと感じただろう。

「す、すげぇ……」
「こ、これがランクAの力か……」

 ググガとガルルは目を見開き、驚いている。

「は、ははは、俺達が助ける必要も無かったな」
「そんな事は無い。攻撃を避けられた場合は流石に手助けが必要だ」
「い、いやいや、シク様の攻撃を、避けられる奴なんていねぇーよ!」
「ググガよ、静かにするんだ」

 弟を注意した後、ガルルが口を開ける。

「後は、上に登ってラシェン王を討つだけですね」
「あぁ、そうだ」

 私達は階段に視線を向ける。

 夜という事もあり、階段の上は真っ暗であり、先がどうなっているか分からない。

「よし、行くぞ……」

 こうして、私達はラシェン王の寝室に繋がる階段を静かに登り始めた。
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