過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第9章

371話

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 遊撃隊総隊長のカールと別れてから、私はプブリウスの元に戻った。

 席に座る間際に、リッテやキャリ達に目配せで、作戦失敗した旨を伝える。

 皆んなはガッカリした様子を表に出さない様にしてくれている感じであったが、やはり落胆しているみたいだ……

「シクさん、おかえりなさい──見て下さい、あの二人そろそろ……」

 まるで、子供の様にワクワクした面持ちでガルルとググガの戦いを見ているプブリウスにつられて私も視線を二人に移す。

 すると、二人は私の方に顔を向けて来たので、私は作戦が失敗した事が分かる様に首を横に振った。
 二人は悔しそうな表情をした後に私に向かって頷き、再び小型との戦闘に集中し始めた。

「おっしゃ、シク様が無理だったら諦めも付く──兄貴、倒しちまおうぜ!」
「あぁ、そうだな。作戦はまた立て直せばいい、倒すぞググガ!」

 二人は私に聞こえるくらいに大きな声で話す。

 ……優しい奴らだ

 そしてガルル達は先程同様にスキルを発動させて猛攻撃を開始する。

「もう、手加減する必要ねぇーな!」

 ググガの蹴りの威力が先程と比べて明らかに増していた。

 それはガルルも一緒の様だ。

 そして……

「「オラッ!」」

 二人は同時に蹴りを浴びせると小型が倒れ込み、少し痙攣した後に動かなくなった……

「お、おい、あの奴隷達、もしかして倒しちまったのか……?」
「どうやら……そうみてぇーだな……」

 二人の戦いを観戦していた観客達が信じられない様な顔でガルル達とモンスターを見比べていた。

「ほほほほ! 凄いですね、あの二人は!」

 唯一、私の隣にいるプブリウスだけが大喜びしており、拍手をした。

「ブラボーですよー! 流石私の奴隷です!」

 プブリウスの拍手を聞いた観客がポツリポツリと続く様に拍手し始める。
 そして、その拍手が波紋の様に全体に広がり、最終的には拍手大合戦状態になる。

「奴隷の癖にやるじゃねぇーかよ!」
「アレくらい強い奴隷だったら俺も欲しいぜ……」
「お、俺は、これから奴隷商人の所に行って獣人族を買いにいくぜ!」

 どうやら、二人の戦いぶりを見て獣人族の優秀さが露見した様だ。

「あ、兄貴。なんだか凄い拍手されてんな」
「うむ。そうだな……」

 二人は拍手されている事自体は嬉しい様だが、相手が人間族のため、少し微妙そうな表情を浮かべている。

 そして、鳴り止まない拍手を一人の男が止める。

「静まれッ!」

 その男はグンドウである。
 大きな声で一言いうだけで観客の拍手がピタリと止まる。

「そこの奴隷達よ、こちらに登って来るんだ」

 グンドウの指示により二人が階段を昇りグンドウの前で立て膝を着く。

「先の戦い、見事であった──通常より小さいとは言え二人で小型を倒すとは素直に称賛しよう」

 グンドウの言葉に観客からも再び軽い拍手が起こる。

「もし、お前達が人間族であれば騎士団に誘う所だが……獣人族なのが、とても惜しい」

 グンドウは本当に悔しそうにして二人を見る。

 すると、ラシェン王までもがガルル達に話し掛ける。

 だが、グンドウと違って二人をゴミでも見るかの様に見据える。

「予想の結果とは逆だったが、楽しませて貰った──今度は、もっと強い小型を用意するので、その時はまた戦って貰うぞ、ほほほほ」

 ラシェン王が話終えると、最後にカールが二人に向かって声を掛ける。

「貴方達は本当に凄い──まさか二人で倒し切るなんて想像もつかなったよ」

 ニコリと笑みを浮かべるカール。

「貴方達は、プブリウスさんの所の奴隷だと思いますが、仲間は二人だけですか?」

 カールの質問にググガが口を開こうとするが、この場でググガに話させるとややこしい事になると感じたのか、ググガが話す前にガルルが声を上げる。

「我々を含めて十人の仲間が居ます」
「十人ですか……」

 カールは一瞬だけ考えた後にラシェン王に向かって問い掛ける。

「ラシェン様、一つおねがいがあるのですが」
「ふむ。なんだ?」
「私、今後の遊撃隊の訓練の為に、プブリウスさんが所持している獣人を全て頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「成る程……引き取れば遊撃隊の兵士は更に強くなるのか?」
「えぇなります──兵士にする事は出来ませんが、兵士達のサンドバックにはうってつけでしょう」

 カールの言葉にラシェン王がニヤリと微笑む。

「それは、いいな」

 ラシェン王とカールの話を聞いて、プブリウスが慌てている。

「ラ、ラシェン王よ、お待ち下さい! これらは私の財産を浪費して得た奴隷でございます──お願いですから、私の奴隷では無く、新たに奴隷商人から獣人族を購入する事をお考えください」

 プブリウスの必死の願いも虚しく……

「ダメじゃ! カールが欲しいと言えば、お前はタダで奴隷を渡せばいいんだ!」
「──ック……」

 あまりにも理不尽な申し出だが相手が王様である以上、命令に背くわけにも行かずプブリウスはどうすればいいか必死に考えている様だ。

「ラ、ラシェン王よ私からもお願いが」
「なんだ?」
「奴隷に関しては、分かりました。ですが、この奴隷だけは見逃して頂きたい──私の一番のお気に入りなんです!」

 そう言って、プブリウスは私を隠す様にして前に立つ。
 余りにも必死なプブリウスにラシェン王はカールの方を見る。

「どうする?」
「ダメですね。私はあの奴隷も含めて欲しいです」

 カールの言葉にラシェン王は一度頷いて、プブリウスに言い渡した。

「プブリウスよ、今すぐその奴隷を渡せ」

 ラシェン王の言葉に逆らいたいプブリウスではあったが、逆らった際の罰則が重過ぎる為、ただいう事を聞く事しかできない様だ……
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