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第9章
383話
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「それじゃ、両者ともいいかい?」
カールが私達と兵士達の間に入って語り出す。
「これから、我々人間族は他種族と戦争をする事が多くなるだろう──そこで、今回は10対10の集団戦訓練を行って貰う」
今、この場には私達10人と兵士側に10人が向かい合わせに立っていた。
「ルールは簡単にしようか。お互いを倒すまで戦って貰おう。ただし、殺すのはダメだお互いにな?」
カールの言葉に兵士達は、少し残念そうにしている。
「あ、そうそう。今回は実践を想定するから、武器の使用を許可する──ただし、木剣と木盾に限る」
私達は元々武器を使用しないから良いが、相手は武器ありか……
「ッケ、武器があったとしても、アイツらじゃ俺達をどうにか出来ねぇーのに、ムカつくぜ」
「ググガ、静かにしていろ」
どうやら、ググガは兵士達の見下げた態度にイラッとしている様だ。
「まぁ、そこまで気構え無いでいいけど、兵士達諸君は頑張れよ?」
「「「「はい!」」」」
カールの激励に兵士達の士気は高い様だ。
まぁ、それでも私達の方が圧倒的に強いだろう──これまでの戦いで向こうで強いと言えるのは副隊長くらいだろう。
後は、私達十人が誰を相手にしようと勝てるだろう。
「では、少し離れてから開始しようか──それと、奴隷の君達もあまり俺の隊を舐めない方がいいよ?」
その言葉にはハッタリなどと言う安ぽい感じはせず、純粋に忠告する感じの雰囲気を感じた……
「昨日のうちから、言ってあるから作戦会議の時間は要らないよね?」
実に楽しそうな表情で私達と兵士達を見てからカールは開始の合図をする。
「それでは、始めッ!!」
カールの合図共に兵士達が突っ込んで来ると思っていた私達だったが、どうやら当てが外れた様だ。
「なんだ? アイツらいつも通りガムシャラに来ると思ったが来ねぇーな?」
「な、何かの作戦でしょうか?」
ググガの言う通り、いつもの1対1の場合、兵士達は何も考えず突っ込んで来る。
その為、私達は兵士達をいなす様にして戦いを有利に進めていた。
しかし、今回は何故か突っ込んで来ない──理由は簡単だ……
「うふふ。どうやら、あの者のせいのようね」
「うむ。リッテの言う通りだな」
……まぁ、そうだろな
私達はある一人の男に注目する。
その男は私がここに来て一番最初に戦った者──副隊長であった。
カールの開始の合図と共に突っ込もうとした兵士達を一喝する事により思い留ませる。
「貴様らは、ここ数日で何も学んでいないのかッ! 認めたく無いかもしれないが、我々ではあの者達に1対1で勝つ事は難しい!」
副隊長の言葉に誰一人として認めたく無い筈だが……それでも頭の中では分かっている感じである。
「我々人間族が獣人族に負けるのは悔しいが、集団では負けない所をカール隊長に見せるぞ!」
副隊長の言葉に兵士が一斉に返事をする。
「うふふ。どうやら直ぐに決着は着かそうね」
「その様だ」
「上等だぜ!」
「が、頑張ります」
兵士達は先程までバラバラであった筈なのに陣形を組んでいた。
「それでは、我々人間族の力を見せつけてやるぞッ!」
兵士達は右手に剣を持ち、左手で盾を構える。
そして、五人が盾をまえに突き出し立ち並ぶ様にして、こちらに近づいて来る。
「はは、なんだありゃ。オセェーな!」
ググガは兵士達の亀の様な歩みに失笑する。
盾の役が五人に対して、副隊長を含めた残りの五人がその後ろに隠れる様にして付き従う様に進んできた。
「へへ、あんな木盾なんて俺がぶち壊してやるぜ」
そう言うと、ググガが相手に向かって走り始める。
兵士達と違って身軽なググガはあっという間に接近する。
「副隊長! 獣人が来ますッ」
「盾用意ッ」
副隊長の号令で前に居る五人が腰を落として盾を構え、ググガを待ち受ける。
「そんなもんで、俺の攻撃を受けるつもりかよッ!」
ググガの鋭い前蹴りが盾に突き刺さる。
すると、蹴りを受けた兵士は後ろに横転する──それ程、ググガの蹴りの威力が高いのだろう。
「はは、ほら見ろ」
勝ち誇るググガであったが兵士達は直ぐに行動に移した。
「補強ッ!」
副隊長の号令で、前方に居る四人がサポートする様に空いた穴を埋めた。
「まだまだッ!」
ググガが右足を起点にして回し蹴りをする──その回し蹴りは盾を構える四人を全員巻き込む様に……
「──ッ!」
ググガ自身、四人相手でもいけると踏んでいたのだろう。
しかし、兵士達は踏ん張った……
「よしッ、攻撃!」
副隊長の号令で、次に後方に居た剣を持つ兵士達が一斉にググガに襲い掛かった。
「ックソ!」
防具も何も無いググガは堪らず後ろに飛び避ける。
「ググガ一旦戻れッ!」
ガルルの指示により、こちらに戻って来る。
「兄貴、なんだよ? まだやれたぜ?」
「いや、無理だ。明らかに昨日まで俺達が知っている兵士達では無い」
「た、確かに。複数とは言え、グ、ググガさんの蹴りを止めました!」
「うふふ。あの副隊長、侮れないわね」
成る程……これが人間族の力か……
一個人としては弱い……しかし複数になる事により、その強さが発揮される。
だが、その強さの本当の真実は……
私は今も兵士達に細かく指示を送っている副隊長を見た……
カールが私達と兵士達の間に入って語り出す。
「これから、我々人間族は他種族と戦争をする事が多くなるだろう──そこで、今回は10対10の集団戦訓練を行って貰う」
今、この場には私達10人と兵士側に10人が向かい合わせに立っていた。
「ルールは簡単にしようか。お互いを倒すまで戦って貰おう。ただし、殺すのはダメだお互いにな?」
カールの言葉に兵士達は、少し残念そうにしている。
「あ、そうそう。今回は実践を想定するから、武器の使用を許可する──ただし、木剣と木盾に限る」
私達は元々武器を使用しないから良いが、相手は武器ありか……
「ッケ、武器があったとしても、アイツらじゃ俺達をどうにか出来ねぇーのに、ムカつくぜ」
「ググガ、静かにしていろ」
どうやら、ググガは兵士達の見下げた態度にイラッとしている様だ。
「まぁ、そこまで気構え無いでいいけど、兵士達諸君は頑張れよ?」
「「「「はい!」」」」
カールの激励に兵士達の士気は高い様だ。
まぁ、それでも私達の方が圧倒的に強いだろう──これまでの戦いで向こうで強いと言えるのは副隊長くらいだろう。
後は、私達十人が誰を相手にしようと勝てるだろう。
「では、少し離れてから開始しようか──それと、奴隷の君達もあまり俺の隊を舐めない方がいいよ?」
その言葉にはハッタリなどと言う安ぽい感じはせず、純粋に忠告する感じの雰囲気を感じた……
「昨日のうちから、言ってあるから作戦会議の時間は要らないよね?」
実に楽しそうな表情で私達と兵士達を見てからカールは開始の合図をする。
「それでは、始めッ!!」
カールの合図共に兵士達が突っ込んで来ると思っていた私達だったが、どうやら当てが外れた様だ。
「なんだ? アイツらいつも通りガムシャラに来ると思ったが来ねぇーな?」
「な、何かの作戦でしょうか?」
ググガの言う通り、いつもの1対1の場合、兵士達は何も考えず突っ込んで来る。
その為、私達は兵士達をいなす様にして戦いを有利に進めていた。
しかし、今回は何故か突っ込んで来ない──理由は簡単だ……
「うふふ。どうやら、あの者のせいのようね」
「うむ。リッテの言う通りだな」
……まぁ、そうだろな
私達はある一人の男に注目する。
その男は私がここに来て一番最初に戦った者──副隊長であった。
カールの開始の合図と共に突っ込もうとした兵士達を一喝する事により思い留ませる。
「貴様らは、ここ数日で何も学んでいないのかッ! 認めたく無いかもしれないが、我々ではあの者達に1対1で勝つ事は難しい!」
副隊長の言葉に誰一人として認めたく無い筈だが……それでも頭の中では分かっている感じである。
「我々人間族が獣人族に負けるのは悔しいが、集団では負けない所をカール隊長に見せるぞ!」
副隊長の言葉に兵士が一斉に返事をする。
「うふふ。どうやら直ぐに決着は着かそうね」
「その様だ」
「上等だぜ!」
「が、頑張ります」
兵士達は先程までバラバラであった筈なのに陣形を組んでいた。
「それでは、我々人間族の力を見せつけてやるぞッ!」
兵士達は右手に剣を持ち、左手で盾を構える。
そして、五人が盾をまえに突き出し立ち並ぶ様にして、こちらに近づいて来る。
「はは、なんだありゃ。オセェーな!」
ググガは兵士達の亀の様な歩みに失笑する。
盾の役が五人に対して、副隊長を含めた残りの五人がその後ろに隠れる様にして付き従う様に進んできた。
「へへ、あんな木盾なんて俺がぶち壊してやるぜ」
そう言うと、ググガが相手に向かって走り始める。
兵士達と違って身軽なググガはあっという間に接近する。
「副隊長! 獣人が来ますッ」
「盾用意ッ」
副隊長の号令で前に居る五人が腰を落として盾を構え、ググガを待ち受ける。
「そんなもんで、俺の攻撃を受けるつもりかよッ!」
ググガの鋭い前蹴りが盾に突き刺さる。
すると、蹴りを受けた兵士は後ろに横転する──それ程、ググガの蹴りの威力が高いのだろう。
「はは、ほら見ろ」
勝ち誇るググガであったが兵士達は直ぐに行動に移した。
「補強ッ!」
副隊長の号令で、前方に居る四人がサポートする様に空いた穴を埋めた。
「まだまだッ!」
ググガが右足を起点にして回し蹴りをする──その回し蹴りは盾を構える四人を全員巻き込む様に……
「──ッ!」
ググガ自身、四人相手でもいけると踏んでいたのだろう。
しかし、兵士達は踏ん張った……
「よしッ、攻撃!」
副隊長の号令で、次に後方に居た剣を持つ兵士達が一斉にググガに襲い掛かった。
「ックソ!」
防具も何も無いググガは堪らず後ろに飛び避ける。
「ググガ一旦戻れッ!」
ガルルの指示により、こちらに戻って来る。
「兄貴、なんだよ? まだやれたぜ?」
「いや、無理だ。明らかに昨日まで俺達が知っている兵士達では無い」
「た、確かに。複数とは言え、グ、ググガさんの蹴りを止めました!」
「うふふ。あの副隊長、侮れないわね」
成る程……これが人間族の力か……
一個人としては弱い……しかし複数になる事により、その強さが発揮される。
だが、その強さの本当の真実は……
私は今も兵士達に細かく指示を送っている副隊長を見た……
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