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第9章
361話
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「シク様、こちらへお座り下さい」
私がテーブルに近づくと、メイド服を来たリッテが椅子を引いてくれた。
私が席に座ると、他のメイド達と一緒に壁際まで移動して姿勢を正す。
そこにはキャリの姿も見える。
「シクさん、この屋敷はどうでしたかな?」
対面に座る私に話し掛けて来るプブリウス。
「まだ、庭先を見回っただけだから、お昼は屋敷内を見学したいと思っている」
「そうですか、そうですか。存分に見回って下さい」
「そうさせて貰う」
私の顔を見て嬉しそうにしているが、目の奥が笑って無いな……
「さぁさぁ、食事が冷めてしまいますので、食べましょう」
「あぁ」
プブリウスが合図を送ると、私とプブリウスの近くにそれぞれメイド達がやって来て、料理の説明をしてくれる。
「シ、シク様、こちらが本日の、ぜ、前菜になります」
メイドの姿を見ると、そこにはキャリが居た。
それからは、プブリウスが私に一方的に質問をして、それに私が答える感じで、食事は終わった。
「ふぅ……今日の食事は若干いつもと違う感じがしましたね?」
プブリウスの言葉に、メイド長が応える。
「本日は早速新人の二人に料理を作って貰いましたがお口に合わなかったでしょうか?」
「いいえ、そんな事ありませんよ? そうですか……新人をここに呼びなさい」
「はい」
メイド長はリッテとキャリの二人を呼んだ。
「旦那様、この二人が本日の料理を担当した者です」
メイド長に紹介の後にリッテとキャリは頭を下げる。
「ふむ──頭を上げなさい」
プブリウスの言葉に頭を上げる二人を見て、目つきが変わる。
「ほぅほぅ。貴方達は覚えていますよ? ──そちらの大きい方がリッテさんで、小さい方がキャリさんですね?」
プブリウスの目つきに色情の光が芽生えたのか、キャリが一瞬だけビクつく。
だが、隣のリッテは流石と言うべきか落ち着いた対応を見せた。
「お名前を覚えて頂いているとは、光栄でございます旦那様」
「ほぅ……貴方は言葉使いが綺麗ですね?」
「ありがとうございます」
「うんうん」
プブリウスはリッテの姿を上から下までたっぷりと見た後にニコリと笑みを浮かべた。
「美味しかったですよ」
「ありがとうございます」
「キャリさんも、これから頑張って下さい」
「は、はい。あ、ありがとうございます……」
二人はもう一度頭を下げてから、再び壁際に移動して、姿勢を正して立つ。
「それでは、シクさん、今日の昼食は以上にしましょうか」
「あぁ」
「また、夜にでもご一緒しましょう」
そう言うと、プブリウスは立ち上がり何人かのメイドを引き連れて部屋を出る。
ご主人様が部屋から出て行った後に、メイドと執事達はそれぞれの仕事に戻る。
「シャレ様、午後は屋敷内を回るんですか?」
リッテが話し掛けて来る。
「あぁ、午前中はガルル達と外を回ったから、午後は屋敷内だな」
「それでは、私達と一緒にどうです?」
「あぁ、そうさせて貰おうと考えていた」
リッテとキャリが嬉しそうに微笑む。
「では、シク様、いきましょう」
「わ、私達が案内します!」
「うふふ、この午前中に私達も案内して貰っただけなので、案内出来る所は限られていますけどね」
二人の後に付いて行き、私は屋敷の案内をして貰った。
その間、ガルル達と同様にリッテとキャリに対しても今後の事をどうするか話し合いながら、屋敷を回った……
そして、シク達とは別の所では……
「プブリウス様、報告があります」
「なんですか?」
「新人の事で少々……」
執事長がプブリウスに朝の出来事を報告する。
「なるほど、新人の兄弟ですか」
「はい。ガルルに関しては特に問題無さそうですが、ググガの態度は目に余ります」
「それはいけませんね……」
言葉とは裏腹にプブリウスの顔は笑っていた。
「旦那様、如何なさいましょう?」
「ふふ、ではコロシアムに参加させましょう」
「それは、とても良い考えだと思います」
「そうでしょうそうでしょう!」
「確か、そろそろでしたか?」
「えぇ、そうです。ラシェン王が参加者を募集していましたからね……その兄弟を参加させましょうかね」
「手配致します」
執事が頭を下げて、部屋から退出しようとする所をプブリウスが止める。
「執事長、今日の夜は新人の中から一人私の部屋に呼びなさい」
「ご希望はありますでしょうか?」
「そうですねぇ……シクさんと言いたい所ですが、シクさんは正妻にしたいと考えております──あれ程美しい獣人は見た事がありません」
プブリウスは本当にシクの事を妻に向かい入れようと考えている様だ。
「リッテとか言う獣人もなかなかですね……」
乾いた唇を舌で湿らして微笑むプブリウス。
「キャリとか言う、獣人も心を擽ります……ですが、今日の所はその三人以外で問題無いので適当に選んで下さい」
「かしこまりました」
執事長が出て行った部屋にはプブリウスだけが残る。
「ふふふ、なんだか楽しくなって来ましたね……」
私がテーブルに近づくと、メイド服を来たリッテが椅子を引いてくれた。
私が席に座ると、他のメイド達と一緒に壁際まで移動して姿勢を正す。
そこにはキャリの姿も見える。
「シクさん、この屋敷はどうでしたかな?」
対面に座る私に話し掛けて来るプブリウス。
「まだ、庭先を見回っただけだから、お昼は屋敷内を見学したいと思っている」
「そうですか、そうですか。存分に見回って下さい」
「そうさせて貰う」
私の顔を見て嬉しそうにしているが、目の奥が笑って無いな……
「さぁさぁ、食事が冷めてしまいますので、食べましょう」
「あぁ」
プブリウスが合図を送ると、私とプブリウスの近くにそれぞれメイド達がやって来て、料理の説明をしてくれる。
「シ、シク様、こちらが本日の、ぜ、前菜になります」
メイドの姿を見ると、そこにはキャリが居た。
それからは、プブリウスが私に一方的に質問をして、それに私が答える感じで、食事は終わった。
「ふぅ……今日の食事は若干いつもと違う感じがしましたね?」
プブリウスの言葉に、メイド長が応える。
「本日は早速新人の二人に料理を作って貰いましたがお口に合わなかったでしょうか?」
「いいえ、そんな事ありませんよ? そうですか……新人をここに呼びなさい」
「はい」
メイド長はリッテとキャリの二人を呼んだ。
「旦那様、この二人が本日の料理を担当した者です」
メイド長に紹介の後にリッテとキャリは頭を下げる。
「ふむ──頭を上げなさい」
プブリウスの言葉に頭を上げる二人を見て、目つきが変わる。
「ほぅほぅ。貴方達は覚えていますよ? ──そちらの大きい方がリッテさんで、小さい方がキャリさんですね?」
プブリウスの目つきに色情の光が芽生えたのか、キャリが一瞬だけビクつく。
だが、隣のリッテは流石と言うべきか落ち着いた対応を見せた。
「お名前を覚えて頂いているとは、光栄でございます旦那様」
「ほぅ……貴方は言葉使いが綺麗ですね?」
「ありがとうございます」
「うんうん」
プブリウスはリッテの姿を上から下までたっぷりと見た後にニコリと笑みを浮かべた。
「美味しかったですよ」
「ありがとうございます」
「キャリさんも、これから頑張って下さい」
「は、はい。あ、ありがとうございます……」
二人はもう一度頭を下げてから、再び壁際に移動して、姿勢を正して立つ。
「それでは、シクさん、今日の昼食は以上にしましょうか」
「あぁ」
「また、夜にでもご一緒しましょう」
そう言うと、プブリウスは立ち上がり何人かのメイドを引き連れて部屋を出る。
ご主人様が部屋から出て行った後に、メイドと執事達はそれぞれの仕事に戻る。
「シャレ様、午後は屋敷内を回るんですか?」
リッテが話し掛けて来る。
「あぁ、午前中はガルル達と外を回ったから、午後は屋敷内だな」
「それでは、私達と一緒にどうです?」
「あぁ、そうさせて貰おうと考えていた」
リッテとキャリが嬉しそうに微笑む。
「では、シク様、いきましょう」
「わ、私達が案内します!」
「うふふ、この午前中に私達も案内して貰っただけなので、案内出来る所は限られていますけどね」
二人の後に付いて行き、私は屋敷の案内をして貰った。
その間、ガルル達と同様にリッテとキャリに対しても今後の事をどうするか話し合いながら、屋敷を回った……
そして、シク達とは別の所では……
「プブリウス様、報告があります」
「なんですか?」
「新人の事で少々……」
執事長がプブリウスに朝の出来事を報告する。
「なるほど、新人の兄弟ですか」
「はい。ガルルに関しては特に問題無さそうですが、ググガの態度は目に余ります」
「それはいけませんね……」
言葉とは裏腹にプブリウスの顔は笑っていた。
「旦那様、如何なさいましょう?」
「ふふ、ではコロシアムに参加させましょう」
「それは、とても良い考えだと思います」
「そうでしょうそうでしょう!」
「確か、そろそろでしたか?」
「えぇ、そうです。ラシェン王が参加者を募集していましたからね……その兄弟を参加させましょうかね」
「手配致します」
執事が頭を下げて、部屋から退出しようとする所をプブリウスが止める。
「執事長、今日の夜は新人の中から一人私の部屋に呼びなさい」
「ご希望はありますでしょうか?」
「そうですねぇ……シクさんと言いたい所ですが、シクさんは正妻にしたいと考えております──あれ程美しい獣人は見た事がありません」
プブリウスは本当にシクの事を妻に向かい入れようと考えている様だ。
「リッテとか言う獣人もなかなかですね……」
乾いた唇を舌で湿らして微笑むプブリウス。
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