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第9章
370話
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「オラオラ!」
「フンッ!」
二人が小型に向かって、休む暇を与えずに、ひたすらに同じ箇所を攻撃し続ける。
恐らく、このまま攻撃し続ければ、なんとか倒せそうである。
通常の小型よりも小さいのと、人間族達から実験を繰り返し行われていた個体だった為か、元から弱っていたのかもしれない。
そんな小型も負けずにと、二人に向かって尻尾を使用した攻撃をしたりとするが、ガルルとググガには当たらない。
「ふふふ、いいですねー」
周りの観客はガルル、ググガが無残にやられる所を見たいが為にコロシアムに来たと言うのに、逆の光景が目の前に広がっている為、誰一人笑っていない。
だが、プブリウスだけは二人の戦いを見て微笑んでいた。
「決めました──あの二人は私のコレクション入り決定ですね」
何がコレクションだ……
プブリウスの考えに気持ち悪さを感じるが、今はそれどころでは無い。
「そろそろか……」
「ん? シクさん、何かいいましたか?」
「いや、何も言ってない」
「そうですか」
プブリウスは、また直ぐにガルル達の戦いを満遍の笑みで観戦する。
そろそろ……動き時だな……
私はチラリとラシェン王達を視界に収める。
……ックソ、やはりグンドウとカールとか言う奴らがガッチリ側に付いているな。
私達が決めた作戦は単純であった。
まず、コロシアムでガルルとググガがラシェン王を含め、観客を惹きつける──そして、その間に私が身体強化のスキルを発動させて目にも見えないスピードで走りラシェン王を暗殺……の予定だった……
しかし、一分の隙も無い程にグンドウとカールが王様を守っている。
「はぁ……でもやるしか無いよな……」
こんなチャンスを逃せば、次はいつ、ラシェン王に近付けるか分からない。
恐らく、再度チャンスを待っている間に炎弾が帰って来てしまうだろう。
「そうなると、益々手を出せなくなる。やっぱり今しか無いな……」
私は席を立ち上がる。
「ん? シクさんどうかされましたか?」
私が立ち上がった事に、隣のプブリウスが話かけて来る。
「少しお手洗いに行ってくる」
「オット、それは失礼しました」
「悪いが、手足の枷を外して貰いたい」
枷を外して貰った私は、スキルを発動する為、出来るだけ人が少ない所を探す為に歩き出す──席を立ち上がり後ろを向くと、リッテとキャリが神妙な面持ちで私に視線を向ける。
私は一度だけ頷くと、二人に話し掛ける事もなく最適な場所を探し始める。
リッテやキャリ達には暗殺成功後の逃走ルート及びネーク達には知らせる合図について担当して貰っている。
「む、あそこでいいか」
私は少し開けた場所まで移動する。
「ここなら、足場もしっかりしているし、一瞬でラシェン王の所まで行けるな」
私は足に力を込める……すると、淡い光が足元を包んだ。
「よし、いくか」
誰もがコロシアムに注目している為、多少バタついても気付かれる事は無いだろう。
後はスキルを発動させれば直ぐにでもラシェン王に近付ける──しかし、近付いた瞬間にグンドウ達に捕まるかもしれない為、躊躇する気持ちが込み上げて来るが、今は悩んでいる暇は無さそうだ。
私は右足を後ろに下げ、ラシェン王に向かって走りだそうとした時である……
「──あはは、ここではやめた方がいいと思いますよ?」
「──ッ!?」
後ろから急に声を掛けられて、私は転がる様にして声を掛けて来た者から距離を取った。
そして、声の正体を見た時は更に驚いた。
「な、何故お前がここにいる……遊撃隊隊長のカール……」
先程まで、確かにラシェン王の隣に居て護衛していた筈なのに、気が付けば私の背後に遊撃隊総隊長カールが居た……
「あぁ、驚かせるつもりは無かったんですよ?」
飄々とした態度のカール。
「貴方は、先程プブリウスさんと挨拶に来た奴隷ですね?」
「……」
私はこの場をどうすれば抜け出せるか必死に頭を回転させる。
「私は遊撃隊総隊長のカールと言いますが何故この様な場所にいるか聞いても良いですか?」
カールはゆっくりとラシェン王の方を指差した。
「そして何故、ラシェン王を見ている?」
カールの言葉に、なんと応えるか考えているとカールが再び口を開ける。
「こんな盛り上がっている時に、何故か席を立ち上がり、周りの者とは逆に歩んでいる所が見えたんでね……」
確かに、他の者とは違う方向に歩いていたとは言え、普通気付くものなのか……?
「ふふ、とても不思議そうにしていますね──まぁ私自身、気配に敏感ですので、たまたま気が付いただけなんですけどね」
コイツ……やはり情報が無さ過ぎる……
「さて、貴方は何故先程からラシェン王を睨み付ける様に見ていたんですか?」
カールの質問にわたしは怪しまれない程度に答える。
「私が住む街の王様が気になっただけだ」
「成る程、成る程……ふふ分かりました。そういう事にしときましょう」
私が話した事が嘘だと分かっているみたいだ……
「まぁ、とりあえず今日の所は考えている行動を実行するのやめた方がいいでしょう」
「……」
「ふふ、大丈夫……チャンスはありますよ……そして、それは近い内に必ず」
それだけ言うと、カールはラシェン王の隣に戻って行く。
どうやら、ある程度私がしようとしている事をカールは勘付いている様子だ。
「どうなっている……?」
カールに言われた為、これ以上作戦を遂行するのが無理だと判断した私はプブリウス達が居る席に戻った……
「フンッ!」
二人が小型に向かって、休む暇を与えずに、ひたすらに同じ箇所を攻撃し続ける。
恐らく、このまま攻撃し続ければ、なんとか倒せそうである。
通常の小型よりも小さいのと、人間族達から実験を繰り返し行われていた個体だった為か、元から弱っていたのかもしれない。
そんな小型も負けずにと、二人に向かって尻尾を使用した攻撃をしたりとするが、ガルルとググガには当たらない。
「ふふふ、いいですねー」
周りの観客はガルル、ググガが無残にやられる所を見たいが為にコロシアムに来たと言うのに、逆の光景が目の前に広がっている為、誰一人笑っていない。
だが、プブリウスだけは二人の戦いを見て微笑んでいた。
「決めました──あの二人は私のコレクション入り決定ですね」
何がコレクションだ……
プブリウスの考えに気持ち悪さを感じるが、今はそれどころでは無い。
「そろそろか……」
「ん? シクさん、何かいいましたか?」
「いや、何も言ってない」
「そうですか」
プブリウスは、また直ぐにガルル達の戦いを満遍の笑みで観戦する。
そろそろ……動き時だな……
私はチラリとラシェン王達を視界に収める。
……ックソ、やはりグンドウとカールとか言う奴らがガッチリ側に付いているな。
私達が決めた作戦は単純であった。
まず、コロシアムでガルルとググガがラシェン王を含め、観客を惹きつける──そして、その間に私が身体強化のスキルを発動させて目にも見えないスピードで走りラシェン王を暗殺……の予定だった……
しかし、一分の隙も無い程にグンドウとカールが王様を守っている。
「はぁ……でもやるしか無いよな……」
こんなチャンスを逃せば、次はいつ、ラシェン王に近付けるか分からない。
恐らく、再度チャンスを待っている間に炎弾が帰って来てしまうだろう。
「そうなると、益々手を出せなくなる。やっぱり今しか無いな……」
私は席を立ち上がる。
「ん? シクさんどうかされましたか?」
私が立ち上がった事に、隣のプブリウスが話かけて来る。
「少しお手洗いに行ってくる」
「オット、それは失礼しました」
「悪いが、手足の枷を外して貰いたい」
枷を外して貰った私は、スキルを発動する為、出来るだけ人が少ない所を探す為に歩き出す──席を立ち上がり後ろを向くと、リッテとキャリが神妙な面持ちで私に視線を向ける。
私は一度だけ頷くと、二人に話し掛ける事もなく最適な場所を探し始める。
リッテやキャリ達には暗殺成功後の逃走ルート及びネーク達には知らせる合図について担当して貰っている。
「む、あそこでいいか」
私は少し開けた場所まで移動する。
「ここなら、足場もしっかりしているし、一瞬でラシェン王の所まで行けるな」
私は足に力を込める……すると、淡い光が足元を包んだ。
「よし、いくか」
誰もがコロシアムに注目している為、多少バタついても気付かれる事は無いだろう。
後はスキルを発動させれば直ぐにでもラシェン王に近付ける──しかし、近付いた瞬間にグンドウ達に捕まるかもしれない為、躊躇する気持ちが込み上げて来るが、今は悩んでいる暇は無さそうだ。
私は右足を後ろに下げ、ラシェン王に向かって走りだそうとした時である……
「──あはは、ここではやめた方がいいと思いますよ?」
「──ッ!?」
後ろから急に声を掛けられて、私は転がる様にして声を掛けて来た者から距離を取った。
そして、声の正体を見た時は更に驚いた。
「な、何故お前がここにいる……遊撃隊隊長のカール……」
先程まで、確かにラシェン王の隣に居て護衛していた筈なのに、気が付けば私の背後に遊撃隊総隊長カールが居た……
「あぁ、驚かせるつもりは無かったんですよ?」
飄々とした態度のカール。
「貴方は、先程プブリウスさんと挨拶に来た奴隷ですね?」
「……」
私はこの場をどうすれば抜け出せるか必死に頭を回転させる。
「私は遊撃隊総隊長のカールと言いますが何故この様な場所にいるか聞いても良いですか?」
カールはゆっくりとラシェン王の方を指差した。
「そして何故、ラシェン王を見ている?」
カールの言葉に、なんと応えるか考えているとカールが再び口を開ける。
「こんな盛り上がっている時に、何故か席を立ち上がり、周りの者とは逆に歩んでいる所が見えたんでね……」
確かに、他の者とは違う方向に歩いていたとは言え、普通気付くものなのか……?
「ふふ、とても不思議そうにしていますね──まぁ私自身、気配に敏感ですので、たまたま気が付いただけなんですけどね」
コイツ……やはり情報が無さ過ぎる……
「さて、貴方は何故先程からラシェン王を睨み付ける様に見ていたんですか?」
カールの質問にわたしは怪しまれない程度に答える。
「私が住む街の王様が気になっただけだ」
「成る程、成る程……ふふ分かりました。そういう事にしときましょう」
私が話した事が嘘だと分かっているみたいだ……
「まぁ、とりあえず今日の所は考えている行動を実行するのやめた方がいいでしょう」
「……」
「ふふ、大丈夫……チャンスはありますよ……そして、それは近い内に必ず」
それだけ言うと、カールはラシェン王の隣に戻って行く。
どうやら、ある程度私がしようとしている事をカールは勘付いている様子だ。
「どうなっている……?」
カールに言われた為、これ以上作戦を遂行するのが無理だと判断した私はプブリウス達が居る席に戻った……
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