367 / 492
第9章
366話
しおりを挟む
「あ、兄貴……俺達はこのデケェー所で戦うのか?」
「その様だな……」
私達は目の前に建っているコロシアムを見上げる。
「さぁ、中に入りますよ」
プブリウスを先頭に私を含める十人の奴隷達がゾロゾロと歩いて行く。
外見で既に開いた口が塞がらなかったが、中に行くと更に凄かった。
「うわぁ……す、凄いです……」
キャリは自然と心の中での声を漏らした。
内部では、中央に戦う場所が用意されているが戦う場所自体もかなり大きいが、更に驚いたのは、その闘技場を円で囲う様にして客席が広がっていた事だ。
「一体何人、このコロシアム場に入るんだ?」
「想像もつかん……」
軽く見積もっても、デグが作った村の住人が全て入ったとしても、半分も席が埋らないだろう。
そんなコロシアム場は既に満席と言っても良い程、人間族が座っていた。
そんな様子に驚いていると、プブリウスが声を掛ける。
「それでは、私達は席に向かいましょう──執事長、後は頼みましたよ?」
「お任せ下さい」
プブリウスの指示により、執事長はガルルとググガに声を掛ける。
「それでは、二人共私達は控え室に向かいますので、付いてきて下さい」
どうやら、ここで一旦お別れの様だ。
ガルルとググガが口を開く。
「シク様、必ず勝ちます」
「あぁ……なんとしても勝って来い」
ガルルに激励をすると、次にググガも宣言する。
「シク様、絶対に勝って来るぜ!」
「あぁ、お前達二人ならやれる」
近くにはプブリウスも執事長もいる為、作戦についての会話は出来ないが、お互い言いたい事は十分に伝わっている筈だ。
「ガ、ガルルさん……ぜ、絶対に死なないで下さい!」
「あぁ、俺は死ぬ気なんて一切無いから安心してくれキャリ」
「は、はい……無事に帰って来るのを心よりお待ちしております」
顔を真っ赤にしながらも、自分の意思を伝えたキャリにガルルが頭を撫でていた。
「ありがとうキャリ。俺達は無事帰って来る!」
「──ッは、はい!」
二人のやり取りを見ていたリッテが小声で私に話し掛けて来る。
「うふふ、素敵ですね」
「あぁ……」
「シク様、絶対に……」
「分かっている」
それから二人とは別れて、私達はプブリウスの後に付いて行くと……
「あぁ、そうそう──皆さんこれからラシェン王に挨拶しに行きますので、くれぐれも粗相の無い様にお願いしますよ?」
──ッなに?! ラシェン王に挨拶だと……
プブリウスの発言に私達は一瞬だけ固まる。
「プブリウス様、ラシェン王とは人間族の王様でしょうか?」
リッテが質問する。
「えぇ、そうです。今回のイベントを考えた人でもありますね──本日は私の奴隷が参加するので、少し挨拶をしようと思いましてね」
どうする……ラシェン王に近付けるなら、作戦を待たずにして、殺害するか……?
「あぁ、居ましたね──皆さん、ここからは話さないで、頭を常に下げてください」
プブリウスが私達に指示した後にゆっくりと進むと、ラシェン王の前に立ち塞がる体格の良い見張りが声を掛けて来る。
「貴様は何者だ? ここはラシェン王のいらっしゃる席だ!」
王様を訪ねて来る者に対して口にする決まり文句なのか、槍で、これ以上前に進ませない様に防いでいた。
「私、プブリウスと申します。本日のイベントで私の奴隷が参加しますので挨拶に参りました」
「話は聞いている。その後ろの者達は何だ?」
「私の奴隷でございます」
頭には布を被り地面を見る様に頭を下げていたので、門番は私達が奴隷だと直ぐには気付かなかった様だ。
「挨拶の件は分かったが、そこの奴隷達は置いていけ」
「分かりました──ですが、一人だけお供させて頂いても宜しいでしょうか?」
プブリウスの願いに門番は他の仲間達と話し合い直ぐに応える。
「良かろう! 但し、ラシェン王の前で布を取るのを禁じる」
「承知致しました──それではシクさん、付いて来て下さい」
プブリウスの命に従い私は後を付いて行く。
その間、リッテとキャリがとても不安そうな表情で見て来るが、問題無いと手を上げて意思を伝えた。
そして、プブリウスと一緒に少し歩き遂にラシェン王の前に到着する……
「ラシェン王、お久しぶりでございます──プブリウスでございます」
丸々と太った身体は醜く、それは顔にも現れていた。
「おぉ、久しいな──変わりは無いか?」
「はい。お陰様で元気にやっております」
「そうかそうか──今日は何用だ?」
「本日のイベントに私の奴隷が参加しますのでご挨拶に参りました」
プブリウスは片膝を地面に着けてラシェン王と話していた。
……コイツがラシェン王──そして、コイツを殺せれば……作戦は成功する。
プブリウスの後ろで頭を下げてラシェン王を観察するが……
「──ッ!?」
な、なんだ、この感じは……
何やら身体を刺される様な気配を感じた私は、気配の正体を探る。
すると、答えは直ぐ目の前にあったのだ……
「プブリウスよ、そこの布を被った奴は誰だ?」
「グンドウ様、お久しぶりです──こちらは私の一番お気に入りである奴隷でございます」
「ふむ。そうだったか、奴隷なら問題無い」
こ、コイツが総隊長にして、人間族最強の男、グンドウか……
「その様だな……」
私達は目の前に建っているコロシアムを見上げる。
「さぁ、中に入りますよ」
プブリウスを先頭に私を含める十人の奴隷達がゾロゾロと歩いて行く。
外見で既に開いた口が塞がらなかったが、中に行くと更に凄かった。
「うわぁ……す、凄いです……」
キャリは自然と心の中での声を漏らした。
内部では、中央に戦う場所が用意されているが戦う場所自体もかなり大きいが、更に驚いたのは、その闘技場を円で囲う様にして客席が広がっていた事だ。
「一体何人、このコロシアム場に入るんだ?」
「想像もつかん……」
軽く見積もっても、デグが作った村の住人が全て入ったとしても、半分も席が埋らないだろう。
そんなコロシアム場は既に満席と言っても良い程、人間族が座っていた。
そんな様子に驚いていると、プブリウスが声を掛ける。
「それでは、私達は席に向かいましょう──執事長、後は頼みましたよ?」
「お任せ下さい」
プブリウスの指示により、執事長はガルルとググガに声を掛ける。
「それでは、二人共私達は控え室に向かいますので、付いてきて下さい」
どうやら、ここで一旦お別れの様だ。
ガルルとググガが口を開く。
「シク様、必ず勝ちます」
「あぁ……なんとしても勝って来い」
ガルルに激励をすると、次にググガも宣言する。
「シク様、絶対に勝って来るぜ!」
「あぁ、お前達二人ならやれる」
近くにはプブリウスも執事長もいる為、作戦についての会話は出来ないが、お互い言いたい事は十分に伝わっている筈だ。
「ガ、ガルルさん……ぜ、絶対に死なないで下さい!」
「あぁ、俺は死ぬ気なんて一切無いから安心してくれキャリ」
「は、はい……無事に帰って来るのを心よりお待ちしております」
顔を真っ赤にしながらも、自分の意思を伝えたキャリにガルルが頭を撫でていた。
「ありがとうキャリ。俺達は無事帰って来る!」
「──ッは、はい!」
二人のやり取りを見ていたリッテが小声で私に話し掛けて来る。
「うふふ、素敵ですね」
「あぁ……」
「シク様、絶対に……」
「分かっている」
それから二人とは別れて、私達はプブリウスの後に付いて行くと……
「あぁ、そうそう──皆さんこれからラシェン王に挨拶しに行きますので、くれぐれも粗相の無い様にお願いしますよ?」
──ッなに?! ラシェン王に挨拶だと……
プブリウスの発言に私達は一瞬だけ固まる。
「プブリウス様、ラシェン王とは人間族の王様でしょうか?」
リッテが質問する。
「えぇ、そうです。今回のイベントを考えた人でもありますね──本日は私の奴隷が参加するので、少し挨拶をしようと思いましてね」
どうする……ラシェン王に近付けるなら、作戦を待たずにして、殺害するか……?
「あぁ、居ましたね──皆さん、ここからは話さないで、頭を常に下げてください」
プブリウスが私達に指示した後にゆっくりと進むと、ラシェン王の前に立ち塞がる体格の良い見張りが声を掛けて来る。
「貴様は何者だ? ここはラシェン王のいらっしゃる席だ!」
王様を訪ねて来る者に対して口にする決まり文句なのか、槍で、これ以上前に進ませない様に防いでいた。
「私、プブリウスと申します。本日のイベントで私の奴隷が参加しますので挨拶に参りました」
「話は聞いている。その後ろの者達は何だ?」
「私の奴隷でございます」
頭には布を被り地面を見る様に頭を下げていたので、門番は私達が奴隷だと直ぐには気付かなかった様だ。
「挨拶の件は分かったが、そこの奴隷達は置いていけ」
「分かりました──ですが、一人だけお供させて頂いても宜しいでしょうか?」
プブリウスの願いに門番は他の仲間達と話し合い直ぐに応える。
「良かろう! 但し、ラシェン王の前で布を取るのを禁じる」
「承知致しました──それではシクさん、付いて来て下さい」
プブリウスの命に従い私は後を付いて行く。
その間、リッテとキャリがとても不安そうな表情で見て来るが、問題無いと手を上げて意思を伝えた。
そして、プブリウスと一緒に少し歩き遂にラシェン王の前に到着する……
「ラシェン王、お久しぶりでございます──プブリウスでございます」
丸々と太った身体は醜く、それは顔にも現れていた。
「おぉ、久しいな──変わりは無いか?」
「はい。お陰様で元気にやっております」
「そうかそうか──今日は何用だ?」
「本日のイベントに私の奴隷が参加しますのでご挨拶に参りました」
プブリウスは片膝を地面に着けてラシェン王と話していた。
……コイツがラシェン王──そして、コイツを殺せれば……作戦は成功する。
プブリウスの後ろで頭を下げてラシェン王を観察するが……
「──ッ!?」
な、なんだ、この感じは……
何やら身体を刺される様な気配を感じた私は、気配の正体を探る。
すると、答えは直ぐ目の前にあったのだ……
「プブリウスよ、そこの布を被った奴は誰だ?」
「グンドウ様、お久しぶりです──こちらは私の一番お気に入りである奴隷でございます」
「ふむ。そうだったか、奴隷なら問題無い」
こ、コイツが総隊長にして、人間族最強の男、グンドウか……
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。


はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!


底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜
ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。
同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。
そこでウィルが悩みに悩んだ結果――
自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。
この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。
【一話1000文字ほどで読めるようにしています】
召喚する話には、タイトルに☆が入っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる