過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

こーぷ

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第9章

362話

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 リッテとキャリに案内されて午後は屋敷を見回って過ごした。

 結構な広さがあった為、屋敷を回るだけで、日が沈んだ事には驚いた。

 そして、窓の外がすっかり暗くなった頃に、前方から執事長が歩いて来た。

「シク様、夕食の準備が出来上がりましたので、食堂へお願いします」
「あぁ、分かった」

 執事長に連れられて私達は食堂へ向かった。
 食堂ではお昼同様に、プブリウスが席に座り、壁にはメイドと執事が立ち並ぶ。

 その中にはガルルとググガの姿も見えた。

「シクさん、席にお座り下さい」

 プブリウスの言葉に従い席に座る。

 リッテとキャリは、そのまま壁際に移動して他の者達同様に立ち並ぶ。

「屋敷はどうでしたか?」
「とても、広くて気が付いたら夜になっていた」
「そうですか、そうですか」

 首を上下に動かし嬉しそうに私を見て来るプブリウス。

「シクさんは、今までどの様に過ごされていたんです?」

 この問いには、事前に決めていた過去を話す。
 リッテが殆ど決めてくれたので、私は暗記した事をスラスラと口にした。

「そうですか……人間族に捕まってこの土地に連れられて来たと……」

 とても悲しそうな表情を浮かべるプブリウス。

「ですが、安心して下さい。奴隷とは言え私の元に来た以上そこらの人間族より余程良い暮らしが出来る事を保証しましょう」
「感謝する」
「いえいえ、良いのですよ──私は獣人が大好きですし、貴方は特に特別な存在だ……」

 プブリウスの目つきが変わるのを感じたが、直ぐにいつも通りに戻る。

「プブリウス様、一つ聞いてもいいか?」
「はい、なんなりと」
「プブリウス様は、この街ではどれくらい偉いんだ?」

 私の言葉に、可笑しそうに笑い応えてくれる。

「そうですね……王族を除けば、五本指には入るくらいには権力やお金を所持しておりますよ?」

 なるほど……屋敷を見て回って、ある程度高い地位を持っている事は分かっていたが、思ったよりも全然高い地位にいるんだな……

「では、プブリウス様は王族の方も知り合いなのか?」
「えぇ、ラシェン王には何度かお会いした事がありますね」

 よし、ここに奴隷に来た事は間違えでは無かったな。
 後は、炎弾達が戻って来る前にプブリウスを利用してラシェン王に近付けるチャンスがあれば……

 それからは、昼と同じで一方的に質問され、それに対して用意していた事を応えるのであった。

「あ、そうそう。そう言えば、ここにガルルさんとググガさんはいますかな?」

 プブリウスは何かを思い出した様に口開く。

「お、おい兄貴、なんか俺達、呼ばれているみたいだぞ?」
「うむ、いくぞ」

 二人は壁際からプブリウスの元へ歩く。

「貴方達が、ガルルさんとググガさんですか?」
「そうです」
「そうだぜ! ……そうです」

 兄のガルルに睨み付けられ、言い直すググガ。

「なるほど……これは確かに執事長の言う通り少し問題ですね……」

 ググガを厳しい目付きを向けるが、直ぐに笑顔になる。

「ふふふ、貴方達には、二日後にコロシアムに出場して貰います」
「コロシアム?」
「えぇ。詳しい事は執事長に聞きなさい」

 それだけ言うと、虫でも払うかの様に手を振って二人をその場から退かす。

「プブリウス様、コロシアムとは何だ?」

 ガルルとググガが一体何に参加させられるのか気になり質問する。

「ふふふ、別に大した事では無いですよ──気になる様でしたらシクさんもガルルさん、ググガさん同様に執事長から後で聞くと良いでしょう」

 その時のプブリウスの表情には完全に悪そのものであった……
 私が、その表情を見ているのに気が付いたのか慌てて、表情を戻すプブリウス。

「さて、食後のデザートも食べ終わった事ですし、私は休みます──シクさん、また明日一緒に朝食をご一緒致しましょう」

 私の前まで行き、貴族特有の挨拶なのか大仰な素振りで頭を下げてプブリウスは自室に戻って行った。

「それでは、皆さんコロシアムの説明をしますので移動しましょう」

 それから私達は執事長と一緒に自分達の自室に戻った。
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