381 / 492
第9章
380話
しおりを挟む
「オラッ!」
今日も、今日とて遊撃隊の兵士達と訓練をしている。
昨日は、まさかのガバイとの接触に、かなり焦ったが、なんとかバレずにやり過ごす事が出来た。
これもリッテのお陰だろう。
「ック……獣人のくせして、生意気なッ!」
今、私が相手をしているのは隊の中でも三番目に強いと言われている者だが、攻撃が止まって見える。
そんな余裕な態度が気に食わ無いらしく、相手は余計に肩に力が入り攻撃が避けやすい。
「何をそんなに余裕振っている! 攻撃して来いッ」
避けに徹していた私の行動に気が付いた相手は、もはや顔を真っ赤にしながら間合いも何も無く、ただひたすらに突っ込んでは拳を突き出すという単純な攻撃を繰り返している。
「あはは、良い様にやられているね!」
隊長であるカールが揶揄う様に茶々を入れる為、相手は既に言葉になっていない言語を発しながら突っ込んで来る。
「シクさん、そろそろ決着を付けてもいいよ?」
「……」
あまり、目立ちたく無いが……しょうがない
私は、相手が突き出した右拳を片手で軽く逸らす。
「ッ!?」
すると、相手は面白い様にバランスを崩した為、加減した力で相手の脇腹に左拳をねじ込んだ。
「クッ……」
軽く攻撃した筈なのに兵士はフラつき、そして後ろに後ずさる。
……ふむ。やはり弱いな。
ここ三日程訓練に付き合ったが、ハッキリ言って兵士達の強さは並以下だろう。
これではデグやベムの方が強いまであるな……
「あはは、もう終わりかな?」
カールの言葉に兵士の表情がより一層険しくなる。
「ま、まだまだです! いくぞッ」
隊長の前で不甲斐ない姿を見せたく無い一心なのか、前に前にと足を踏み込んで行くが、どう見てもふらついているのは明らかだ。
しかし、そんな兵士の姿を見てカールは、むしろ笑っている。
「お前みたいな獣人に負ける訳にはいかねぇんだよ!」
名一杯の力を込めた攻撃の様だが、大振り過ぎる為、余裕を持って避ける──そして、避けざまに攻撃を打ち込むと、とうとう耐え切れなくなったのか兵士は地面に膝から崩れ落ちる。
「はーい、そこまで! シクさんお疲れ様。そして君はもう少し訓練が必要かな?」
カールに言われた兵士は俯いていた。
私は、周りを見渡すと他も同じ様な感じであり、手加減しても圧勝を収めている。
そして、1人2回ずつ戦い終わり解散の為に一度皆を集めたカール。
「皆んな、訓練ご苦労様──色々な事を見せて貰ったよ」
そんなカールは普段見せない様な冷めた感じで兵士達に言い放った。
「奴隷という良いものを所持出来た喜びとは逆に、君達を見ていると、情け無く感じてしまうよ……」
辛辣だな……
「君達は、いつまで経ってもシクさん達を獣人族と思って、やれ劣等種なの、奴隷だのと、思い彼等から何も学ぼうとしない。呆れてしまうね」
恐らく、カール的には兵士達に葉っぱを掛けているのだろう──だが、それを理解出来る者が少ない様で、カールが話している最中だと言うのに、何人もの兵士達がこちらに殺意の篭った視線を向けている。
「君達の、その無駄に高いプライドは一度捨てた方がいいぞ? そうしなければ何も学べないし、強くもなれない」
今までは、人間族同士としか訓練をして来なかった兵士達。
そこに急に獣人族である私達が訓練に参加して、手も足も出なかったら、憎く思うのも無理は無い。
「それじゃ、今日はここまでだ。明日は初めて、集団戦の訓練をするから、そのつもりでいてくれ──それでは解散ッ!」
明日は集団戦か……
カールはこちらに近付いて来る。
「さっきも、言ったけど明日は複数人で戦って貰うから、皆んなもそのつもりでいてくれ」
そう言うと、私達に腕輪を付け、布を被せる。
「さて、城内はもう案内したから、今日は小屋で待機しててくれ、まぁ待機と言っても、何も無いけどね、あはは」
そして、カールは私達を連れて小屋に帰り際に思い出した様に呟く。
「そろそろ、頃合いだな……」
あまりにも、小さい声だった為、聞き取れなかったが、表情を引き締めていたのが気になった。
すると、カールは一度兵士達の方に戻りある事を伝えた。
「皆んな! ちょっと待ってくれ」
カールの言葉に兵士が再び振り返り隊長の言葉を待つ。
「あはは、言い忘れていたのだが、どうやらヘラデスさん達の隊が戻って来る様だ」
──ッなんだと?!
カールの言葉を聞いて私達獣人族の表情が強張る。
しかし、私達とは逆で兵士達の表情は先程とは逆で嬉しそうにしていた。
「うぉー! ヘラデス様達が帰って来るのか!」
「それでは、エルフの里を落としたと言う事だな」
「当たり前だろ! ヘラデス様が劣等種に負ける訳ねぇーだろ!」
次から次へと喜びが兵士達の中に広がるのを感じる。
「あはは、皆んな落ち着けって。戦況の結果については、まだ分からないが、まぁ恐らく勝利しただろう」
それから、再び解散させるとカールはこちらに戻って来た。
「すまないね、それじゃ行こうか」
小屋に向こうとするカールに向かってリッテが真相を聞く。
「カール様よろしいでしょうか? ヘラデス様が戻って来ると仰っておりましたが本当ですか?」
「あぁ。今日の朝、ラシェン王から直接聞いた事だから本当だよ」
不味い……本格的に時間が無くなって来たな……
こうして、私達は小屋に戻り緊急会議を始めた。
今日も、今日とて遊撃隊の兵士達と訓練をしている。
昨日は、まさかのガバイとの接触に、かなり焦ったが、なんとかバレずにやり過ごす事が出来た。
これもリッテのお陰だろう。
「ック……獣人のくせして、生意気なッ!」
今、私が相手をしているのは隊の中でも三番目に強いと言われている者だが、攻撃が止まって見える。
そんな余裕な態度が気に食わ無いらしく、相手は余計に肩に力が入り攻撃が避けやすい。
「何をそんなに余裕振っている! 攻撃して来いッ」
避けに徹していた私の行動に気が付いた相手は、もはや顔を真っ赤にしながら間合いも何も無く、ただひたすらに突っ込んでは拳を突き出すという単純な攻撃を繰り返している。
「あはは、良い様にやられているね!」
隊長であるカールが揶揄う様に茶々を入れる為、相手は既に言葉になっていない言語を発しながら突っ込んで来る。
「シクさん、そろそろ決着を付けてもいいよ?」
「……」
あまり、目立ちたく無いが……しょうがない
私は、相手が突き出した右拳を片手で軽く逸らす。
「ッ!?」
すると、相手は面白い様にバランスを崩した為、加減した力で相手の脇腹に左拳をねじ込んだ。
「クッ……」
軽く攻撃した筈なのに兵士はフラつき、そして後ろに後ずさる。
……ふむ。やはり弱いな。
ここ三日程訓練に付き合ったが、ハッキリ言って兵士達の強さは並以下だろう。
これではデグやベムの方が強いまであるな……
「あはは、もう終わりかな?」
カールの言葉に兵士の表情がより一層険しくなる。
「ま、まだまだです! いくぞッ」
隊長の前で不甲斐ない姿を見せたく無い一心なのか、前に前にと足を踏み込んで行くが、どう見てもふらついているのは明らかだ。
しかし、そんな兵士の姿を見てカールは、むしろ笑っている。
「お前みたいな獣人に負ける訳にはいかねぇんだよ!」
名一杯の力を込めた攻撃の様だが、大振り過ぎる為、余裕を持って避ける──そして、避けざまに攻撃を打ち込むと、とうとう耐え切れなくなったのか兵士は地面に膝から崩れ落ちる。
「はーい、そこまで! シクさんお疲れ様。そして君はもう少し訓練が必要かな?」
カールに言われた兵士は俯いていた。
私は、周りを見渡すと他も同じ様な感じであり、手加減しても圧勝を収めている。
そして、1人2回ずつ戦い終わり解散の為に一度皆を集めたカール。
「皆んな、訓練ご苦労様──色々な事を見せて貰ったよ」
そんなカールは普段見せない様な冷めた感じで兵士達に言い放った。
「奴隷という良いものを所持出来た喜びとは逆に、君達を見ていると、情け無く感じてしまうよ……」
辛辣だな……
「君達は、いつまで経ってもシクさん達を獣人族と思って、やれ劣等種なの、奴隷だのと、思い彼等から何も学ぼうとしない。呆れてしまうね」
恐らく、カール的には兵士達に葉っぱを掛けているのだろう──だが、それを理解出来る者が少ない様で、カールが話している最中だと言うのに、何人もの兵士達がこちらに殺意の篭った視線を向けている。
「君達の、その無駄に高いプライドは一度捨てた方がいいぞ? そうしなければ何も学べないし、強くもなれない」
今までは、人間族同士としか訓練をして来なかった兵士達。
そこに急に獣人族である私達が訓練に参加して、手も足も出なかったら、憎く思うのも無理は無い。
「それじゃ、今日はここまでだ。明日は初めて、集団戦の訓練をするから、そのつもりでいてくれ──それでは解散ッ!」
明日は集団戦か……
カールはこちらに近付いて来る。
「さっきも、言ったけど明日は複数人で戦って貰うから、皆んなもそのつもりでいてくれ」
そう言うと、私達に腕輪を付け、布を被せる。
「さて、城内はもう案内したから、今日は小屋で待機しててくれ、まぁ待機と言っても、何も無いけどね、あはは」
そして、カールは私達を連れて小屋に帰り際に思い出した様に呟く。
「そろそろ、頃合いだな……」
あまりにも、小さい声だった為、聞き取れなかったが、表情を引き締めていたのが気になった。
すると、カールは一度兵士達の方に戻りある事を伝えた。
「皆んな! ちょっと待ってくれ」
カールの言葉に兵士が再び振り返り隊長の言葉を待つ。
「あはは、言い忘れていたのだが、どうやらヘラデスさん達の隊が戻って来る様だ」
──ッなんだと?!
カールの言葉を聞いて私達獣人族の表情が強張る。
しかし、私達とは逆で兵士達の表情は先程とは逆で嬉しそうにしていた。
「うぉー! ヘラデス様達が帰って来るのか!」
「それでは、エルフの里を落としたと言う事だな」
「当たり前だろ! ヘラデス様が劣等種に負ける訳ねぇーだろ!」
次から次へと喜びが兵士達の中に広がるのを感じる。
「あはは、皆んな落ち着けって。戦況の結果については、まだ分からないが、まぁ恐らく勝利しただろう」
それから、再び解散させるとカールはこちらに戻って来た。
「すまないね、それじゃ行こうか」
小屋に向こうとするカールに向かってリッテが真相を聞く。
「カール様よろしいでしょうか? ヘラデス様が戻って来ると仰っておりましたが本当ですか?」
「あぁ。今日の朝、ラシェン王から直接聞いた事だから本当だよ」
不味い……本格的に時間が無くなって来たな……
こうして、私達は小屋に戻り緊急会議を始めた。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界


チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる